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なんと1986年に単行本が出て18年後に文庫化!
カリフォルニア育ちで18歳の少年アイクが、行方不明になった姉を探すため
ウェストコースト、ハティントン・ビーチにやってきた。
姉と共に旅だったというサーファーに近づくため、
アイクも見よう見真似でサーフィンを始めるのだが・・・
おれも確か10年以上前に読んだ本なのでかなりの内容を忘れているし、
ミステリーの部分はたいした事がなかった印象がある。
しかし何よりもこの作品が素晴らしく未だ忘れがたいものは
「描写の豊穣さ、みずみずしさ」で、
読んでる間おれはアイクになりきって初めて見る大人の世界におののき、
恋をし、サーフボードに乗り波の上を走っていた。
色彩感溢れる成長物語であり、小説を読む喜びに満ちた作品で
これは「傑作」と言いきります。
(もっと細かく書きたいのに忘れてる部分多すぎてもどかしい・・・)
文庫というかたちでまた本屋に並んだのも妙に嬉しくて
おれも近々読み直したいと思う。
今度もサーフボードが欲しくなるんだろうな。
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知り合いのサーファーに借りた本。
面白かった、結構なぞが多くて。
でも、でも、ヴァイオレンス・ドラッグ・セックスの描写が強すぎて、私は途中で何度もクラクラしちゃいました。
サーファーの世界って、子育てママの世界の対極かもね。
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インランドのど田舎の少年が、
カリフォルニアのコーストラインでサーフィンに出会い、
どっぷりと染まっていくというありがちな話だが、
ものの見事に80年代のシーンを感じさせてくれる。
サーファーなら必読の1冊!?
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波乗り好きってことで男友達からもらいました。感想を聞かれたけど、答えに困った(+_+) 前半はライトなのに、後半は結構ダーク。アメリカの青春ってこんな感じなんだろーか?と驚きながらもどんどん読み進めてしまい、なんとも言えない喪失感に襲われた一冊。映像がリアルに浮かぶんだけど、設定が日本人にはリアルじゃないかも。。でも、その世界観は圧倒的で映画を観たような気分でした。
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発表当時、かなり高い評価を得ていた。
ケム・ナンは、知る限りでは他の作品が翻訳されていないが、すぐにミステリから離れたということか。
デビュー作となる本書も、ミステリというよりもカリフォルニアを舞台にした青春小説で、田舎から姉を捜しにきた青年が、一癖あるサーファーらとふれあいながら成長するさまを描く。
素晴らしいのは、やはりサーフィンのシーンで、主人公の揺れ動く感情を、さまざまな波のうねりにダブらせて視覚的に表現した文章は見事というほかない。
源にふれろ。
深い意味を込めたタイトルだ。
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おまえはエンジンの修理ができる」ハウンドはいった。「たしかな技術と、たしかな知識が必要とされることだ。エンジンを構成しているさまざまなシステムを理解し、そのシステムがあわさってどう働くかについて理解しなきゃならない。基本的には、まず理解しなきゃならないのは、ものが働く原理だ。だから、エンジンの修理も、サーフィンやほかのすべてのこととおなじように、肉体的であると同時に精神的なものでもあるんだ。ある種の根本的な原理を理解しないかぎり、どうにもならない。(p.264)
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アイクは行方不明の姉エレンを追って南カルフォルニアで生まれて初めて海を見た。そしてエレンの行方を知る男たちに近づくためにサーフィンを始める。そしてバイカーを率いる男に姉のことを打ち明けた時からアイクの周辺が次々と動き始める。南カルフォルニアの海を舞台に、青春と男の友情を絡め成長していく若者の、爽やかで楽しくて懐かしいピカイチのハードボイルド。多くの作家たちに絶賛されたサスペンスフルな傑作青春小説。
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私はどっちかというと海よりも山派で、海には何の思い入れもない人間なんであるが、なぜかサーフィンをテーマにした映画や小説が大好きなんです。
自分でもまったく理由が分からないのだけど。
映画「ビッグ・ウェンズデー」や「ハート・ブルー」、ジョイ・ニコルソンの小説「波のかなた」とかもうめちゃくちゃ好きで。
で、この本もAmazonのbotメールさんに勧められて以来、もうずーっと気になっていて、何度も何度もチェックしたあげく、とうとうポチってしまった。
わざわざ取り寄せてまで本を読まずとも、図書館には読んでいない本がうなるほどあるんだからそれを読めばいいじゃない、というタイプなので、私にしてはとても珍しいことなんですが。
おもしろかった。
イッキ読みするのがもったいなくて、ゆっくり少しずつ読んだ。
お姉さんの失踪に関する謎の真相は、私の期待のナナメ上をゆく変な展開で、なんだかとまどいだけが残ってやや不満だったが、それを補って余りあるほどに前半が良かった。
自分でもビックリしたのだが、読んでいて、19歳のころの気持ちがとても生々しくよみがえった。まるで、今、自分がまさに19歳であるみたいに。
青春時代の揺れ動く心がたくみに描けている、と感心する小説は世の中にたくさんあるが、自分自身の肌感覚が19歳に戻る、というのは初めてのことだったので、心底驚いてしまった。
田舎から都会に出ていって、孤独で混乱している主人公の様子が19歳の頃の自分と重なったからだろうか。
そういう単純なことでもないような気がするのだけど。
ああそうだ、19歳のときってこんな感じだった、と文字を追いながら、突然自分の中に荒々しく戻ってきたものをしばし楽しむ。
この感じ、なんだろう、今の年齢の私が見ている世界とは全然違っていて、色は同じなのにとても鮮やかで、鮮やか過ぎてしっくりこなくて、世界の方も私のことに興味がある感じ…などと、読む前は思い出すこともなかった(そして、特に思い出したいとも思わなかった)19歳の感覚。
「源にふれろ」という言葉は、登場人物の一人が特に深い意味もなく言い始めた言葉で、その後時を経て、今はすでに忘れ去られつつある時代を象徴するもの、という設定で書かれているのだが、でもその言葉の意味するところは、主人公はじめ、今も登場人物たちが深く心の底で求めていることでもある。たぶん、19歳のころの私もきっとそういうものを求めていたなぁ、などと思いながら読む。
日本語にするとあんまり詩的にならなくてピンとこない言葉なんだけど。
読み終わって不満に感じるのは、主人公とプレストンに、もっと二人でサーフィンについて語ってほしかったということ。
源に触れるということがどういうことか、もっと互いの思いを共有してほしかったなぁ。
これデビュー作じゃなかったら、もっとそこのあたりを深く描いてくれていたのかも、などと想像してみたりする。
でも、男の人って、互いにそういう気持ちを細かく説明し合ったりもしないよね。親友にも恋人にも。
私は現実世界でもいつもそこが不満だったりするんだけど(おもしろ���こと考えてるくせに、なんで教えてくれないの~、と)、そこを説明し過ぎないことこそが生きることのおもしろさなのかなぁ。
アイクがダークサイドに堕ちていって、本当に大切なものを失ってしまうところは19歳あるあるだと思った。
あの喪失感。とてもリアルだった。
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”切ない小説だ。胸がキュンとなる小説だ。危険で、あやふやで、だからこそ、甘美な「青春」というものがここには鮮やかに描かれている。これはそういう青春小説の傑作である。”これは北上次郎さんの解説の冒頭である。
もうこれを見ただけで、この本を手にせずにはいられない。
そして、その通りの傑作だった。
育った何もない砂漠の町から、姉を探しにサーフィンが盛んな海岸の町へという暗と明の対比が良くて、姉との思い出は砂漠にしかなく、暗いのだけど秘密めいていて。
主人公はビーチで友を知り、恋を知り、悪も知り、甘くて危険な沼にはまり、もがき続ける。その時、回想されるの姉とのエピソードが光る。よいですね、これが。
キラキラした青春じゃなく、ダーティーでエロティックでバイオレンスな世界ですが少年が苦悩しながら駆け抜ける感じがよいんです。
クライマックスが想定外のスケールでしたが、終わり方もよかった。絵にかいたようなハッピーエンドではなく、静かに一つひとつ片づけていく感じが沁みました。
巻末の北上さんの解説だけでも読みごたえありで、幸せになれます。
素敵な一冊でした。