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結構、読了まで時間がかかりました。
ドラマチックな展開・表現をあえて静かで忍耐強く書いた作品でした。
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テーマがよくわからない。
幼いころに孤児となった主人公の生涯かけてのカタルシスを追う物語か。
エピソードを積み重ねていく形で物語は進行していく。ひとつひとつが何かの伏線となっているわけではなく、ぶつぶつと途切れる感じのエピソードなのだがなぜか引き込まれる。
終始どこか不安定な雰囲気は漂っているのだが、上海に入ってから、特に両親の幽閉場所のヒントを握ってからの展開がなんだか夢でも見ているかのような非現実感。あのあたりは混乱し、あんまり好きでなかった。
受け止めるのが難しいと感じた物語。
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本の最初の3/4くらいは
いくつかとても心に響くシーンや
セリフがあったものの、
けっこう退屈だな~と思いながら
読んでいたけど
残りの1/4が、とても素晴らしかった。
特にお母さんとの最後のシーンが感動した。
ただ、カズオ・イシグロの作品は
どれも奥が深くて、この作品にしても
本人のインタビューやさまざまな書評を読むと
私が読み切れていない部分も多々あって
その辺を考えて読んだら
もっと評価は高くなるのかも。。。
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自分が日常を生きているこのなんでもない瞬間にも、
世界のどこかでいろんな人にいろんなことが起きていて、
どこかで、重なったときに、
そのときどうしてたとか、実はこんなだったとか。
それは当たり前のことなんだけど、
こんなに不思議なこともないなって思った。
あんまり関係ないことだけど、この本は面白かったです。
やっぱりこのひとは好きだ。
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本日読了。列強各国が自国の利益のために中国大陸各地に租界を築いていく、そんな混沌とした時代を背景とした、記憶とノスタルジアを巡る物語。回顧される記憶は、カメラのレンズで捉えたかのように、生々しく精緻に描かれる。一方でその記憶は、あまりにも残酷な「物語的偶然」に支配されている。物語後半、租界外の路地における絶望的な彷徨の描写は、物語である事すら拒否するように、あまりにも夢幻的。夢か現実か、記憶か空想か、それを解き明かすことは全く無意味だろう。「私」が、「孤児であった」ことを振り返り、この世界と折り合いをつけ生きていく上で、記憶も空想も夢も記録も全て混ぜ合わせゆすり出来上がった物語(それは失われたものを必死に取り戻そうとする痛切な思いの純化物と言ってもいい)を、自らに語る必要があるのだから。世界大戦前夜の不穏な租界を舞台にした小説といえば、横光利一の「上海」が思い浮かぶ。横光の描く上海は日本人が「外界」として見た国際都市であり、常に俯瞰的視点で描かれているために、物語として楽に読めるが、イシグロの本作は、哀切の極みで、非常に胸苦しい。
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いつ面白くなるのかとワクワクしてたのに、結局よく分からなまま終わった。サラとかアキラとかジェニファーとか、重要な鍵を握るかと思いきやあっさり消えて行くし。もしかしたら主人公で語り手のクリストファーが夢か幻を見てて最後にあっと驚く紐解きがあるかと思ったり。
とにかく何が言いたいのか、何かを言うためにこれほどの文字が必要かと疑問を感じさせられた。
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「わたしを離さないで」が面白かったのでこちらも読んでみた。
が、後半の戦闘シーンにいまいち入り込めず、なんだか非現実的だなあ、という印象で終わってしまった。
長い年月を凝縮した物語の構成自体は良かったのだけれど。
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世界から一歩引いたような語り口は「わたしを離さないで」と同じでした。
もう悪夢のような内容で、個人的にはそういうのが好きなのですが、バンクスが情緒不安定過ぎて読み手として心の置き場に困ります。
あと、重要なところをあえて書かない手法なんでしょうが、私はそこをもうネッチネチほじくったものが好きなので、ちょっと物足りない。サドや大江健三郎みたいに執拗にほじくって欲しい。
12.03.09
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上海の租界で育った名探偵クリストファー・バンクス。孤児であった彼は、大人になり、両親を探しに再び戦禍の上海に赴くが…〉
カズオイシグロ。
正直今回のは(カズオイシグロにしては)あんまりでした。不確かな語り手の記憶の手法はいつも通りでしたが、あまりに名探偵であるクリストファーが迷探偵な気がして…
でもラスト50ページは凄まじい。真実とは時に残酷なことを見せつけられた。
たぶんこの本から、「取り返しのつかない過去への後悔と正当化」から「どうすることもできない真実の受容」へとテーマがシフトした気がする。
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久々に重厚な小説を読んだ。今まで何冊かカズオ・イシグロの本は読んできたけれども、一番長いし、一番重量感もある。この人の本はそれぞれの長編が全く違う輝きを放っているのが魅力だけれど、本作も今までの本とは全く違った位置にいるもので、驚かされた。底知れない幅の広さだなあと。冒険の色が強く、次に何が起こるのか分からない。この人の本は今まではゆっくりと時がながれてその世界を堪能したい本ばかりだったけれど、この本はもう、次から次へとページをめくらなければならない、焦燥感を感じるものだった。早く続きが読みたいというわくわく感と、どこから湧き上がってくるのか分からない恐怖感。翻訳の関係もあるのかもしれないけれど、ふわふわとして実体の定まらない恐怖感みたいなものがあった。特に主人公について、どういう人間か大方掴めたと思った瞬間に崩され、ついていけなくなる感じ。これは翻訳の関係なのか、カズオ・イシグロが作り出した狂気の沙汰なのか、見極められない、と思いながら読んでいた。
この本では、孤児というのが一大テーマで、それは実際に現実的な意味での孤児というだけではなく、もっと精神的な、人間の心のなかにおいて、孤児という存在は作られてしまっていく。その人間の心の悲しさを一番的確に表したのが孤児という言葉で、心に残る大きな重石のような、そんな本だと思った。もう一度読めばもっと深いレベルで色々なことが見えてくる、見えてきやすい本。もう一度読みます。
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探偵が主人公の冒険譚のため、前半は一見カズオイシグロっぽくないエンターテイメント性がある。だが、物語が少年時代の回想に映ると、いつものカズオイシグロ。
とはいえ物語は、主人公の探偵が、少年時代に失踪した両親を探す話。心情を端正に描くより、スピーディに物語は展開する。ハードボイルドな調査シーンは一切なく、腕利きの探偵のはずがむしろ凡人に感じてしまうくらい。
最後に明かされる真実に、心が打ちのめされる。それでもかすかにロマンと希望は残る。
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読後は痺れてしばらく放心してしまった。抑制がきいた、正直な独白形式はこれまで通りだが、少年時代の親友アキラとの再会シーンだけは別格。イシグロの新たな面を見たようだ。また、孤児をめぐる人物の再帰構造も魅力を増している。自分と人の人生の幸不幸を安易に結論づけて語るまい、と思った。
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後半の主人公は「信用できない語り手」で、虚実が分からない世界へ迷い込んだかのようだった。
アキラとの再会シーンは狂気すら感じる。
「わたしを離さないで」は胸に沁みたんだけど、こちらは今一つはっきりしない感じ。
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探偵が主人公だけど、事件の内容はわからないところがカズオ・イシグロの作品だと思う、なんとゆーかすごく風呂敷は広いんだけど書きたいことはある人物の心の動きなんだよなーと思う。
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行きの飛行機の中で読み始め,帰りの飛行機の中で読み終えた.
過去のことが記憶という媒体によって徐々に明らかにされていく.翻訳のよさもあるのだろうが,読者を物語(=歴史)の完成までずっと引きつけて離さない手腕はすばらしい.
ただアキラとの再会前後の部分はあまりよくない.ストーリーが現実的になると,小説は希薄になって現実感を失うような不思議な感じ.これも作者の意図なのかもしれないが.
最後のフィリップ叔父の告白は人間の業を感じさせて重く,そして虚しさも感じさせる.
戦前の上海はパール・バックの「大地」と重なった.
さて,私は★をつけるとき再読するだろうかを基準にしてつけているが,この本は迷う.初読のときは,明らかにならない事実への興味から,飽きずに読めるのだが,再読するとしかけはわかっているわけで ...