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脚本のト書きのような現在形を多用した文章、
映画のカメラワークのように移動する視点。
各章の見出しに時計の文字盤が掲げられ
深夜12時頃にはじまった物語は朝の7時近くに終る。
その間の約7時間を19歳の少女マリが関わる出来事を読者は
リアルタイムで見ているかのように追うことになる。
読み終わってみると一つの長編小説というよりも
三つのエピソードが絡まりあって進行するオムニバスのような印象を受ける。
「回転木馬のデッドヒート」がもっとも好きな村上春樹作品なんだけど
「アフターダーク」後半の「インタビュー小説」に近い部分は
ちょっと似た感じで読んでいて安らぎをおぼえた。
長編小説としては文体が特異だしはっきりした着地点がないので物足りないか。
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読み終えた率直な感想。
「あっ。この本はきっと読むたびに感じることが
変わる本だな。」
過去の村上春樹の本よりも、ストーリー性を落として、
哲学的要素を多く取り入れいる感じがした。
300P弱で文字も大きいのですぐに読み終えると
思ったが、すこし読んでは引っかかり自分を見つめなおし、
更にすこし読んではひっかかり自分を見つめなおす。
その繰り返しで思ったより読み終える時間はかかった。
そうこの本は小説というより、自分の現在の心を
如実にあらわしてくれる本だと思う。だから読むたびに
感じることが変わる。だって、自分が変わらないこと
なんてありえないから。別にこの本に限らず読むたびに
感じることは変わると思うが特にこの本はその要素が
強い感じがした。
そして5年後ぐらいにまたこの本を読んでみたくなった。
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3分の2を読んだ時点で、この本はちゃんと完結するんだろうか?と不安に思ったが、読み終わって、ちょっと物足りない感じがする
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読者の視点をとりこんだ三人称的な記述、真夜中から明け方にかけての限定された時間という状況設定、ドラマ的にいえば「結」のない開いた構成等一見実験的な習作といった印象を醸し出しているが、基本的には「ねじまき鳥...」から「海辺の...」へつながる方向性が維持されており、その世界観がよりリアルな社会へ投影された作品。コンビニの陳列棚で鳴る携帯電話をとると「逃げきれないよ」という声が聞こえる場面。一見、不条理に思える状況設定であるが、本書ではそこに至る因果関係が限定的ではあるが読者の前に明示されている。これは、今までの村上作品になかったわりと重要な点であると思う。全編に一種独特の緊張感がみなぎっており、良質の映画をみているような気分にさせられる。
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現代の殺伐とした世相・風俗を背景に、まっとうだが少しナイーブな少年少女がめぐり合い、お互いの喪失体験を確認し、再生への希望をいだく村上ワールド。
まっとうでない大人と、喪われた人たちをもう少し描いて欲しかった。なんだか匂いだけで料理を味わったような読後感。
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私には、評価しにくい一冊。
そもそも、村上春樹を全く通ってきていない私には、村上春樹に対する期待ってのが全くもってないんすよ。「ダンス・ダンス・ダンス」だったか「羊を巡る冒険」だったかが家にあって、当時ものすごい評判になってたから手にとってみたものの・・・。最初の10ページ程で撃沈されました。それ以来、まったくもってノータッチ。「ノルウェイの森」も読んでないもんね。ふん。
みたいなことを言ったところ、「その世代で村上春樹通ってないって、結構珍しいんちゃう?」と感心されました。そんなに、村上春樹ってアレっすかねぇ。
どうなんだろ、ちゃんと通ってきた人には面白いんだろうか。通ってきたことない人でも面白いんだろうか。どうやら、私はエンタメ系以外はちっとばっかりハズした読み方をしてしまうらしいので、これ面白いって人の感想が知りたい。いや、切実に。
それともどういう意味においても楽しめないなら、語るなって感じなのかな。
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春樹さんが翻訳した「カーヴァーズ・ダズン」の訳者解説に『この作品にはどちらかというとカフカ的な雰囲気が色濃く漂っているようだ。短い話の中でいろんなミステリアスなことが起こるが、それらは結局説明されないし、解決もされない。それらはただそこに存在するだけである。』と春樹さんは書いているんだけど、この本でやりたかったことの一つはそういう本を書くことだったんじゃないかな。なんて思いました
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夜から朝にかけての短い時間の出来事。主人公は19歳の女の子。眠り続ける姉。ファミレス。ラブホテル。深夜のオフィス。
短編の『TVピープル』と『眠り』が浮かびました。
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とりあえず、「意外」でした。
いつものハルキ節がないじゃないですか。
一行以上にわたる比喩も、
「あなたはそうしなければならないのよ」なんて言う謎の女も出てこない。
とても鋭くソリッドで、抽象的なことを語りながらクリア。
読んでいけば、「意識」「表裏一体の世界」の
「ああ、いつもの。」みたいな感じなんだけどちょっと今回は違うって感じ。
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村上春樹の小説の中でもっとも早い時間で読了した作品。そして、読後一度も読み返していません。これは今までの私では考えられないことです。村上氏の特徴であった流れるような文体はほとんど見られず、唐突な展開で幕が下ろされます。できればなかったことにしていただきたい作品。
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長い夜に絡み合う、さまざまな事情。村上春樹らしい登場人物たちと、先がどうなるのかが気になって仕方ない彼らを取り巻く出来事と1晩に凝縮したような話。
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都市に生くる人々の生活というのは、本人達の知らぬどこかで入り混じっていて、どこかで離れて行く。それはまるで地下鉄の線路のように。そしてその繋がりに、誰も興味など示さない。隣で生きる人がどんなふうに生きていようとも、それは自分には何の関係もない。それでも人は生活している。私たちはそれから「逃げられない。どこまで逃げてもね、わたしたちはあんたを捕まえる。」しかし途中のJ.L.ゴダールだとか、スガシカオだとか、俗っぽくていやだなあ。
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三人称視点の文体がかつてないものと賛否両論のようだけど、村上ワールドの本質にはあまり関係ないように思う。都会の点描というような趣には合ってる。
それよりは短いことでの物足りなさがあるのだろう。一応長編だけど、そう厚いものではないし、短編を読み終わったような読後感だ。
これまでの村上モノは上下巻で、「海辺のカフカ」などはあまりに厚くなるからと特殊な紙を使ったくらいだった。それに比べるととても短い。
短編小説に長編小説の読後感がないと言ってもしょうがない気がする。
相変わらずの比喩と会話の巧みさを堪能しました。どんな雑音のとこでも本の中に入っていけるのって村上春樹くらいしかないですね。
いつものことだけど、ワタシのような凡庸な知性と感受性で、どう現実切り取っていいか分らない者には彼の本のもつクリアさと鋭さが心地よいです。
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村上春樹の最新作。今までの文体とは違った視点からストーリーが語られる。しかし、随所に村上春樹らしい表現方法が散りばめられていて、それを見つける度に嬉しい気持ちになる。
様々な視点から描かれるのだけど、村上春樹の長編小説によく見られる2つの視点で書くといったスタイルは変わらない。しかし、メインストーリーが内容が濃く作られているのに対し、サブと思われるストーリーを書いた意味がいまいちわからない。現代の社会問題となっている『引き篭もり』を意味しているのではないかという情報誌での解説もあったが、真意は不明である。
非常に読みやすい作品
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村上春樹の入門書としては最悪であるため、他の著作を読んでから手にした方が良い。村上春樹のファンであれば、この世界にすっと入り込めるのだけど、初めて村上春樹を手にして人が読むと、今後村上春樹は読まない、ということも起こりうる。
この作品に一体何の意味があるのか、ということはおそらくもっと時間が経ってみないことには解らないだろう。