紙の本
正統派怪奇小説
2004/08/09 21:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごんだぬき - この投稿者のレビュー一覧を見る
内臓が飛び出したり、血しぶきが飛ぶスプラッタ・ホラーも嫌いではない。だが、毎回そういったものばかり読んでいると、食傷気味になるのも確かである。こってりしたステーキばかり食べていれば、あっさりした和食が恋しくなるように。
上質のテラー(ホラーにあらず)傑作集である。短いものばかりで読みやすいが、軽く読み流すにはあまりにも惜しい。一文字一文字丁寧に味わい、読み終えた後の余韻まで楽しみたい。
イギリスの一昔前の怪奇小説は、かくもムードに満ちた、ひそやかなる恐怖を描いていたのか。
M・R・ジェイムズがお好きな方なら、迷わず買って損はないだろう。今後もこういった良書(良翻訳)がもっともっと出版されてほしい。
紙の本
好事家向けの怪奇選集
2017/05/15 16:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Amazon カスタマー - この投稿者のレビュー一覧を見る
創元社の「怪奇文学大山脈2」の巻頭で編纂者の荒俣宏は怪奇文学界の先達、平井呈一の言葉を引用し、「恐怖山脈は夏山によし、冬山によし、リュックはいらず、同伴者不要。遭難の心配なし。初心者はとかく下駄ばきで、もっと恐いの、もっと恐いのと、無暴なねだりかたをする」と。
amazonあたりのレベルの低いレビューには、こんなおねだりばかりが目立ってあきれるというか、おもわず失笑してしまいましたが、本編編纂者のまえがきを読めば、この本で礼賛する「怪奇」とはどういうことなのかは明らかです。通販の商品説明からはそこまで明確に汲み取れないので手に取るまで内容がわからないため致し方ない事ですが・・・
まあ、そのような意図の有る無しにかかわらず、非常に良く選ばれた作品集だと思います。翻訳も含め、じっくり読む事が確実に報われる作品ばかりです。是非、シリーズとして続編を望みます。
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19世紀末から20世紀前半の英国作家の怪奇小説アンソロジー。22篇収録。
『怖い絵2』で取り上げられていた、マーガニタ・ラスキの「塔」が読めただけでも満足。
日本ののっぺらぼうのような話もあってびっくり。
ディラン・トーマス(本書ではダイランと表記)の「祖父(じい)さんの家で」は、彼の独特な言葉の選び方で不思議な味わいだが、田舎の人情譚とも読めるのでは。
舞台を現代に移してドラマ化できそうな「二時半ちょうどに」(マージョリー・ボウエン)、ジプシーの呪いと時空間移動の組み合わせがユニークな「今日と明日のはざまで」(A・M・バレイジ)、「死は共に在り」(メアリ・コルモンダリ)が面白かった。
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(いわくありげな物との関係があからさまじゃないのが気持ち悪くていい。ラストが嫌ーな感じでやっぱりいい。)
「塔」 マーガニタ・ラスキ 吉村満美子訳
(「ゴーストハントの例のあの人。一人称最強)
「ばあやの話」 H・R・ウェイクフィールド 吉村満美子訳
(ホラーっていうかなんていうか。不思議。哀切)
「祖父さんの家で」 ダイラン・トマス 中野善夫訳
(切ない。こわいっていうか切ない)
「今日と明日のはざまで」 A・M・バレイジ 中野善夫訳
(こわい。すっきり、で、不安)
「溺れた婦人(ひと)」 エイドリアン・アレイトン 中野善夫訳
とりあえず
平井呈一 「恐怖の愉しみ」 創元推理文庫
が凄いアンソロジーらしいということはわかった。
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旅先でいさくつきの塔に登った夫人が遭遇する恐怖【塔】、傲慢な高利貸しのジョンは、ある夜自分をつけてくる足音に気付く……【跫音】、神経過敏気味の作家ジョーンズが、書斎として借りた部屋で味わった体験とは【囁く者】、ひと夏を過ごすためにやって来た農場は、近隣からは“のど切り農場”と呼ばれていた……恐怖短編として有名な【のど切り農場】他、英国の、それも19世紀末~20世紀前半の怪奇小説22編(内18編が初邦訳というのがスゴい)を収録したアンソロジー。
モダンホラー以前のややカビ臭いゴシック調小説ばかりかと思いきや、怪奇や恐怖というよりもやや「奇妙な話」といった風情のものが多い。やや極端なもの言いだが、ホラーよりは日本の「怪談」に似た味わいがあると思う……それは何も【跫音】のオチに限った話ではなく。
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怪奇な話を集めた短編集。
『塔』が一番すきでした。面白かったです。
「怖い話」といえばそうなのですが、この短編集に納められている話はどれも幽霊や化物が跋扈するというものではなく、不可思議そのものの正体は掴めないけれどどことなく奇妙で気持ちが悪い世界といった趣の話ばかりでした。まさに怪奇の名が相応しいのではないかと思います。
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設定そのものはありがちだが、作風が風変わりという作品が多いみたい。編者の方の好みかな。背筋がゾッとするというより、考えさせられるという感じ。巻頭と巻末はさすがに怖かったけど。
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東京創元社復刊フェア2017で購入。
割と珍しい……というか、これまで余り紹介されて来なかった作品が主体。こういうアンソロジーが今になって復刊されるのは嬉しい。
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英国の古風でちょっと変わった作品をまとめたアンソロジーとのことで、まさにそんな感じ。怖さよりも不思議さや怪しさをしみじみと感じさせる、ひと捻りある作品ばかり。こんな作家さんもいるんだという出会いも含めて楽しめました。
・塔(理不尽な上に救いがない上品な恐怖譚)
・失われた子供たちの谷(哀しみ)
・「悪魔の館」奇譚(やばいやつ)
・地獄への旅(昔話っぽい)
・髪(怖いけどくすっとしちゃう)
・溺れた婦人(変わった幽霊譚)
・死は素敵な別れ(そういうオチ)
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『塔(The Tower/1955年))』マーガニタ・ラスキ
『失われた子供たちの谷(The Valley of Lost Children/1906年)』ウィリアム・ホープ・ホジスン
『よそ者(The Stranger/1930年代)』ヒュー・マクダーミッド
『跫音(The Step/1934年)』E・F・ベンスン