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昭和四十年代を舞台に、探偵小説的な色合いを濃厚に演出しながら本格ミステリを書くというスタイルが、ここまで純化すれば、もうこれはこれで一つのミステリの新しい形だと思う。「人狼城の恐怖」は、それでもゴシックスリラーの意匠を、フランスとドイツを舞台にすることで補強するというスタイル上の仕掛けがあったけど、今回は思いっきり日本、しかも函館という狭い範囲の中でドメスティックな探偵小説を展開。それでいて、きちんと本格ミステリに仕上がっているので、剛腕という印象もない。マジック応用のトリックも、犯人の造形に工夫があるので無理なく機能するし、「怪人」(今回でいえば「魔術王」)の扱いも、きちんと乱歩伝統の怪人でありつつ、全然古くさくなく、でも「怪人」でしかないという見事な造形。さらに「何故、名探偵は連続殺人を止められないのか」というよくあるネタに対してか、ここんとこの二階堂蘭子は、登場と同時に全ての謎を解いているので、解決の切れ味が凄い。今回、多分意識的にとは思うのだが、1つだけ、気になる殺人があるのだけど、こういうフィクションの中にあって、それを避ける意味もないわけで、苦さは拭えないにせよ、その勇気は凄いものだとも思う。ディケンズの謎解きのオマケというか、多分、そっちが先だったのだろうネタについて、そのネタの説得力のために、これだけの事件を書いたのだという見方も出来て、それはそれでまた凄い。でも「エドウィン・ドルードの謎」の犯人、俺も同じ人を犯人だと思ってた。二階堂蘭子とは全然違う道筋というか、もっといい加減な理由だったけど。
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京極さんなみに厚い本です。
二階堂蘭子シリーズです。
アレだけ厚くても非常に面白かったです。
江戸川乱歩のような奇妙でグロテスクな世界が繰り広げられています。
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家宝でもある呪われた宝石《炎の眼》の持ち主のナオミは、借金のカタとして宝石を桑形に預けている。ある夜、それを一晩だけ貸して欲しいとの申し出を受け、桑形は快く貸し出す。その直後、正体不明の男に体を縛り付けられた桑形が見たものは、世にも恐ろしい殺人現場だった。だが、死体は一瞬にして消えてしまう。確かに見たはずなのだ・・・胸にナイフを突き立てられたナオミの死体を・・・。死体はどこに? 宝石はどこに? 奇怪極まりない事件に困惑する桑形は、二階堂蘭子を訪ねる。
その夜、宝石商・桑形のもとを訪れた二人の人物。彼らから始まった事件は北海道へと場所を移し、次第にその異様な容貌を少しずつ明らかにしてゆく。
―――― 稀代の殺人鬼<魔王ラビリンス>の舞台の幕が、今あがる・・・。
以下ネタバレ。
二階堂先生・・・やりますねぇ〜〜。面白かったです。
最後まで二転三転して、まさしくこれぞミステリ、といった感じでした。
まさか彼女が魔王の手先だったなんて思いもよりませんでしたよー。いや、ホームズもポアロも、全てを取り除いて残ったものが真実だって言ってますけども・・・びっくりでした。
言い逃れをする彼女の白々しさも、施された手術のせいなのでしょうねぇ、きっと。最後に彼女が殺されてしまうところがまたなんとも救いようのない感じで・・・彼女が不幸だと読者が思えるだけでなく、魔王の残忍さを表すよいエピソードなんでしょうね、うん。
随所に仕掛けられたトリックが非常になんというか・・・本当にトリッキーで、この辺りが二階堂テイストですね、うん。
よく考えたら、魔王は竜岡しかいないんですよねーー、最初から最後まで出ずっぱりだなんて、なんて大胆不敵な魔王なんでしょう! 悦夫もまったくいい面の皮です・・・だって貴美子に竜岡を紹介したのは彼なんですから。宝生と祖父江の家の関係も、旧家らしくどろどろしてますね〜〜(笑)。
昭和四十年代を舞台にするだけで、今日では不可能な様々な犯罪が可能になるだけでなく、どことなくおどろおどろしい雰囲気が出ますよね。なんというか、江戸川乱歩とか獄門島とか、そんな言葉が頭を過ぎるお話でした。
蘭子は今のところ、魔王ラビリンスに出し抜かれた形になってますが、次回作ではきっと追いつき、逆に出し抜いてみせてくれることでしょう。名探偵・二階堂蘭子の活躍に期待してます!!
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懐かしい匂い(ていうかまんま乱歩か横溝)のする作品。一部不評のようですが個人的にはアリです。結構ねちっこく主人公が痛めつけられるので、読みながら奥歯がイーってなりますがそれも佳し。雰囲気勝負の一冊。
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『地獄の奇術師』を思い起こさせるシーンが多数……。トリック自体も簡単なものなので、あれだけ長々語る理由が見えません。あれかな、欲と権力に取り付かれた人間の醜さを描写したかったのかしら? だとしたら、この作家さんにはその腕がないと思います。
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二階堂蘭子シリーズ
蘭子に持ち込まれ相談。桑原氏の事件。紫の密室。向かいのビルで殺害されたホステス・ナオミ。奪われた宝石〈炎の眼〉。「魔術王」と名乗る謎の男。
北海道のクラブでの惨劇。マジックショーの最中の殺害。芝原悦夫と婚約者・鈴原智華、元婚約者・宝生貴美子と竜岡孝史。殺害された智華とアシスタントの女性、誘拐された貴美子。魔術王〈メフィスト〉からの挑戦。貴美子救出の為に囚われた悦夫。監禁された部屋の謎の男の遺体、悦夫の脱出。病院から誘拐された貴美子。看護婦と警官の殺害。貴美子の発見。誘拐される悦夫の弟・伸一。悦夫の冒険。竜岡に射殺されたメフィスト。送られた伸一のバラバラの死体。
坂下警部の尋問中の森園病院長の毒殺。メフィストによる脅迫状。坂下警部による地下秘密通路の探険。水責めに恐怖。〈白い牙〉の盗難事件。公丸署長の持つ箱の中からの盗難。竜岡孝史の殺害。焼かれた死体の謎。
深夜に悦夫を殺害に来た犯人。黎人の活躍。ラビリンスに殺害された真犯人。
蘭子の解き明かす事件の真相。多数のバラバラ死体と伸一の死体運搬の秘密。
蘭子の推理による『エドウィン・ドルードの謎』の真犯人。
サイン本
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あああ厚かったー!
『魍魎の匣』より100ページ多いと言えば厚さが伝わるでしょうか。ああ手が疲れた。
横溝正史・江戸川乱歩を踏襲した、昭和40年代の函館を舞台とした大量猟奇殺人。
言い換えれば、DNA鑑定のない時代だからこそ成立しうる事件。
好みな題材ですが、ここまでてんこ盛りだともう食べられません。
ギブアップ。
気になった点がひとつ。
最近話題の『憮然』という単語。
たぶん作者も意味を間違えていると思う。文脈的に。
校正でチェック入らなかったのかな。
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魔王ラビリンスVS二階堂蘭子シリーズ。
昭和40年北海道・函館。
呪われた家宝<炎の眼><白い牙><黒の心>の持つ
名家 宝生家に世紀の大犯罪者≪魔術王≫の魔の手が伸びる!!?
結構描写がエグイです。
お話し自体は長かったですが、おもしろくてサクサク読めました。
最後にはどんでん返しに継ぐどんでん返しで
楽しかったです。
ただ、蘭子の海外ミステリーの引用があそこまで必要なのか疑問。
読んでないから全然分からんです;
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本自体のボリュームもさることながら、事件の派手っぷりに大喜びしてしまう私。猟奇殺人てんこ盛りという感じで、こりゃあ一気読みだわ~。
事件の数が多くて派手な分、犯人はすごーく分かりやすい。ミステリ読みでこの人を犯人度外視する人はまずいないと思うし。で、犯人が分かればだいたいの事件のトリックも分かっちゃうんだよなあ。正直後半には「こいつでしょ? こいつ犯人でしょ? まだわかんないのかこいつらは~!」と思いながら読んでましたし。
でも。それでもやっぱり凄いなあ、と思ってしまったのは、ここまで「猟奇殺人」にしなければならなかった理由かな。いわば動機の一環。これは……なかなか怖いのでは。そしてあの「大量猟奇殺人の理由」。そこまで派手にするにはわけがあったか!と驚愕。
……ちなみに、蘭子と真犯人との対決はまだまだ続くのね。
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どんどんと派手になってくる二階堂蘭子もの。これもえぐい。気分が悪くなるほどだ。
事件そのものは名家の過去に関わってくる連続殺人で、犯人もトリックもどこかで見たようなパターン。物語の進行に勢いがあるから一気に読んでしまったけれど、どことなく味気なさが残った。
惜しみなく使われているトリックはさすがだけど、何となくトリックのためのトリックという気がする。まあ、その辺をくんで、犯人は「魔術王」なんだろうけど。
2006/4/15
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ここに一つ伝説が登場した。
――奇術 (きじゅつ)とは、人間の錯覚や思い込みを利用し、実際には合理的な原理を用い てあたかも「実現不可能なこと」が起きているかのように見せかける芸能。――
ミステリとは奇術である。人を騙し、最高のトリックにて人を歓喜させる。しかし、このミステリは奇術ではない。これは魔術である。
――魔術(まじゅつ)とは、. 人間の意志を宇宙の事象に適用することによって何らかの変化 を生じさせることを意図して行われる行為、その手段、そのための技術と知識の体系、 およびそれをめぐる文化である。――
体系に則り、事件を解決する蘭子は犯人を推測し完成させる。そう本当の魔術師は蘭子なのかもしれない。魔術師VS魔術師。
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2段で778ページの長編。いくつかの密室もあり、動機や思いがけない
犯人など、長いが面白く読めた。途中、チョットだらけたが。。。。
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再読。
ラビリンスVS蘭子の所謂"ラビリンスサーガ"の一作。
物語の内容量云々の前に、からくり屋敷の構造にわくわくしてしまう。
蘭子が出てくるまでが長いと感じてしまった。
その事情は再読なので分かってはいましたが、こんなに登場遅かったっけ?
同時進行の『双面獣~』は個人的にきっつい作品なのですが、一応再読します。
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自分は推理小説を推理しないで読むスタイルなんです。一切推理をしないで読んで、それまで自分の信じていたものが根底から探偵役にひっくり返されるそのカタルシスみたいなものを楽しんでいるんですが・・
だから、特に推理してないにも関わらずある程度真相がわかっちゃったりするとかなり興ざめなんです。
これはそんな感じの一冊でした。
なんでみんなこの人を怪しいと思わないんだろう?・・いやいやまさかきっとびっくりするような真相があって別の人が真犯人・・・と思って読んだらやっぱり自分の想像通りで。。
文章も、ひたすらに魔術王がいかに残酷か蘭子がいかに優秀かという部分がやたらと目立って「もうそれはわかったから」という気分に。お互いを違う角度で褒めあってるだけみたいな。うーん。
しかし同じような推理を構築しても、女性が探偵役だとなんでかちょっと嫌味っぽく感じるのはなぜなんだろうな?そう感じさせない女性探偵役のシリーズ小説って結構少ない気がする。
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項数読んだことへの達成感!
惨殺シーンが一番面白かった。
私の中では黒蜥蜴のところがピーク。
しかし、序盤からどう考えても怪しかった…残念。
解決編で事実を明かし、とりあえずよかったね。なのがどうもすっきりしない…
次々に怪奇な事件が起こるわけではなく、事件!捜査、考察…事件、捜査、考察…でテンポもくどく感じた。
とにかく、頑張って読めた達成感!