紙の本
『ロミオとジュリエット』の魅力を解き明かした快著
2005/11/12 16:53
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:la_reprise - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近『ハムレット』や『ヴェニスの商人』などシェイクスピア作品の新訳を立て続けに刊行している河合祥一郎氏がみすず書房の「理想の教室」シリーズから『ロミオとジュリエット』をやさしく解説した本書を上梓した。シェイクスピアを全く読んだことのない人でも知っている『ロミオとジュリエット』の物語。この人口に膾炙した作品が気鋭のシェイクスピア学者の手によって見事に解き明かされている。
本書は大きく三つの部分に分かれていて、「第一回」では『ロミオとジュリエット』における「時間のトリック」が、「第二回」では恋と名誉というテーマが、「第三回」では「韻」などのテクストの形式が分かりやすい口調で語られている。その三回の「講義」を通して強調されているのは、一見単純な悲劇にみえる『ロミオとジュリエット』が手練手管とも言えるようなシェイクスピアの卓越した技巧によって形作られているということである。例えば、「第三回」に登場する、ロミオがジュリエットを「口説いて」、キスをするシーン。若い二人が出会ってからわずか14行の台詞を話しただけでキスをしてしまうのだが、その台詞が見事にソネット形式の韻文となっていること、そのソネットが終わったと同時にロミオとジュリエットがキスをするということが、シェイクスピアになじみのない読者にも分かりやすく説明されている。そして本書を読み通していくと、「第一回」で解説される「時間のトリック」も含めて、『ロミオとジュリエット』、さらにはシェイクスピア作品全体がリアリズム的な整合性や自然らしさに囚われることなく、むしろ矛盾をはらんだ雑多さで成り立っていることに我々読者は気づくことになるのである。
死をも厭わない悲恋物語と単純に読まれてしまいかねない『ロミオとジュリエット』だが、そこには様々な技巧が施されている。本書はそれを巧みに説き明かしている。同じ河合氏が訳した『新訳 ロミオとジュリエット』(素晴らしい訳だと思う)とともに読まれたとき、『ロミオとジュリエット』という作品の魅力が読者によってさらに実感されることだろう。
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☆未読 この本を読んでから、蜷川幸雄×藤原竜也×鈴木杏のロミオとジュリエットを見直してみたい。やっぱり芸術の世界で、巨匠といわれるひとの作品には、普遍性があるのかなあ。
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知らない人はいないであろう『ロミジュリ』の経過を軽快な雰囲気で解説している、といった雰囲気。
ただやっぱり、原作は英語であって、それを日本語で読んでしまうと、韻とかシャレとか・・・難しいなぁという印象。
そこら辺をわりと丁寧に解説してあるので、
これを読めば原作読む気になれるかも!
一般的な英語ではないので、大変だけどネ。
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[ 内容 ]
二人の恋は何日限り?
恋する男はふにゃふにゃ?
出会って14行の口説き文句でキスするには?
猛スピードで駆け抜ける若い二人の恋物語には、売れっ子劇作家シェイクスピアの経験(?)と才気が利いた演劇のマジックが仕掛けられています。
言葉のテクニック・空間のトリックで魅せる演出術には恋のヒントが隠されている。
[ 目次 ]
第1回 時間のトリック―構造
第2回 命かけて恋―テーマ(恋は夢;悲劇はなぜ起こったか;恋する男は女々しいか? ほか)
第3回 恋は詩にのせて―テクスト(出会ってから14行のセリフでキスする恋のテクニック;手がかり(1)「韻文」って何?
手がかり(2)「韻」って何? ほか)
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先生に勧められ、読破。
「ロミオとジュリエット」の構造やテーマ、レトリックについての本。
特に韻文の説明の所は非常に分かり易いと思う。
私の卒論の主張が半分ほど見事に被ってた。
「ロミジュリ」はあまり好きではないと改めて感じた。
もう少し難度をあげてもよいような気がする。(易しさってのが必要でなかったら)
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このシリーズはどれもとても、面白そうで、
全部読んで見たいと思いつつまだ2冊目なんです。
この物語の派生や、シェイクスピアのすばらしさ。
ドラマツゥルギーとは何か、
オクシロモン(撞着語法、矛盾語法)について
←これ大好きなのに、こんな呼び方あるなんて知らなかった。
あと英文で説明されている韻文もおもしろかったです。
そして何より、ロミオとジュリエットのその分身と男性性と女性性について。
書かれている部分がすごく納得できて
原典があるけど、シェイクスピアがロミ・ジュリをスタンダード
に押し上げた理由がよくわかります。
あ~参ったな~そして恋するスピードですよ!
恋をしていると時間が変わるのです。すごく納得です。
相思相愛の恋とは加速装置なんですって!!
でも、恋をしたことのない方ご安心めされ、
作者の河合さんはこうも書いています。
「あんまり理知的で賢いと恋はできません。
皆さんは賢いことが良いことだと信じてきたでしょうが、
恋愛に関するかぎりそうではないのです。」
賢い方は恋に落ちないのです。
それに相思相愛になるのって
なかなかどうしてすごい低い確率ですよね。
バカになって、相思相愛の相手が見つかるのは、
人生においてそう度々有るわけの無い奇跡なのです。
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単純明快な『ロミオとジュリエット』に解説なんて必要なのか、とも思ったが、丹念にセリフを読み、劇の構造を考え、エリザベス朝時代の演劇事情や当時のイギリスの常識などを勘案すると、驚くほどたくさんのことが見えてくるのだ。
もともとこの話は、イタリアのシエナが舞台で、主人公の名前も違っていた(マリオットとジアノッツァ)。その伝説/民話が広まっていく過程で名前や筋に変更が加えられ、やがてアーサー・ブルックという人が『ロウミアスとジュリエットの悲劇的物語』を書き、これがシェイクスピアの種本となったのだという。
この本では、シェイクスピアが付け加えた部分と、その意味・効果についても解説していて、それを読むと、シェイクスピアがこの一見単純な物語に奥行きと彩りを持たせた様が分かる。
なぜティボルトはロミオに出会ったとき敵意満々なのか。あるいは戦いに応じないロミオが当時の観客の目にどう映ったか。ロミオは追放されたからパリスと結婚しろと説く乳母の言葉の重みとそれを突っぱねるジュリエットの心情。こうしたシーンによって、シェイクスピアは『ロミオとジュリエット』をただの恋愛物語ではなく、同時に名誉(honour)の闘争の物語に仕立て上げたのである。
また、「当時、「劇作家」(playwright)という言葉はなく、芝居書きはみな「詩人」(poet)と呼ばれて」いたという(p.112)。『ロミオとジュリエット』でも押韻(ライム)を使うのはもちろん、音節の強弱を交互に繰り返して定型(強弱五歩格)にして、これを連ねてリズムを生む手法がふんだんに使われている。
これを知るだけでも有益だったが、そこから分かる事実もすごい。舞台転換や幕割りがなかった当時の劇で、シェイクスピアはセリフの韻とリズムを使って場面転換や時間の推移を見せていたのだ(今のテキストでは何幕何場と分けられているが、それは後世の編集とのこと)。
というわけで、一読明快な『ロミオとジュリエット』を、もう少し深く読んでみたい人におススメの本。文章も語り口調で全然難しくない。
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ロミジュリが好きで、もっとシェイクスピアが好きになりました。「オクシモロン」2030年頃になったら「オトマトペ」みたいに流行りそうです。