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紙の本
手段と目的
2006/11/08 11:49
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こちゃまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
路面電車と聞いてどんなことを思うだろうか。どこか懐かしい、邪魔で鬱陶しい、生活の足、それは何だ食べられるものか。2006年には20ほどになってしまっている路面電車、それをライトレールトランジットと呼び変えることにより古臭いものから新しいものへとイメージを転換させて、短距離の軌道交通を都市の基幹に据え人を中心とした循環を促すことが「新しいまちづくり」というものらしい。
荷物を伴わない短距離移動に定時性のある軌道交通が使えれば実に便利だろう。本書が帯において『郷愁から未来へ』と高らかに声をあげるように先見性のある都市計画でもあるだろう。しかし自動車による網が巡らされた現状の都市において軌道交通を敷くにはまさに都市を作り直さねばならないと言わねばならないほど処理すべき問題が山積だ。本書にある言葉を借りるなら『関係部局が連携し一般的・総合的に支援』というものが必要になるだろう。支援とはどういうものか支援には何が必要なのか、軌道交通の恩恵を受けるだろう市民としては考えねばならない問題であるといえよう。
そこで本書を紐解く。『路面電車新時代』。路面電車という交通機関を再評価することで新たな時代を豊かに迎えるために。だが本書のページを追うほどに未来への提言はほとんど見られないことに気付いてしまう。過去の路面電車はこうであった現状の路面電車はこうである、そのデータは豊富にあるものの未来の路面電車はこうあってはどうかというものは見受けられない。第4章は『LRTを実現するために』であり未来に対する提言らしきものがそこには散見されるが、400ページのうち20ページが割かれるだけでは未来を考えるための材料としては足りない。しかも使われた20ページも未来に対するものが全てでないとなれば尚更だ。『路面電車新時代』と銘打っているのは路面電車という交通手段を新時代に使おうということではなく、新しい時代の路面電車はこんなもんですよという鉄道好きの鉄道好きによる鉄道好きのための路面電車賛美だからなのかと穿ってしまう。野卑な言い方をすれば「新時代だろうが鉄は鉄」となるだろうか。せっかくまとめられた豊富なデータが水泡と化し音をたてて消え行く感覚が廃れ行く路面電車のイメージと相まってなんともいえぬ気分になる。
現状の路面電車を知るための書としては豊富なデータと統一感のあるフォーマットで見やすいために評価できる。縦書き1ページ2段組という社会科の教科書のようなスタイルは本書の肝である豊富な図表を合わせて読むには打ってつけだ。問題点としては教科書アレルギーがあると文面までたどり着くことがなかろうことと、8ページにわたる世界の路面電車一覧表が横向きに読むように印刷されていて物凄く読み難いことがある。一覧表を読みやすく納めるためには巻末の参考資料の文字サイズを変更すれば良いだけではないのかと思うだけに残念だ。ただ、写真も白黒ではあるものの鮮明で美しく、大きさが揃っているため比較しながら見るということもできてたいへん素晴らしい。痛し痒しな構成もまた路面電車のイメージの一部であり、それを考えると深い本なのかもしれないと思ってしまう。
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