紙の本
読者ともに成長した作品の軌跡
2005/04/17 19:42
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:関 智子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『エロイカより愛をこめて』は連載開始当初からリアルタイムで読んでいましたが、 ロックミュージシャンをモデルにした伯爵やジェームズ君のキャラクターなどは当時の少女漫画ファンにわかってもらえばいいや、というスタンスではじまった作品だと思います。
私たちの世代では「この作品のせいで大学の第二外国語にドイツ語を選択する女子学生が増えた」といわれたように(実際に当時ドイツ語教育雑誌にそのような記事がのった記憶があります)そのねらいは成功。
しかしそれから、連載継続二十余年。この作品の影響はそんなものにとどまりませんでした。
この本を読むと、現在は世代、性別を超えこの作品の読者が多数いることのほか、ドイツ本国にまでファンを獲得しているとことがわかります。作品を描き続けるというな積み重ねの中で、作品自身が国境や漫画というジャンルも超えた高いクオリティを獲得してしまったのです。
連載開始当初からの読者としては深い感慨を覚えるとともに、作者と作品を応援したいと思います。
なお、内容はライターがまとめた解釈本ではなく、青池さん自身がこつこつとマガジンハウスの広報誌に連載していたものなので、
『エロイカより愛をこめて』の中身同様とても濃い。この値段でお宝映像や情報満載。お買い得だと思います。
個人的に特に面白かったのは、クリスマス島での研究調査隊との交流の経緯や青池さんが自分の生い立ちを振り返った「青池保子のつくりかた」。デビューに水野英子さんが口添えしていたこと、売れない時代のつらい思い出などの漫画史的に興味深い情報や、新潟出身のご両親ゆずりのねばり強さ−−など作品だけではわからなかった青池さんのパーソナリティの魅力も感じることができます。
なお、この本には『エロイカより愛をこめて』の熱心な読者だった私の友人も登場しています。彼女は アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツという環境問題・国際協力についての本を書き、ファンであった青池さんに「少佐が好きなベンツではこういうことをしている」と本を贈ったのですが、青池さんがその内容に目をとめ、『Z・最終話』に反映させたというエピソードが掲載されていました。
本には書かれていませんが、彼女が大学で国際関係論を専攻したのは、当時青池さんの影響もあってのこと。現在環境問題そのものを生涯のテーマとし、さまざまな調査活動を実施している彼女は、最初のきっかけをふだん意識することはないそうですが、この彼女のように作品の成長とともに、この作品をきっかけにして成長した読者も多いと思います。
幅広い問題を視野に入れた青池保子という作家だから可能になったことかもしれませんが、成長した読者がさらに作品の成長に寄与する−−という読者と作品の幸せな好循環のケースを見ることができました。
紙の本
かわいい!大島弓子「綿の国星」のチビ猫が、少佐の髪を編む☆
2005/02/22 01:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:パトリック - この投稿者のレビュー一覧を見る
漫画の描き方が具体的に詳しく書かれ、漫画家の喜びと悲しみが伝わってきます。
文章の間に出てくる描き下ろしのイラストが、おもしろすぎる!
少佐が現実の軍人みたいに単髪になったり、子供時代の姿になったり、作者だからこそ可能な大胆な絵にハートがきゅんきゅん♪
見るたびに、明るい気持ちになれるんです。
26年前の合作漫画のプレゼントにも、「ありがとう!」と叫びたい。
少女漫画ファンの伝説「三つ編みの少佐」が、ついに見られました。
チビ猫が少佐の髪を編んだり、ひざにすわったり、すっごく愛らしい。
少佐も買い物かごやガマグチ持ったりして、「エロイカ」では絶対見せない愉快な表情が新鮮。
表紙をあけたら、豪華なカラーイラストや写真が出てくるのも嬉しい。
この本は何度開いても飽きない、お得感いっぱいの宝物です。
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復活してからの「エロイカ」は読んでない。(読もうと決心)でも「エロイカ」ファンだけでなく、仕事を持つプロの女性のエッセイとして深い内容でもありました。なんていうか「大人」だ。少女漫画家というと結構奇天烈な行状も聞こえてきたりもするけれど、マンガの書き方指南というより創作の姿勢が見えてきて、それはあくまで誠実で情熱あふれるものだというのが嬉しかったりもしました。
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青池保子、マンガもいいがご本人もステキだ!うちらの世代の憧れのマンガ家さんのエッセイ。そりゃもう面白い。エーベルバッハ駅で記念写真を嬉々として撮って来たヤツ、私の友人にもいたなあ…。
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マンガを読んでいて、どうやったらこんな話が作れるのかといつも感心していたので読んでみた。物語の作り方については期待はずれだったが、他のところが面白かった。少佐がエーベルバッハ市のパンフに載ってたり、ドイツでの反応とか。あと、青池さんのプロ意識に感服。
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日本の漫画は一部が小説を超えているが、その一人が青池保子。こんなに面白い漫画をどうやって描いているのだろうと思って、読んだ。面白いところは、自分で書いていて笑うらしい。そりゃ、そうだろう。本当に可笑しいんだから。
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おかげで2巻から読み返しちゃったじゃないか〜。すっごく青池さんに親近感♥ アルカサルとかも読みたいなぁ。買っちゃおうかな。(2005-05-02)
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この本の想定される読者は、以下のようになるだろう。(想定読者人数順)
1. 「エロイカより愛をこめて」ファン
2. 漫画家志望者、漫画家
3. 漫画/出版研究者また出版業界人
もちろん、これらの複数を兼ねる読者もいるだろう。
そしてこの本は、これらすべての読者の興味に応える内容になっている。
私はもちろん1。
秋田文庫版1~19まで読んで、これ以上、様々な推量を行わず、この本を読んでしまえば、私の頭に浮かんだ疑問の多くに解答が得られるのではないかと思った。
ここで話がこう変わってきたのは、なぜ?
絵が変わったのはなぜ?
青池保子の西洋美術の造詣は、どうやって深めたの?
青池保子は海外事情は、どう収集して、どう捉えているの?
物語の調子が変わったのは、こういうこと?
この話は、こういう取材をして書いたのでは?
等々
期待したとおり、これらの疑問のほとんどの解が、この本にある。
また書名に忠実で、一話を作るための、着想から完成までの流れややり方が原稿コピー等用い、細かく示されている。カラー原稿の書き方もこと細かく書かれている。インクや紙など画材の記述にまで及ぶほど。
アシスタントたちとの共同作業の記載もあるから、アシから始めたい漫画家志望者にも興味深い内容だろう。
アシは女性だけのもよう。火器、兵器の登場が少なくないから、男性のアシもいるのかと、思ったが。
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発売から5年経った今、本屋で出会って買いました。
面白かった~。
内容はもちろんなんですが、
青池保子先生のお人柄がわかる気がします。
明るい方だなぁ。
うるさくて傍若無人な明るさじゃなくて、
明朗で明晰で知的でユーモアがある人物像が浮かびます。
なんだ、まさしく(少佐+伯爵)÷2!
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エロイカを昭和的画風の少女漫画と侮っている方々は、損をしている。エロイカでは政治、美術、宗教などの欧州文化が楽しく学べるのだ(おまけにちょっと軍事も)。
冷戦をこれで学んだ身でありながら、冷戦後の展開がどのようになったのか気になったまま未読なのだが、これを読んで最初からまた読み返したくなった。
特にビザンチン学者の発掘チームとのやりとりやドイツ軍雑誌「Y.」への掲載話は感動的!
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面白かった〜〜〜!!\(^o^)/「エロイカより愛をこめて」の創作秘話です。キャラ設定の取っとき裏話やら、時代背景、そして、何よりも、アシさんに渡す前の原稿と、その後が見開きで提示されているという贅沢さ。そっかぁ、青池先生は、登場人物の顔はしっかり描きこまれてから背景・その他の仕上げをしてもらうのね。(そして最後に少佐の黒髪を御自身で。)また、プロットを編集者と打ち合わせして、その後シナリオに、そして絵コンテ(いわゆるネーム、ですね)、完成原稿となるまでの過程も実物をそのまま見せてくれるんですもの、もう、楽しくてたまりませんでした。意外だったのは、少女フレンド時代、アンケートで上位に行けなくて段々編集者が冷たくなっていく、という過去。私、少女フレンド時代の青池先生好きだったけどなぁ。でも、あの当時は、「サインはV]とか、ちばてつや先生「みそっかす」とか、「金メダルへのターン」とか、楳図先生の「へび少女」とか「赤んぼ少女」とか、人気シリーズが多かったから、青池先生の印象は薄かったのかも。(私もそういえば順番的に一番ではなかったような。だいたい青池先生の連載の題名が思い出せないし。)その後、プリンセスに移って、「イブの息子たち」で、すっごぉ〜〜〜く面白い、って感じたんだった。青池先生の頭の中って絶妙に変!って大学生時代に思ってた・・・。大島弓子・おおやちき・樹村みのり各先生方との「一晩でできた」コラボ作品が巻末にあるのも嬉しい。みんなで白い原稿用紙に好きに描きこんでできたそうですけど、これはもうお宝ですね。(#^.^#)文庫も出ているけど、買うんだったらこの版だろうなぁ。図書館にこの本を入れてくれた司書さんに感謝しつつも・・・欲しい・・・。
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小学生のころ母が大好きだった漫画が「エロイカより愛をこめて」だった。あえて漢字で漫画と書くのは、少女マンガにあるまじき女性登場率の低さ!劇画だし。 金髪碧眼のイギリス泥棒貴族(←ホモ)が華麗に画面を舞うはずが、NATOの少佐とKGBのおっさんスパイたちが絡んでハードボイルド・コメディとしてむちゃくちゃ面白くなってしまった… というお話を創作された青池保子の制作裏話と自伝である。 怪しい宗教がかったアシスタントさんが来たときの話とか石像が意思を持つような話を書いたらカッターでぶっすり手を切ったとかは、霊感がないのにホラー体験をしてしまったの、ほらっ!と少女が誇らしげに言うようでほほえましかった。 そうだ、いま書いてて思ったけど写真の彼女は大変かわいらしい。もっとセクシー美女か大女を想像していたので驚いたが、爽やかに何でも笑い飛ばしてしまいそうな雰囲気は十二頭身でかっこいい伯爵たちを描いていて少しも違和感がない。伯爵やジェイムズ君やボーナム君がロック・グループから生まれたなんて…イメージぴったり。ふふっ。私はハレルヤ・エクスプレスのころの絵が好きなので、それと重ねてます。 中学生のときマンガ家へのファンレターに添えた作品がその人の目にとまり、雑誌に短編を描いたのがプレデビューだったとか。そのマンガ家が当時すでにカリスマ作家だった水野英子。そのときは舞い上がってたいしたものが描けなかったそうだけれど、『イブの息子たち』以後の活躍を見越していたとすればさすが…天才は天才を知るってことね!
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先日、懐かしのツェッペリンのLIVE映像をバーのカウンターで鑑賞。
文字通りかぶりつきで観てしまった。
本書のなかで、「伯爵の原型は、美しかった若き日のロバート・プラント」と青池氏が言っている。
氏直筆似顔絵のロバート・プラントは、自信たっぷりにちら見せの胸毛で微笑んでいる。
LIVE映像での彼も、豊かな巻き毛のブロンドをなびかせて堂々とした歌いっぷり。
ああ、ステキ♪♪
それにしても、どうしてジェイムスくんなんだよ〜、と思いながらも、この日はどうみてもジェイムスくんにしか見えない、ジミー・ペイジがいい仕事をしていた。
電卓をたたく姿とだぶって見えたりして、わははは、冗談です。(2010/09/30)
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少佐といいジェイムズ君といいロレンスといい、あれだけぶっとんだ個性的キャラクターを排出したとは思えないくらい青池保子は真面目で落ち着いた人だと思う。まじめといっても堅いとかそういう意味ではなくあくまで創出するキャラクターとの対比においてです。好奇心旺盛で自分の作品に対して誠実で妥協を許さないプロフェッショナルでもあります。ある作品中の1ページが出来るまで、文章で書かれたプロットからネーム、ペン入れ、完成稿も掲載されていてファンは必見。
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漫画家『青池保子』の独創的なスパイアクション漫画『エロイカより愛をこめて』を中心としたエッセイ。
まず、「おお!懐かしい」
あの少女マンガの中にあって異彩を放つ絵とストーリー、個性的な面々、中でも堅物の少佐(なぜか金八先生ばりの長髪)のカッコ良さ。
そう言えば、あの衝撃的な背徳感漂う一作目は、私が出会った初のBL風作品ではなかっただろうか?でもその後は、あれよあれよと言う間にスパイコメディー路線になってしまった気もしますが。
「エロイカ-」と名をうってますが、漫画全般的にかかれてました。もっと「エロイカ」の突っ込んだ話を読みたかったな。