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東京タワー オカンとボクと、時々、オトン みんなのレビュー
- リリー・フランキー (著)
- 税込価格:1,650円(15pt)
- 出版社:扶桑社
- 発行年月:2005.6
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紙の本
この本を貶すとまるで死んだオカンの悪口を言っているみたいな気分になる。
2006/09/07 21:21
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は貶しにくい。貶すとまるで死んだオカンの悪口を言っているみたいな気分になる。「あんな良か人を」と白い眼で見られそうな気がする。死人に鞭打つ極悪非道の書評人のレッテルを貼られそうな気がする。
何度も手に取りながら長らく買わなかった本だ。その理由はこの読後感の予感があったからなのかもしれない。
それでも読んでみる気になったのは2006年の本屋大賞を受賞したからだ。2004年の第1回大賞が『博士の愛した数式』で昨年の第2回大賞が『夜のピクニック』。いずれの受賞についても異存がない。信頼できる賞だと思った。
それで手に取ってみて驚いた。文章が下手なのである。第1回の小川洋子、第2回の恩田陸という「すこぶる」付きの文章の達人と比べるのは気の毒かもしれないが、かなり文章は拙い。これを「独特の文体」などと称する人もきっといるんだろうなあ。でも、少なくとも僕個人の感想としては21世紀になってから読んだ本の中で一番下手な文章だった。活字に親しまないまま大人になってしまった人の文だと思う。
ところが、文章の巧い下手とは関わりなく、ストーリーの、と言うより人物の面白さで読者をぐいぐい引っ張って行く。実は読んでいてとても面白い。感動もする。「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、別に事実だから面白いわけではなく、著者のしっかりとした観察眼と人生観、自分らしいものの感じ方・捉え方によって支えられているから、これだけ読み応えのある書物になっているのである。
今の時代にはあまりはやらない母親像である。こんな風に描くとマザコンだと見られるのが嫌で、こんな風に書くことも、いやこんな風に感じることさえ我々は避けて生きている。
そういう風潮に「自分の母親を愛してどこが悪いかっ!」と真っ向から逆らって書いているようにも見えないではないが、実はそうではないと思う。著者の視線はもっと単純で素直である。ただ自分の好きだった母親のことを書いた本なのである。
そうだ、今こそ著者のように自分も堂々と母に対する愛を表明しよう、とまで僕は思わない。もちろん逆に著者の思いを踏みにじろうとも思わない。ただ、面白い、良い書物であったと思う。それだけでとりあえず良いのではないかと思う。
今回のこの書評はきっと評判悪いだろうなあ。
by yama-a 賢い言葉のWeb
紙の本
母を想起するお話
2008/02/07 01:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:redhelink - この投稿者のレビュー一覧を見る
初体験。何が初体験かって?実は単行本を読むのはこの本が初めてなんです。今までは文庫と新書が私にとっての本の世界の全てだったので、最初は読みにくいのではないかと構えていました。・・・単行本っていいですね!って思えた作品としても貴重な一作となりました。
えー早速感想です。最初の三分の二は正直普通な内容でした(私にとって)。大賞をとるまでの作品なのかどうかを疑問に持ちながら、時折くすりと笑いつつ話を読んでいました。勿論普通とは言え、読みやすく、作者の表したい情景が頭でカラーで想像できていた辺りは完成度の高さを物語っているのではないでしょうか。幼少期の描写や上京してからの貧乏生活については、まるで感動ものを読んでいるとはとても思えない内容で楽しみました。それでもそれはそれ。大賞をとった要因は何なのかがよくわからないというのが常に付きまといました。あ~へたこいた(注:既にブームは去っていました)。
しかーし、しかしですよ。残り三分の一くらいであることがわかってからの展開は、不覚にも目が熱くなったんですよ。正直くやしいです。私のステータスとして、本や映画では基本感動して目が熱くなったり涙を流すということはありえないからです。オカンの人柄や生き様についての描写が、前半部分は伏線(といっても何かあるわけではないです)だったのだ!と自分で勝手に妄想して話を読み進めました。後半になるにつれて切なく、そして愛しくなってきたのです。
さて、この話を読んで私が思ったのはおふくろのことです。見た目の年齢より実年齢のほうが先行していて、料理が自慢できて・・・とこんな私にはもったいないおふくろを持ったと改めて思う私がいるのです。私の勝手な都合で今は迷惑と心労をかけていますが(執筆時はそらもう・・・ね)、自分のやりたいことを掲げてそれに向かって頑張ってやっていたということを何年か後になろうと伝えられたらいいなと思いました。まぁそう思うなら書評書いてんじゃねぇよ!とかいう冷たいツッコミは却下しますよ。これはこれで私の中では重要なことなのですから。
本屋大賞の一冊目がこの作品なのでなんとも言えないですが、恐らく現代社会では忘却された、人間誰もが持っている優しさや感動を伝える本が支持されているのではないかとも勘繰りを入れてみた私がいました。
読書において、ビジネス書を読んで教養を深める、純文学に浸って作家の世界観を味わう、ライトノベルを読んで現代のニーズの流行を知る・・・などいろいろありますが、本屋大賞の本を読むことで心を癒すというのもいいのではないでしょうか?残りの本もそのような内容であれば、素敵な大賞にもっともっとなると思います。