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エロイカより愛をこめて 30 (プリンセスコミックス) みんなのレビュー
コミック
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紙の本
万年ペーペー君は表舞台より静かに退場
2004/04/26 23:59
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
1978年に記念すべき第1巻が出て以来、驚くべき高水準を保ちながら延々と続いてきた名作中の名作もとうとう30巻を数えた。米ソ両超大国の対立と冷戦、ベルリンの壁とソ連の崩壊、欧州連合の成立などなど、世界の激動を乗り越え乗り越え少佐や伯爵は活躍を続けている(途中かなりの休眠期間もあるけれども)。彼らの辿ってきた長い道のりを思うと、作者ならずとも思わず感慨にふけりたくなる。
青池保子氏が表見返しで「現世が物騒なら、漫画には楽しい題材を選ばねば」とおっしゃっているが、永いファンとしてもぜひ今後とも「エロイカ・シリーズ」を読み続けたい。このシリーズでさえネタにできないほど恐ろしい世の中にはなってほしくないと、キナ臭い世界情勢に冷や冷やするここ数年である。
この巻の前半は「ビザンチン迷宮」のPart3(完結編)である。元KGB工作員「大鴉」が凍結させたテロ工作とは何か、「宝剣」の果たす役割は何なのか、ハッサンたちの真の狙いは何かなどなど、すべての謎が明らかになる。毎度のことながらストーリーが入り組んでいて、前の巻を復習しないと理解不可能だったのだが、エロイカファンとしてはその歯応えがやはりこたえられないのである。
シリーズの魅力である「世界の(割とマイナーな)名所巡り」も楽しめる。前シリーズのメテオラから今回はカッパドキア、ギョレメ、シャンルウルファなどトルコの名勝地を知ることができる。世にも珍しい少佐の女装も出てくるし、ミーシャ・少佐・エロイカのじゅうたんを巡る駆け引きも笑えるのである。エンディングに意外性はないが、「これでわれわれの任務は終わったのだ」のセリフには、やっぱりホーッとカタルシスを感じることができた。
本編よりも楽しみだったのは後半の「Z・VI−ファイナルストーリー」である。少佐の部下26人の中で一番の新入りのZが、少佐に怒鳴られ実戦で怖い思いをし、毎回ボロボロになりながら任務を遂行していくこのサイドシリーズは、コミカルでポジティブな「エロイカ」ではあまり出て来ない情報部員の悲哀をメインに描いたものだった。
「モデルかホスト」と評されつつ根は超真面目なZ(本名はもちろん出て来ない)。冷戦が一応の終結を見た時、彼の役割もまた終わった。あれからZはどうしているのかな…という読者の心配に応えて、本作品は99年に実に16年ぶりに雑誌に発表されたのである。当時読み損ねたため、単行本収録を今か今かと待ち続けた筆者にとって、同様のドジを踏んでしまった読者たちにとって、今回の収録は待ちに待ったものである。
任務のディテールは様変わりしたけれど、Zの一途さ真面目さにはまったく変化がない。相変わらず体当たりのZは、任務終了時にはやっぱりボロボロのヨレヨレになっている。けれどもシリーズ初期と違い、今回はファイナルに相応しい微笑ましい幕切れとなっていて安心できた。Z君、長い間、大役をご苦労様。これからは本編の隅っこで、先輩や少佐たちに挟まれて右往左往している姿を垣間見て楽しむことにいたしましょう。
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