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たとえばアメリカ人である著者が、米国内の自宅からインターネットで新しいパソコンを注文する。次の瞬間、情報は世界を駆けめぐり、アジア各国で製造されたさまざまな部品が、中国の工場で組み立てられ、米国の自宅に届けられる。
使い方を尋ねようとサービスセンターに電話をする。ごく標準的な英語で担当者が対応してくれるが、じつはつながっている先はインドである。
著者は、アメリカ経済戦略研究所所長。レーガン政権で対日貿易交渉にあたり、『日米逆転』『ならずもの国家アメリカ』を著した人物といったほうがわかりやすいか。
巨大な市場を抱え、しかも経済発展著しい中国とインドが、今や世界経済のルールを変えようとしている。一方、アメリカは世界通貨であるドルに安住して消費主義経済を謳歌してきた結果、製造業もサービス業もアジアに移り、産業全体の空洞化を招来している。
「大航海時代」「第二次大戦後のアメリカ主導」に続き、世界各国が参入する本格的な第三のグローバリゼーションの波が起きつつあるのだ。
アメリカは安閑と破滅していくのか。日本はいかなる選択をすべきなのか。著者は、現代の課題を詳細に指摘しながら、新しい国際通貨単位の創設やエネルギー政策など具体的な提言を示す。
迫りつつある世界経済の東西逆転。著者の言葉を借りれば、アジアでは「30億人のサーファー」が、押し寄せる第三の波に巧みに乗ろうとしているのだ。その波を捉え、新しい繁栄を人類全体が享受するための、知恵に満ちた一書である。