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メキシコ、キンタナ・ロー州の浜辺に流れ着く、"私"が聞いた不思議な物語を描いた連作集。
『リリオスの浜に流れついたもの』『水上スキーで永遠をめざした若者』『デッド・リーフの彼方』
全ての話が、結局なんだったかわからないまま終わるのが、かえって不気味。
題名のとおり、全ては幻なのか、それとも……
アジア的な熱帯とはまた違う、海の冷たさとジャングルの暑さが感じられるような作品。
最後の『デッド・リーフの彼方』がよかったかな。
気持ち悪いとかじゃなくて、なんともぞわぞわする、嫌な感じの作品。
海の中に漂う何か、ってのは生理的に怖気が走る。
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ティプトリー.Jrというだけで高評価を与える奴がいそうでいやになる。
まあ、俺もティプトリー.Jrというだけでいくばくかの金を払ってしまう愚か者なのだが...。とりあえず、大人のSFファンなら金をドブに捨てる覚悟で買ってしまうだろう。
さて、ティプトリー.Jrは初めて。サンリオ含めて全冊購入済みだが、「接続された女」すら読んでいないのだな。
で、この連作短編の感想。
これはラファティですか?酒を飲んでいない素面のまたは欝状態の。
ラファティの短編集の中にコッソリ紛れこませても、全然分からんだろう。「水上スキーで永遠をめざした若者」なんて題名からしてそんな感じに思えてしまいますが、どうでしょう。
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8月5日読了。SFの名手による、これはファンタジー?3編の印象的な短編を収録。キンタナ・ローとはメキシコ東の、カンクンなど観光地の近くに存在する海岸地域のようだが、各編で語られる神々・歴史・自然から立ち上る上質の酒のような、コクと旨みに満ちた小説だ。どのお話もラストにちょっとゾクっとさせられるような、幻惑させられるようなヒネリが効いており、ミステリ仕立てであるとも言える。うまい書き手は何を書いてもうまいのか?
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硬派な女性SF作家の世界幻想文学大賞受賞作。SFではなく、ファンタジーにカテゴライズされるようですが、僕にはイマジネーション豊かな純文学寄りに読めました。SF界の権威というオーラを纏わない、等身大の作家の自然な姿が感じられるような3つの連作中篇。ポール・オースターやスティーヴ・エリクソンの諸作品、ル・クレジオの『海を見たことがなかった少年』『パワナ』などが好きな人にお薦め♪
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南アメリカの浜辺の匂いがする、海を舞台にした幻想小説三編。
大きく、穏やかでうつくしい海に包まれたような気分になりました。
「リリオスの浜に流れついたもの」という短編が、どことなく少女小説っぽくて好きです。
キンタナ・ローの海に現れる不可思議なものたちは、自然開発に伴い、まぼろしのように消えゆくものに対する、ティプトリー哀しみを表現したものなのでしょうか。
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同著者の『愛はさだめ、さだめは死』が面白かったから。私は、こちらのほうはすんなり読めた。だって「ファンタジー」に分類されているのだから。同じ著者の他の作品と比較しながらまとめて読むと、この人の凄さがわかるような気がする。とにかく不思議で、でも面白かった。文学の分類にケチをつけたい気分のときもあるけれど、でも整理目的であれ、初めて本を手にする人にとってであれ、何らかの指標が必要なことは認めます。図書館も書店も、そういう意味ではなかなか「ぶっ飛んだ」真似はできないけれど、「私の本棚」は私だけが配架できるのだ。この愉しみ、悩み、筋肉痛。ぶっ飛んでやる!??
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ユカタン半島キンタナ・ロー州を舞台とした3つの連作短編からなる海洋幻想小説です。幻想的なフワフワ感に、現実のやるせなさを混ぜ込んだような作品になっています。
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http://shinshu.fm/MHz/67.61/archives/0000309172.html
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「リリオスの浜に流れついたもの」
「水上スキーで永遠をめざした若者」
「デッド・リーフの彼方」
海から去来する幻想を、海の美しさや神秘性をあらわにしながら描く三編。
「水上スキーで永遠をめざした若者」が一番好みだった。
サンゴ礁のある豊かな海で、朝日ののぼる海を疾走する水上スキーとそれを駆る若い男。そして現れる古の都の姿。一枚の絵画のように美しい情景だ。
環境破壊や観光地化、海という大自然やマヤ族の文化からの復讐、など詩情を感じさせる美しい物語と込められた作品の意味が、ティプトリーの作品のなかでもとりわけきれいにまとまっている連作だと思った(ティプトリーには自身の持つ過剰な何かが噴出している作品が多いと思うので)
解説が背景から作品の意味まで詳しく書いてくれていて良かった。
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キンタナ・ローの浜辺を舞台にした3篇の短篇を収録。
著者はSFで有名だが、こちらは幻想小説というかファンタジーというか、普段の作風とは少し異なり、作中ではゆったりとした時間が流れ、静謐な雰囲気が漂っている。
名手と名高い浅倉久志の訳文も素晴らしく、まるで本当に海辺にいるような心地にさせられた。
この本だけが何故かハヤカワ文庫FTからの刊行。この1冊だけいつものSFレーベルでないのはちょっと不親切かも。
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分かったような、わからないような
現在の人類が汚染する海
支配と被支配との関係
そんなハードなテーマを語っているのかも知れないが
フワフワとしたファンタジーとしても読める。
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図書館で目に留まって、本当に何となく手に取った一冊です。
作者のティプトリーさんは本当は女性(覆面作家)で、SF小説の名手なのですね。彼女の書いたSF小説は、私でも名前を知っているものばかりでした(中にはずっと読みたいと思ってるSFも!)
そんな彼女が、ファンタジー小説というあ、幻想小説を書いたのが今作です。
作者も、語り手もアメリカ人ですが、キンタナ・ローというメキシコの海を舞台にしています。
「リリオスの浜に流れついたもの」「水上スキーで永遠をめざした若者」「デッド・リーフの彼方」を収録しています。
語り手の「わたし」は同一人物なので、ゆるい連作短編集といったところでしょうか。
何となく手に取った一冊だけれども、読み始めると不思議な味があって、どんどん引き込まれていきました。海って本当に不思議です。何があってもおかしくないというか、何があっても許されてしまう場所というか。海が両性具有という考えには非常に親近感が湧くと同時に、納得してしまいます。
そんな私のお気に入りは「リリオスの浜に流れついたもの」ですね。
ドキドキして、少し怖いところさえあるんだけど、本当に面白いです。
幻想的な海と、それでいて海の怖さみたいな側面を余すことなく書いていて、自然に対する畏敬の念というものがこみあげてくる好篇です。
まさに世界幻想文学大賞の受賞作にふさわしい一冊でしょう。
この本を読んだら、作者のSF小説もまた読んでみたくなりました。ティプトリーさんのお話って、とにかく題名のセンスの良さが本当に素晴らしい、て思うのですよね。
海に出ることが多くなる夏の前、梅雨くらいの時期に、なんとなく読みたくなってしまう一冊で、今の時期に読めてよかったなって、想うそんな一冊でした。
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著者晩年の幻想小説、中編三部作。
メキシコ湾とカリブ海の間に突き出た半島キンタナ・ローの沿岸を巡る奇譚。
原題は"Tales of the Quintana Roo"――なので、
邦題に日本語の静かなパワーを痛感、カッコイイ。
昔、カンクンへ旅して骨折して帰ったきた人の話は……
しなくていいですね(笑)。
そこまで行ったことがなくても、
沖縄の海に浸かった経験のある向きには、
美しいエメラルドグリーンの海に、
その色味から冷やかさを想像し、
熱気に包まれて火照った身体を
クールダウンしてくれるのを期待して駆け込むと、
実は――ぬるい、
物凄く生ぬるくて「騙された!」と叫びたくなる、
あの気持ちを思い出していただけるかと思いますが、
この連作のページを捲っていて、そのときの気分が蘇りました。
空気がトロンとして、実に心地いい。
もっと難解、あるいは奇抜過ぎて
着いていけない作風を想像していたら、
いい意味で肩透かしを食いました。
我々の現実の生活の延長線上、
あるいは曲がり角の向こうにある奇妙な世界の話。
しかし、箱メガネで覗いた水に反射するのは、
侵略や格差といった歴史や経済の深刻な問題なのかもしれない……。
ところで、ラテンアメリカ文学者・越川芳明氏による解説が
素晴らしい。
著者の来歴と、収録作のバックボーンと思われる事象について
過不足なく伝えてくれている。
読者が文学の解説に求めているのは「●●さんと私」のような
エッセイ、内輪話などではないのだ。