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西鶴の感情 みんなのレビュー
- 富岡 多惠子 (著)
- 税込価格:2,200円(20pt)
- 出版社:講談社
- 発行年月:2004.10
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紙の本
冨岡多恵子ワールドも見事
2006/08/14 18:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:仙道秀雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る
富岡多恵子さんは、一流の読書人だ。好きなものに入れ込んできてその結果通常人と違う言葉の使い方、生き方になってしまった人にしてはじめて書ける文章だと思う。
彼女は桜塚高校出身だそうだが、西鶴がその桜塚にしょっちゅう句会に出掛けていたのをみつけてから西鶴が気になりだしたという。かく言うわたしも7年ほど桜塚の近所に住んでいたし、今の会社の住所は大阪市中央区鎗屋町2丁目で、ここは西鶴が住んでいた場所(鎗屋町1丁目)のすぐ近所だと初めて知った。ここに来て20年になるから、通算して27年ほどたまたまわたしは西鶴の近くで生きていたことになる。結果、わたしにも西鶴は気になる存在になりつつある。
わたしは西鶴ほどアナーキーではないが(そんな西洋概念で西鶴の気持ちが掴めるはずもないのだが)、「自分を語らぬ」(p194)意志、マコトとは「ウソのかたまりー虚のなかに辛うじて在りうる」(p199)とする冷徹な真偽についての観念と世間への冷徹な対応ぶりに見事さを感じ、俳諧師のいかがわしさと一脈通ずる商取引にあけくれるわたしらのいかがわしさとが共通していることもあるのだろうか、西鶴の世界が急に親しいものに思えてきた。
本書は西鶴をめぐる10本の論考から成っているが、4番目の笑いという「すい」では九鬼周造の「『いき』の構造」がとりあげる「いき」への疑義が呈される。こうある。
「いき」が「すい」と意味内容的に同じだととの九鬼の断定に多少の疑念を覚えたのは、「すい」という語が、西鶴の時代とさして変わらず、上方で多くは「男」を念頭において使用されていたように思われたからであった。そうなると「すい」の構造は「いき」の構造と重なりをもちながらもズレが生じてくるのではないだろうか。(p78)
女郎の虚実を楽しむことのできる男の能力を「すい」と呼びたいらしいのがわかる。(p102)
もちろん本書は九鬼周造の論をあげつらうといったことを目的とするものではない。西鶴ワールドを微に入り細にいり浸かりきっていき、あわせて当時の上方の暮らしぶりに思いをいたす。楽しみながら。ただそれだけのことである。富岡さんはおおげさには言わないが、西鶴の生涯はなかなか見事な生きっぷりだったとする共感の質こそが本書を支えているのだろう。わたしもいつか同じ楽しみを楽しみたい。10数年後の楽しみにとっておくためにさっそく岩波文庫の好色一代男を購入した。「お取り置き」が一冊増えた。
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