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地上と地下、現在と過去、アーダムとジンニーア、ファラーとサフィアーン、アイユーブとズームルッド・・・様々な物語が「共振」し集束していく最終巻。
意外と結末はシンプル。だが、あとがきにあたる筆者のパートを読むと、この物語の主題、つまり”物語を語ることが物語の一部になる”というメタ的なテーマにハッとさせられる。フィクションとノン・フィクションが混じりあう体験はなかなか味わえるものではない。お香でも焚いて一気に読んでほしい。
細かなことだが、全体のトーンが重厚なのに比べて、サフィアーンの口調が軽めなのがやや残念。
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間に別の本をはさみつつも、ようやく『アラビアの夜の種族』読了
う~ん(´ー`)
読む時期が悪かったのか、文体が合わなかったのか
さほどワクワクもせず、機械的に読んでしまったなぁ・・・っていうのがまず感想
ボナパルトに攻められるエジプト、その首都カイロでは夜毎ある物語が語られる
それは魔王アーダムの物語であり、
白い魔法使いファラーの物語であり、
尊い血をもつ詐欺師のサフィアーンの物語である
語るズームルッド
語られるアイユーブ
物語が重なりあった時、解かれる謎
そして結末
そこから新たなる物語が生まれる
その物語よりも、作者とこの『アラビアの夜の種族』の無記名の英語版との出会いが気になった~
てわけで、☆2つ
後日談~~~~~~~~~~~~~~~
>その物語よりも、作者とこの『アラビアの夜の種
>族』の無記名の英語版との出会いが気になった~
って書いたけど、実はこの本原作も何も古川さんが正真正銘書いてる本
もちろん原作なんて無い
つまり、"原作があって~"というのは、既に物語の一部だということがマイミクさんからのメッセで判明(笑)
騙されてた~(爆)
てことで、創造者としての作者さんい敬意を表して
☆3つに変更
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訳者あとがきにて、作者不明の原本の歴史的背景と、それがいかに補筆と改訂を重ねられ各国で翻訳されてきたかという経緯が興味深く書かれている。そして翻訳によって物語を拡散させていく意味も。是非最後まで読んでみてほしい。そして作者が仕掛けた大嘘を楽しんで欲しい。
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古川日出男、初読み。
ファンタジー、というか、おとぎ話というか、なんというか。
そういう分類とか分析とかが無意味な気がする、不思議な本です。
舞台はナポレオンが攻め来ようとしているエジプト。
近代的軍隊でイスラム世界を蹂躙しようとしているナポレオンに対し、その実態も知らず、豪奢で誇りだけは十分の騎馬と駱駝の軍隊で対抗しようとするイスラムの人々。
支配階級奴隷(アムルーク)の若者、アイユーブが、主人である知事(ベイ)にナポレオンからエジプトを守る秘策を授ける。
それは読む者を破滅に導く「災厄(わざわい)の書」をナポレオンに献上する、というものだった。
その内容とは――、というお話。
迫り来るフランス軍に怯えるエジプトの町の様子が昼の情景として語られ、夜になると、夜の種族(Nightbreeds)である語り部が、「災厄(わざわい)の書」の物語を紡いで行く、という構成。
「災厄(わざわい)の書」の災厄、とは、読み始めてしまうとその世界の虜になってしまう、というもの。
語られるのは、それぞれの運命を背負った3人の主人公による、波乱と破壊と恐怖と混沌と、魔術的で呪術的な彩りに満ちた物語。
そして、それが、夜、エジプトの片隅で語られていく、という不思議。
正義は脇役、邪悪が主役、という印象が、なんとも新鮮。
結構滅茶苦茶なんだけど、原初のパワーというか、そういうものが溢れていて、刺激的で面白い。
イスラムの宗教とか風習とかについて「へえ、なるほど」と思ったりするところもあったりして。
ただ、時々ちょっとつらくなるかな。
独特の色彩にくらくらしてしまう。
ありきたりなフィクションに飽きた方に変化球としてオススメ。
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入れ子方式の物語。迫り来るフランス軍とどう関わるのか、そちらも気になったけれど、アーダム・サフィアーン・ファラーの戦い(かなり読み飛ばした)にアイユーブの主人のイスマーイール・ベイよろしく没頭した。そう、私も破滅させられたのか…と読み終えた後、気付く。現実を知った半分、『災いの書』に自分も術をかけられたような心地。
完成した『災いの書』。語り終えたズームルッドと、その血を引く糸杉。そしてアイユーブの物語がその幕を上げる…? 物語は永遠に拡散するのです。
『夜が朝(あした)に代わり、朝(あした)が夜に代わる』。
この一文は毎晩語られる物語の閉めに必ず出てくる。
この『朝』に『(あした)』というルビを振ろうと「あした」と入力すると変換予測に「朝」が出てきた。この本を読了した今、それさえも魔術に感じた。
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ナポレオンともっと結びつくかと思った。ファラーはもっと森がからむかと思った。「物語」の各人物のストーリーの集まりは素晴らしいが、もっとナポレオンとカイロの現実と絡んで展開が広がるかと期待してたからちょっと肩すかし。
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二巻が出てこなかった…何故?
三巻ではズールムッドの語る物語は大円団へ、エジプトもフランスに敗れこれでこの本は終わりか?と思いきや新たに物語が語られる。そして語られることで永遠になる。
ファンタジーあり、ミステリーの要素あり本当に最後まで飽きずに楽しめる。
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ナポレオンに責められるアラブと、その対抗策として敵を無力化するための必殺の物語が並行して描かれる。中心はその劇中劇的な太古の魔法迷宮物語。
本の中では、ナポレオン時代のアラビアと、そこで本好きの支配者を狂わせて無力化するために編み直される、読むものを虜にする魔道迷宮物語が並行して語られる。
そして、作者は読者に、その物語を翻訳として提示する。
そして、最もボリュームがあるのは、その魔道迷宮物語であるため、それは3重に外から語られることになる。
読むものを捉えて決して離さず、破滅まで誘う物語を語るという性質上、日本でこれを読む読者に、届かない理由を持たせる必要があるということだろうか。
吉兆さんという本読みさんのサイトで紹介されていたもので読んだのだが、たしかに面白かった。
昔PC8801MK2で死ぬほど遊んだウィザードリィのテイストもあり、ケレン味溢れる文章ながら、3巻を長いものにしなかった。
惜しむらくは、中間層であるナポレオン時代のアラブで、もう一つカタルシスを得られなかった。
この重層構造にもっと意味を感じられれば、評価はさらに上がっただろうと、思う。
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さいごは、「災厄の書」の内側の物語よりも、外側の物語が力を持っての終了でした。
そのあたりは、「砂の王」ファンとしては、やっぱり純粋に「砂の王」の続きが……とも思うのですが、「砂の王」を越えていく方法は、これしかなかったとも思えます。
誰に「災厄」がふりかかるかについては、知っていた気もします。
でも、どういう因果で、そこに「災厄」が運ばれていくのかというのは、なかなかのミステリーでおもしろかったです。
古川 日出男の書く話は、常に偽史としての物語です。
そして、現実以上に、物語こそが力を持つという強い思いがあります。
そこが、現実よりも物語の方にあこがれて、「いってかえってこない」方がしあわせなんじゃないかと思っているわたしみたいな人間にとっては、とっても惹かれるところなんだと思います。
これからも、かえって来られなくなるような物語を読んでいきたいです。
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いろんな事情から切れ切れに読んだが満足。できれば一息に読みきったほうが楽しかったと思うが、多少辛い部分もある。ナポレオンの侵攻に対応するために「災厄の書」を用いようとするイスマイール・ベイの奴隷アイユーブ。探し出した夜の語り部ズームルッドの語る物語とそれを一冊の書物にしようとするアイユーブの話。「災厄の書」によって滅ぼされたのは誰なのか。ズームルッドの語る話の中の3人の主人公たち。その醜い容姿のために誰からも愛されることなく稀代の妖術師となったアーダム。欠色の美しい孤児ファラーとその美しさと人を惹きつける高貴な血筋の太陽のような孤児サフィアーン。陰と暗と陽の孤児たちの物語は二部三部と続くにつれロールプレーイングゲームの地下ダンジョンへと舞台は変わる。勇者と魔術師と闇の妖術師、ドラゴンとの対決、ダンジョンで手に入れた秘法の魔術書。そして現れる真の敵蛇神ジンニーア。ダンジョンで手に入れた秘法の魔術書。大人のためのファンタジー、これはファンタジー小説なのだ。巧妙な罠によって前回読みかけたときは読みづらい翻訳物かと思い数ページで断念したけれど、途中にある訳者の注釈は言うなれば「バーティミアス」と同じで読者に対する作者からの説明だったのか。こってるねえ。美しい奴隷アイユーブの物語は何だという感じもしたけれど、アラビアンナイトの世界は楽しかった。
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【第55回日本推理作家協会賞&第23回日本SF大賞受賞】あまりのおもしろさに早く読み進みたい気持ちが強くて、つい突っ走っては、あ、もったいない、もうちっと味わわねば…と2,3ページ戻る。こんなことしてしまったのは久しぶり。あー幸せ。ま、これをSFと思うかどうかは別にして。
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かつてと今、物語と現実が、絡み合って紐解かれる。
ファラーが「おはよう、サフィアーン」と言った時、全てが後日談に変わった異変を感じる読後感。
この沸き立つ快感はぜひ味わってほしい。すべてが、夜に譚られる珠玉の年代記。
最後まで読んでみると、冒頭から後日談だったという構成にも取れる。
また、一番最初に登場したサフィアーンを軸に据えれば、彼の物語として時系列は並べられている。
翻訳書として捉えれば物語中の出来事にもなぞらえたように取れるし、
ズームルッドと「糸杉」に関して見れば、年代記にもなる。
現実と物語、昔と今との境界が曖昧になるような不思議に沸き立つ読後感。
面白かった。
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妖しい現実と夢の境界線が曖昧で不確かでいかにも異文化の香りがしてきそうなところがステキ。特に海の夢森の夢の描写が好き。どうしたらこんな表現思いつくんでしょう。めいっぱい翻弄されちゃったけど、それがもう快感。これぞ読書の醍醐味!ってかんじがすごく気持ちよかったです。
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面白いというよりは衝撃的。
こんな本本当に初めて読みました。
全てがフィクションであり設定。
ゆっくり読んだけど凄すぎる。
のんびりしすぎたけど
これは早く読めないですね。
何回も途中でビックリさせられるし
この先の読め無さがすごい。
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久しぶりにワクワクしながら読めた本。
これは面白い。
やはり、地下迷宮のエピソード、描写は素晴らしい。
多少、だれる所も無くは無いが、めくるめくイマジネーションが
素晴らしい。
SF大賞をとっているのでジャンルはSFにしているが、
ファンタジーの方かなぁ。
これはいつかまた読み返すような気がする。