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2006年(底本1980年)刊。17C以降の、主に欧州内戦役での補給・兵站の技術的・軍略的変遷を解説し、戦争(特に戦術面)での補給の意義と、戦略・政略面への影響を検討する書。著者のモルトケ批判、クラウセヴィッツ批判が舌鋒鋭く、戦史分析に新たな光を当てた点は良だが、これほど多数の頁を費やしたにも拘らず、著者の出した結論は実に身も蓋もない。また、工兵能力(補給基地や飛行場の設営能力、鉄道敷設能力)には余り触れず。太平洋戦争における米軍のそれ(が、米軍の補給も限界近くだったらしいが)から見て、この欠落は痛い。
結局、補給についても相対的なもの(日米対比)、状況依存(交戦能力の高低、時期にも依存。戦場と本国や基地との遠近)なのかなぁ、とも。さらに、朝鮮戦争やベトナム戦争などに触れないのは問題のようにも(後者は刊行時期からして無理かもしれないが)。
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兵站のお話。
軍事の天才的な将軍は小説だけの中の話というのが、良く分かった。でも、ナポレオンはやはり偉大ですね。
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三十年戦争以降,近代の大きな戦争において,兵站が果たした役割を定量的に分析した一冊.まず兵や馬に必要な糧食を賄うこと自体が一大事であって,現地徴発に頼っていた時代は意外と長く,第一次大戦でもなおその傾向があったというのが意外.その観点からしても軍はマグロのように動き続けて略奪することでしか生きられなかったが,Louvoisが貯蔵庫を整備したことで,基地から支援を受けて行動する軍というモデルが作られた.以降のWWIまでは往々にして輸送に必要な車両数を確保できなかったり,確保したものの様々な不備で数の通りの力を発揮できなかったりといった問題が多くなった.Napoléonは,準備不足で臨んだAusterlitz会戦で,中世型の,空腹に任せて進撃する道を選んだことが結果的に功を奏した一方,綿密に計画を立てたロシア攻撃は失敗した.19世紀に鉄道という輸送機関が登場したが,敵国に攻め入る場合には敵国の鉄道をそのまま利用する上で課題も多く,道路優先になりがちな攻勢の中で鉄道防御が疎かになって鉄道が破壊されたり,貨車の徴発に依存したりといった問題がある.プロイセンは鉄道をよく利用したことで成功したという通説も,実際には普仏戦争でもフランス側のほうがよく鉄道が整備されていた.WWIIにおいても,輸送アセットの不足問題に悩まされたナチスのロシア攻撃は不調となり,ロンメルは補給線の長さを無視した攻勢で失敗をもたらした.一方,史上初めて・最大の規模と綿密さをもって行われた連合軍の反攻は,その綿密さ故に不調をきたした一方,現場の機転が功を奏した事例でもあり,これはNapoléonのAusterlitz会戦と似たところがある.今日は高度に情報化が進んでおり,戦場と中枢との間で絶えず連絡をとり,綿密かつ柔軟な計画を立てることが可能であることから,ここで書かれていることから進んだことが起きていると思う.「軍事とロジスティクス」をこの後読むので,それも含めていろいろと考えたい.
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ナポレオン戦争といい、シュリーフェンプランといい、ノルマンディ上陸作戦といい、目から鱗がボロボロと落ちるというか、ショックですよ!!今更かなあとか思ったけど、読んで良かったね。ホント
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具体的な数字と計算の根拠を用い、過去の戦争で補給が如何に失敗してきたのかを分析する戦国史観。
砲の登場により河川を利用した運搬が行われても、食料の現地調達はそれ以前と変わらなかった16〜17世紀の略奪戦争。初めて正規の補給部隊を設立し、略奪からの一歩を踏み出したが、砲戦の激化による必要重量及び兵員の増加と、困難な戦地の状況により撤退せざるをえなかった1800年以降のナポレオン戦争。期待された鉄道の運用がことごとく失敗した1870年のモルトケ戦略。技術革新が軍備の拡大においつかず、トラックを用いても全く補給が追いつかなかった1914年のドイツ陸軍。その後全く成長せず、兵站において何一つ成功させることができなかった1941年のバルバロッサ作戦。天才的な戦術家ロンメルと十分な兵数と物資があっても、その補給線の距離によって敗退した1942年の北アフリカ派遣。大量の物資と綿密な計画があったが、その緻密さゆえ実行できず、各軍が計画を無視することで勝利に至った1944年の連合国軍。
歴史は失敗の積み重ねとはいえ、こうも英雄の活躍も作戦の妙味も戦場のドラマもないと、兵站術に人気が出ないのも頷ける。失敗の理由にしても誰かがやらかした物語があるわけではなく、交通状況、経済状況、荷役状況の計算としての無理を延々と聞かされるので、読み進めるのに苦労する。
これはいっちょかみで楽しみのために読むものではなく、詳細な数値を得るための研究書的なもの。向いてる人にはこの上なく役立つのだろうが、素人にはオススメできない一冊。
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自分の中の兵站の概念が変わった一冊。
戦術、戦略には興味があり、兵站術は戦略の一部だと思って読み始めたが、読み進めるうちにその印象が変わってしまった。
巻末にある解説の、前半の概要が秀逸で、本書の内容を端的にまとめている。
本文は少し冗長な感じもするので、この解説の前半部分を読んで結論を理解した上で、その結論が導かれる過程を読む方がわかりやすいかもしれない(:論文と同じ読み方)。
本書は単純な兵站術の話では無く、補給がいかに大事かを理解できた。本書序盤の30年戦争の部分で、近世以前の現地での略奪による戦争が土地や住民を疲弊させることがよく分かった。「後詰めのない籠城戦は勝てない」と言われながら小田原城が落ちなかったことが腑に落ちないでいたが、相手方の補給を絶つと言う意味では、援軍が見込めなくとも籠城戦は大きな意味があったことがわかり、長年の疑問が解決した。
また、近世以前と現代では、軍隊が停止している場合と移動している場合で補給の受けやすさが真逆になっているのも面白い。
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三十年戦争から第二次大戦まで、18世紀以降の主要なヨーロッパでの戦争や、名将として評価されるヨーロッパの軍人らのいくさの仕方を、兵站や補給から再検証する一冊。教科書的に戦史を知ってるだけだったので、全てにおいてこれまでの理解を覆された。
古い時代の戦争の補給で重要だったのは食料や馬の餌で、銃砲の弾は携行品で賄えたとか、鉄道は戦闘初期の兵力移動では役に立つものの、補給の面でみると十分に機能しないこともあったとか、なるほどという内容が多い。十分に理解できていないのでまた読み直したい。
基本的にヨーロッパが事例として出てくるので、三国時代の中国とか、日露戦争とか、太平洋戦争とか、東アジアの補給戦も気になってくる。