投稿元:
レビューを見る
タイトル通りなんだけど、
先は分かってはいたんだけど、
読んだあとにとても、とても悲しくなった。
誰かを大切に生きられたら、求められる人間になれるんだろう。
きっと。
とっても短いけれど、なんだか満たされる一冊。
投稿元:
レビューを見る
解説にもあるが、淡い色の夢のような物語のようだった。
言葉で直接核心に触れることはしないのに、気づけばみんなが同じ方向を向いている。
素敵だ。
投稿元:
レビューを見る
現代のような異世界のような、静謐な世界。
恋愛要素は少ないけれど、碑文彫刻家と僕、ブラフマンと僕の信頼関係が心地いい。埋葬、なのでいつか亡くなるとは思っていたけど、本当に一瞬だったので、せつなかった。埋葬の場面の、さみしさといとおしさ。
投稿元:
レビューを見る
「僕」の暮らしの中に突然現れたブラフマンは、その日から「僕」の暮らしの最も重要な要素のひとつになっているのがよく分かった。ブラフマンの「僕」に対する態度や「僕」がブラフマンを見る目、ブラフマンを扱う様子は、ブラフマンと僕との深いつながりができつつあるのを感じさせた。
『ブラフマンの埋葬』という題名が、ずっと頭の中に引っかかっていた。最後にあっけなくブラフマンが死んでしまって、びっくりすると同時に、もやもやしていたものが落ち着いた気がした。
雑貨屋のお姉さんや滞在者の変化が、物語を閉鎖的なものにしすぎなくさせていた気がします。
投稿元:
レビューを見る
も一本小川さん。
ブラフマンけなげでかわいくてさみしくて
動物飼ったら多分こんな風に心が動くんだと思う。
そしてこの娘は嫌いです。
投稿元:
レビューを見る
タイトルに惹かれて手に取った一冊。
<創造者の家>のブラフマンか。アートマンともかけているのかな。
ブラフマンが何の動物なのか明らかにされないまま物語は進み、想像力を掻き立てられた。(読み進めるうちに、あ、と分かる)
動物とともに暮らすのってこんな感じなのかな。ブラフマンの愛らしさにほっこり。
物語の静謐な雰囲気に引き込まれます。
投稿元:
レビューを見る
読んでいてとても楽しめたのですが、理解するのが難しかったです。書き方が難しいのではなくて、物語の解釈が私の読解力では足りませんでした。数年後にもう一度読んでみます。静かで、最後のホルン奏者の演奏とともに埋葬は静かに終わっていきます。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりにこういう文学的な本を読みました。文章によって、現実から乖離した感のある静かで独特の世界が描かれています。ただ、フランス映画のように切り取られた時間から何を感じるか微妙なところもあります。
投稿元:
レビューを見る
ブラフマンという謎の生き物と、創作者の家の管理人の話。
不思議な話で童話のようだと感じた。
どこの国の話かも、何人の話かも分からない。
でも、そんなことは重要じゃなくて、穏やかで心に残る話だった。
投稿元:
レビューを見る
すごく悲しかった。
たくさんの人が書いている通り、ブラフマンはとても可愛い。でもそれ以上に悲しくて。
タイトルからブラフマンが死んでしまうことはわかる、でも、このように死ぬのか、とおもった。
主人公は真面目で素敵で、でも主人公が想いを寄せている娘は他の人が好きで。ブラフマンとの関係や、主人公の優しさ、真面目さが気にいっていて主人公のことがとても好きだったのに、可哀想だった。
主人公の娘への想いがどんどん高まってゆくのがわかった。そして最後、その想いのせいでブラフマンと別れることになるとは。結局、主人公は愛するものを両方とも失ったのだな、と思って悲しかった。
埋葬の場面は穏やかで、悲しみに満ちていて、美しいとおもった。
でも、読み手が、タイトルからブラフマンが死ぬことを知りつつ、主人公とブラフマンの毎日を愛すること、それ自体がなんだか悲しいことだと思う。
物語の最初から最後まで、ブラフマンは「ブラフマン」という生き物だった。
投稿元:
レビューを見る
小川洋子さんらしい、静かな作品。
タイトルが『埋葬』だから、ブラフマンが死んでしまうことはわかっていたんだけど、ラストはやっぱり切ない。
ブラフマンのけなげな可愛らしさがたまらない。
で、結局ブラフマンって何なの?水かきって……?
投稿元:
レビューを見る
ブラフマン、小さな子犬。〈創作者の家〉の管理人である僕がひそかに飼っている。吠えないし鳴きもしないがとても愛しい存在。
投稿元:
レビューを見る
静かな河口の町で、芸術家に、創作に専念したり休息したりするための環境を与える『創作者の家』の管理人をしている主人公が、ある日、小さな生き物を拾う。この、「ブラフマン」と名付けられた生き物と管理人との交流が描かれる。
この生き物が一体何の動物であるのか、物語のなかでは特定されないので、最初、この生き物は何の動物なのだろうと考えながら読んでいたけれど、途中からどうでもよくなった。この小さな生き物が、自らの存在全てを管理人に委ねている姿が、じんと心に染みた。最後のブラフマンの死の場面では、自分でも意外なほど、痛ましさを感じた。ただひたすら、この小さな命が愛おしく思えた。
この河口の町は古くから川を流されてきた遺体の埋葬場所になっていたということで、全編にわたって「死」の影が漂っていると思った。管理人や芸術家たちの「孤独、静寂、死」のイメージと、『創作の家』に日用雑貨等を配達する雑貨店の娘の「生(性)」のイメージの対比。
色々なテーマが重層的に積み重なって、内容に深みが出ていると思った。
投稿元:
レビューを見る
小川洋子さんの本ばかり選んで読んでしまうのは
このひとの、こんな色彩感覚にも似たこの文才にあるとおもう。
ブラフマンという ネコなのか、犬なのか、はたまたイタチなのかも
わからない「謎」の動物の存在が「僕」の家に傷を負ってあらわれる。
小川洋子さんの文章によく使われるのだけれど
このかたの文章には「いち個人」の具体的な名前をつけない。
わたしは「私」であって、ぼくは「ぼく」
少女は「娘」であって、ほかを「彫刻師」など職業で表現する。
またその職業もうつくしいし、外国か日本か
そんなことはどうでもよくて、そこの世界観に生きる「ひとびと」という
存在がある。
もっとも好きなのが今回のような「僕」の存在や語りかけかただ。
「無理しちゃダメだ」
僕は頭を撫でた。
「君は怪我をしているんだ」
喧騒の中で生きているのをわすれるこの時間の静けさと対話のなんとやさしいことだろう。「僕」の存在というのは決してしかりつけたりなどしない。
けれど謎の動物のいたずらにも「これは机といって、本を読んだり、食事をしたり、手紙を書いたりするものなんだ・・」と説明をする。
人はこの説明という作業にどれだけ心が救われるかわからない。
ここに「愛情」というものをとても感じるのだ。
どうしてこんな風にすてきな言葉をえらぶんだろう。
小川洋子さんの世界というのは色彩のように生まれて、水彩のように水を多く含んでいる。鮮やかな色をぼんやりと描き、ときには油絵のようにねっとりとけれど、全体はやさしく物語る。
ブラフマンの最後ですら、彼女は「僕」としての注釈をつけた。
けれど最後の一文に、電車の中で涙してしまうのだった。
投稿元:
レビューを見る
ブラフマンは犬ではない。
以前、作者の講演会に出席した時に「ブラフマンというのは犬なのですか?」という質問に関して、彼女は「犬ではありません。あえて謎の存在にする為に
サンスクリット語のブラフマンという単語を使ったのです」と言っていた。
物語は一切人物の名前は明かされず、三人称のみで進んでゆく。
そして、ブラフマンがどんな生き物かさえ分からずに。
彼女は言う。
小説とは、死者との会話なのだと。
そして作家は、死への行進の最後尾を集めるのだそうだ。
死んでいった人々が遺した道具を使いながら。