紙の本
話のつかみの面白さ、騙りのテクニックの巧さに唸るミステリー
2004/10/10 12:43
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
話は、向井洵子がワープロで打った日記から始まる。日記の中で、彼女の身辺に起きた不可解な出来事が綴られている。誰かが自分の名前を使って図書館の貸出登録を行ない、三冊の本を借りていったこと。夫の会社に電話したら、訳の分からない応答をされたこと。そして事件が起こり、事態はますます混迷の度を深めていく。
一枚のフロッピイディスク・ファイルに収められた文書を読んでいく前半から、スリリングな話の展開に目が離せなくなる。複数の記録を提示していく形で話は進むのだが、そこにどのような繋がりがあるのか、どんな意味が隠されているのか、分かりそうで分からないもどかしさ。そこに、実に巧妙な仕掛けが働いていたことを知る話の終盤、妙ちきりんな状況の真相が見えた時、げげっ!とのけ反ってしまった。
告白すればこの作品、かなり前になるが一度読んでいる。非常に面白く読んだ記憶が残っていたので、文庫化されたのを機に再読したのだけれど、やはり面白かった。初めて読んだ時は、やられた!と思った。今回は、前半のつかみから、パズルのピースがするすると寄り集まり、加速していく話の終盤に、作者の騙りのテクニックの巧さに舌を巻いた。
初出が十年前の作品ということもあり、ワープロのフロッピイディスクをめぐる謎というところにやや古さを感じたが、それでも十二分の読みごたえを堪能させてくれた。読み始めた一瀉千里の本書を、ミステリーファン、SFファンの双方にお薦めしたい。
紙の本
読んだあとすぐに読み返しました
2013/01/13 19:24
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投稿者:結子*uco* - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品はとっても読みやすい。
登場人物がそれぞれ自分の日記をフロッピーに記録し、そのファイルを順番に読んでいく感じなので、話し言葉のようで読みやすかった。
さて中身は、というと。。。
読んでる途中で何が何だかわからなくなりました。
悪い意味ではなくてね、それほどミステリしてるってこと。
頭がパニックって感じで、続きが気になって一気に読んだ作品です。
後半も中盤頃から何となくこの作品に仕掛けられたモノがわかってきますが、充分楽しめました。
そして読んだあとすぐに読み返しました。
あ、ここはこうだったんだ、って。
この手法じゃなきゃこのテーマはここまでおもしろくならなかったと思います。
素直に読み進めていけば衝撃のラストを楽しめる、オススメの一冊です。
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謎と恐怖のスパイラル 「私」の存在が崩壊する
54個の文書ファイルが収められたフロッピイがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる! 謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。
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岡嶋二人の片割れ、井上夢人の作品。
54個の文書ファイルが収められたフロッピイから始まる、個々のアイデンティティの崩壊を生むミステリー。
出張に行った夫の帰りを待ち望むある主婦の身の回りに起こる奇妙な出来事。
どこからが自分で、どこからが他人なのか。オチはすぐ分かるけど、テンポのよさは秀逸。ラストはけっこう衝撃的でした。
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謎が謎を呼び、読ませる力はとっても強い。ただ、純粋な謎解きを期待した人には、このネタはある意味やってもーた的ガッカリ感があるかも。だとしても、最後にもう一ひねりあるので、必ず最後まで読むべきでしょう。
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主婦の一見平凡な日記から始まる54の文章。書き手が変わるにつれ物語りも混乱していく。一体何が真実なのか。真相は徐々に明らかになっていくためラストであっと言わせるものではないが、最後の54番目の文章が真のラスト。非常に怖い。
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最初はかなりドキドキしますが、わかってしまうとなるほど、という感じ。彼女は存在しない、という本と内容が似ているがあちらの方がずっとデキが良い
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2007/3/30 サンフランシスコから関西へのフライト中に読む予定。であったが、何と関空行きがキャンセル。何とかとった北京行きの機内にて読了。初出が94年でその当時のワープロ、フロッピが主役なので少し現在とはずれがあって、惜しい(文庫化は2004年)。まあ、読まずに積んどくにしておいたのも悪いのだが。
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始めは何がなんだか解らなかったけれど、読み進んでいくうちに、謎が解けてくる。最後の方は一気に読んでしまった 少し強引だけど、面白かったです
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久しぶりに時間を忘れて一気読みした作品でした。文書ファイル形式の小説作法が良かったです。こういった物語はごちゃごちゃしがちなのであまり好きでは無いのですが(途中で挫折してしまった同系の作品が何冊かあるので…)、この作品はそういったことが全くなく、とても読みやすかったです。読み始めてすぐに物語の中へと引き込まれました。
しかし、序盤でオチに気が付いてしまったのです…が、そこからの展開がすごい。そのオチで終わりではなく、さらなる真相があり、そしてまたひとつヒネリが加えられて…うーん、面白い。読ませます。さすが井上作品、やはりレベルが高いです。ラストまで、本当に最後の一行まで気が抜けません。オススメです。
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途中でトリックに気づいたけれど、一気に引き込まれた。最後が印象的で、ちょっと怖かった。不思議ミステリ。普通におもしろい。(渉)
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多重人格のサイコサスペンス。
ツカミはOK!普通にそれなりにおもしろかったですよ。
でもどうしても、同じテーマの既読本、
貴志 祐介の「ISOLA―十三番目の人格(ペルソナ)」を彷彿と・・・。
これ、怖かってん、あたし〜〜〜。
舞台が兵庫県でさ、行ったことあるとこも多々出てきたし、
ヤバッ!って本を閉じて、挫折しかかったことも数回・・・。
なので、これほどには、怖くなかった(笑)
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どんなトリックかと期待しながら読み、途中で多重人格と判り、多少気落ちしたが、それでもペースを落とさずに読ませる内容。
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なんだか星5つ多すぎではないですかい?と自分で思う今日この頃。
冷静に見たら、そうでもない気がする・・・なんてものあるんだろうな。
ほどけそうで、ほどけなくなってきます。そしてどんどんページが捲れていきます。
若干すっきり(?)しませんが、最後のひねりが素敵でした。
自分って、本当に自分なのかしらね。
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そういうオチかー!でも、そのオチに逃げた印象は感じない。正直ガッカリはしたけれど、それでも最後にもう一捻りあって満足。まとめ方がさすがに秀逸。54番目のフロッピーにはゾクゾクした。何故フロッピーに保存されている文書という形で話が進むのかがハッキリするのが気持ちよかった。ただの飾りじゃなかった。