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満蒙国境で起きた「ノモンハン事件」を兵士の視点から描き出した小説。前線の兵士たちの体験談をベースに造りだされた。戦場の有様が、心理面とともに読みやすい文章でつづられている。そこには戦争の残酷な力が溢れかえっている。死んで当たり前の戦場にある人間性が浮き上がり、認識できないほどの苦痛とともに、やりきれない悲しみが静かに、深く心に残る。
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村上春樹が「ねじ巻き鳥クロニクル」で取り上げていた「ノモンハン事件」に興味を持ち、入手。
戦略研究書の類ではなく、3人の兵士の体験談で構成された、実際の戦場の風景を描き出した作品。
ちなみに3方とも旭川の第7師団所属、自分とは同郷の方々である。
巻末には作者と司馬遼太郎との対談も収録。
「自分がノモンハンを書くと血管が破裂するだろう」という司馬氏のコメントが、重い。
2008年5月購入、読了。中古で700円。
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伊藤桂一著「静かなノモンハン」講談社文庫(1986)
体験談をもとに、実際の戦争の戦いの中で感じる兵士の心理と悲しみを描く本。戦争体験者自身の戦う信条と、それに基づく行動。死が隣り合う世界での緊張感と人の心情が細かく描写されている。エグイ描写もあるが、それが事実なのだろう。
究極な死に接する人間の感情を知りたく読んだ本。
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【静かなノモンハン】 伊藤桂一さん
芸術選奨文部大臣賞、吉川英治文学賞受賞作。
1939年に起きた日本軍とソ蒙軍の国境紛争事件。
当時戦闘に駆り出された下級兵士の生き残り
3名の体験談を伊藤さんが清書されています。
命令一つで戦地へ送られ、命を堵して軍務を
全うしようとした兵士たち。
9割近い仲間は屍となり、戦局が悪化してからは
遺体は葬ってももらえなかった。
目前で仲間が次々と死に行く中で、兵士たちの
心情は如何であったか・・
☆
あとがきに司馬遼太郎さんと伊藤さんの対談が
書かれています。
軍隊の中でも出世というものがある。
陸大を出て官僚になる軍人は自分の階級が上がる
コト以外は考えていない。
そして軍人が出世をしようと思ったら戦争は
無くてはならない。
軍人が軍人のために始めた戦争。
そういうコトが言われてました。
震災さえも党利党略に利用しようとする
政治家たちを連想してしまいました。
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戦死した者達の指を切り遺品として持ち帰ろうとする、それだけでも悲壮感のある話なのに自分達が全滅する可能性が高くなり、指を遺品として持ちつづけることの無意味さを感じたときの絶望感は計り知れないと思う。
弔いは生きる者がいて初めて成立する。それすら許さない戦場がノモンハンにあった。
前線で戦死した兵士も、停戦後に自決を強要された連隊長たちも全く報われなかった。戦争が起きてしまうメカニズムを追求せずにはいられない一冊だった。
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貴重な一冊である。死が日常茶飯事の戦場における男の生き方と無数の戦死者。なんのための戦争か。静かなノモンハン。
これ以外のタイトルは考えられない。本書に出会ってよかった。名著だと思う。
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今ここに、失った戦友の死にざまと意思を後世に伝えてくれる一冊がある。これこそが真の軍記であり、そこに学ぶことこそが戦果であると思う。
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関東軍の馬鹿さ加減がはっきり示された、どうしようもなく悲惨な、事件ではなく「戦争」であったことが見事に描かれています。白旗を掲げて擱座した戦車から出てきたソ連兵を、できるだけ近づけたあと撃ち殺しています。いっぽうノモンハンの実情を知る下級幹部に対しては、軍はどこまでも監視の目をゆるめず、事あるごとに、その者を危地に追いやろうと意図したようです。軍だけでなく会社にあっても、組織を守るためには、個人は見殺しにされる場合が多分にあると想います。また、自民党の改憲草案にも、そのような雰囲気が感じられてなりません。
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ノモンハンで実際に戦闘を経験した3人の生還者の体験談。
ノモンハンはささいな国境の領土権を巡るいざこざから発展した戦争だが、この体験談を読むと凄まじく密度の濃い地獄の戦争だったことがうかがい知れる。
なかでも、敵が戦車や榴弾砲を備えた近代兵器を備えているにもかかわらず、こちらはロクな武器も支給されず、サイダー瓶にガソリンをつめた火炎瓶のようなもので戦車と立ち向かわざるをえなかったという状況には戦慄を覚える。
また、戦争終結後も兵士達は上層部の失敗を外部に漏らされないよう自刃を促されたり、帰国を許可しない処置がとられたりしたそうである。
理不尽な命令でも逆らえば銃殺であり、なんとか生き延びて帰ってきても、自分達の失敗を隠蔽することに血道をあげる連中にいいように利用されてしまう。
あまりの無残さに腹立たしさと怒りが沸き上がり、こういった連中の非道な人間性にもウンザリするが、戦争の真実とはこういうものなのだろう。