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最初の方は読んでいてわくわくするが
最後のほうすこしかったるくなる。
不確かな記憶がつながったり、歪んだり、描写がおもしろい。
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激動の時代に翻弄された家族と男の物語。
名声と安寧、記憶と真実、愛と孤独、光と闇。
様々な対立を経て読み終えるころには孤児となって世界に放り出されたような気分になる。
それにしても、子供の虚栄心とか恐怖心の微妙を書ける作家に、イシグロの右に出るものなし。
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もう、読み終えた後の喪失感と希望をどう表現したらいいのだろうと思う程、生きた小説。日本生まれのイギリス人作家カズオ・イシグロさんの本は死ぬまでに全て読みたい。イギリス人が主人公の戦前の上海租界を描いた第5作目にあたる「わたしたちが孤児だったころ」は、作者の幼年期を連想させる。入江さんの翻訳だけれど、十分に彼独特の言い回し、学生時代に流行る少年達の仕草だとかリアルなイギリス人が浮かび上がっている。上海で育ち孤児になった主人公が、イギリスで探偵になり両親の居場所を探し求めるストーリーといえば単純だが、其処に辿り着くまでにすさまじいドラマがある。英国籍を取った著者らしく、イギリス人、中国人、日本人と様々な国籍の人物が出てくるが夫々の立場が苦しい。結局は私達はみな、永遠に小さな子供で、大人になったらと、人が生きていく上で本当は独りぼっちなのだと気付いた瞬間を反芻しながら生きていくと説く。其処に寂しさはなく「孤児」の現実なのだ。解説もまた素晴らしい。涙を流す感動じゃなく、すとんと胸に落ちるようなじわじわした感動を貰った。
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お母さんが可哀相……。
事件を追う私立探偵って、イギリスではメジャーな職業なのか?
日本みたいに浮気調査とかがメインの仕事なんじゃないの?
社交界に入れるような仕事なの?
もしそうなら、やってみたいな……イギリスに行きたいな。
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彼の作品は、間違いがない。翻訳なのに、こうもスイスイ読めるのだから。
魔都上海を舞台にした寓話なのだろうが、メッセージ的なものを言葉にしてしまうと、この物語の豊かさが無駄になりそう。
いずれにせよ、「孤児」という言葉の解釈が鍵。自国を信じ切れていない長谷川大佐、いらだちを抱えながらギャンブルにのめり込むセシル・ローズなど、上海にいる人、いた人すべてが、自分の居場所を見つけられない孤児のように見える。
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ずっと原著で読みたいと思っていた、Kazuo Ishiguro の代表作。だったのだが、ハヤカワ epi 文庫に入っているのをたまたま見つけてしまったので、翻訳で読んでしまった。
まず、"When We Were Orphans" という、タイトルがいい。読み終わって振り返っても、やっぱりこのタイトルが素晴しい。過去の記憶と現在、戦前の英国と戦中の上海の雰囲気、恋と愛、現実とも夢ともつかない狂気が渾然一体となって押し寄せ、そして鮮かに収束していく……。これが小説というものだ。こういう小説を読むことこそ人生の歓びだ。
ただし、古川日出男の解説が完全に蛇足。このページだけ破って捨てたい。
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随分長くつきあったせいか、喪失感に飽きてしまっているのかもしれません。土屋氏の訳が好みだったので、美しい訳ではあったけれど、引き込まれるものがもう一つ足りなかったように感じます。
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物語のクライマックス前あたりでの人物の行動に違和感を覚えたのは事実だけれど、カズオ・イシグロの描く細やかではかない心情や運命がいたるところで見受けられた。彼の作品を読むといつも、終結した物語に対する感動と人物(登場人物しかり、現実の人々しかり)のことを思い感じる寂しさ双方に襲われる。
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カズオ・イシグロの作品は、毎回「人生とはなにか」ということを深く考えさせられる。人生は、正しいことを常に行っていれば幸せになれるということではないし、幸せになることが人生の目的とも思えない。でも、人生の終わりには平和で幸せと呼べるような気持ちでいたいという考えも間違いではないかもしれない…。
そしてまた、もうひとつイシグロ作品の共通のテーマは「喪失感」といってもいいかもしれない。主人公クリストファーの探偵としての最終的目的と、衝撃的な事実、そして喪失感。そのあたりがこの作品の見どころではないかしらん。養女ジェニファーの存在がこの物語に深みを増していると思います。
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ミステリーが得意ではない私は、物語半ばで投げ出しそうになったけど、最後の疾走感は味わっておくべきと思われる秀作。読んでよかったと最後に思わせる力がある。
やはり、カズオ イシグロ 読んで間違いがない作家。
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上海の租界で暮らしていた少年は10歳の時、両親が失踪してイギリスに帰る。
長じて、探偵となった彼は両親の行方を捜すべく、再び上海に戻ってくる。
主人公、クリストファー・バンクスの視点でずっと語られる。
も、カズオ・イシグロ氏の語り手はあてにならないと、他の作品読んで知ってるから、そういう覚悟で読み始めたけどやっぱり、結局のところ真実はどこにあったのか見失ってしまうのである。
「真実はたった一つ」と毎度言ってる探偵もいますが、イシグロ氏はそれは個人の価値観でしかないと、常に示唆してるのかもしれない。ただ、語り手は自分が語っていることが真実であると完全に信じているけど。
信じすぎることで、盲目になる、視野狭窄になること。そしてそのことが、周りに与える影響を、描いているように感じた。
視界が狭いのも独りよがりなのも、子供であるなら許される。そしてそれは世界を揺さぶることはない。が、大人になってしまった主人公は、大人になりきれなかった部分をなんとかするために上海に戻ってこなければならなかった。が、もどって彼が得たものは、別の空虚でしかない。
彼は、空虚の上書きをしただけなのだろう。
ただ、自分が傷つくことなく、そういった代償を周りに振りまいて…。
とはいえ、イシグロ氏のほかの作品に比べると、相当エンターテイメイトしている。
上海時代の幼馴染の日本人の少年とのノスタルジーや、社交界の花形でのちに上海で再会することになる女性や、養育することになった孤児の少女など、次々と現れる個性的な人物が、主人公の冒険に花をそえている。
…「わたしを離さないで」より、こっちの方が映画化に向いてる気がするんだけどね。
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半分過ぎるくらいまではいまひとつ流れに乗り切れなかったけれど、後半で一気にひきつけられた。読み終えてから反芻すると、積み重ねられてきた過去の回想が全部ちゃんと必要性が感じられる。さすが、と唸る。
先日NHK教育であった特集番組も見た上で読み終えた。
これは主人公であるクリストファーが、過去を振り返り“孤児だった”自分と世界との折り合いをつける物語、なのかな。と個人的には解釈した。
また時間を置いて再読したい。
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探偵モノとして読むと面白くない。ハードボイルドを読みたければチャンドラーを読めばいい。この話は主人公が過ぎ去った「いい時代」を取り戻そうとする話。どんなにがんばっても「いい時代」をとりもどすなんて無謀な努力にしか過ぎず、主人公が滑稽にしか見えない。そこに悲しみを見出せるけど、僕には届かなかった。「日の名残」で経験した「いい時代」への憧憬とは一線を画した内容で、個人的には一段劣ると思う
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上海で生まれたイギリス人が本国で成長して探偵になり、上海に戻って両親を捜す小説。
全編が主人公の視点を通じて描かれますが、その記憶と現実の齟齬が通奏低音のようにずっと続きます。といって完全に乖離するわけではなく、最後には幼少期の記憶が目の前の事柄と繋がります。
事件を解決するカタルシスはほとんどなく、あまりハッピーエンドでもありません。活明に描写された不安定な世界とソフトな結末を備えた作品。
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【粗筋・概要】
ロンドンで著名な探偵であるクリストファー・バンクスが10才のときに行方不明になった両親を見つけ出すために、幼少のころまで過ごした上海の租界(外国人居留地)に戻る。過去の記憶をたどりながら語られる探偵小説(?)。
【感想】
500ページにわたる長編であるにもかかわず、200ページ近くになるまで、物語がどこへ向かっている、すなわち、バンクスが何を語りたいのか判然としなかった。人によっては退屈と感じるかもしれないけれど、私はすんなり読み進んだ。といっても、面白くてのめり込んだというわけではないけれど。
読み飛ばしてしまったのかもしれないが、両親の捜索と世界を破滅から救うことの関連がよくわからなかった。第二次大戦前の人々は、先の大戦のような世界大戦が再び起きたら、世界は破滅すると思っていたかもしれない。それでも、一会社員と反アヘン運動の活動家の失踪が戦争の回避には繋がらないだろう。
退屈ではなかったけれど、面白くもなかった。