投稿元:
レビューを見る
神保町の喫茶店ラドリオでこれも集中して読了。苦しい。そもそもこの店シャンソンが結構な音量で流れるし照明は昼間っから落としてるし読書に向いてない。激重な話と店の環境のストレスで読み終わった頃はグッタリと心身消耗。折角のGWの一日なのに。
前作グランヴァカンスの主だった疑問は解けますが、至極論理的で整合性高し。そして相変わらずの硬質な刺激が厳しい。阿形渓という人物造形の凄さ。この作家の読み手の感情を揺さぶるスキルはやはり図抜けてます。何度も言うが天才だ。
これで3部作の2作目だそうで、一体何を完結させるのか。着地点は何処なんだろう。
投稿元:
レビューを見る
いやあすごいすごい。なんといっても表題作、イーガンばりの「意識」への迫り方が圧倒的だ。そしてイーガンよりも色彩豊かなビジュアルイメージを喚起する文章の力に恐れ入った。ある意味叙情的だった前作をハードなSF的意匠で裏打ちした傑作。
作者の「ノート」によると、これでSF設定の三分の一だそうで、もういったいこの後何が出てくるのやら。
また、前作に続いて今度はよりストレートに「物語を読む」という行為の意味について、登場人物が語っている。たとえば「嵐が丘」をわたしが読んだ時、キャサリンはわたしの中でその運命をまさに生きた。あるいはわたしがキャサリンの運命を生きた。本が閉じられた時、そのキャサリンはどこに行ったのか。わたしはキャサリンをどこかに住まわせたままなのだろうか。そんなことを考えてしまった。
投稿元:
レビューを見る
短編5篇仕立て。
“数値海岸”の開発秘話や“大途絶”までの経緯が描かれる。
AIしか登場しなかった前作に対し、今回はそれらを生みだした現実世界の人間が現れ、区界という舞台上では見えてこなかった細かな設定も顕わになる。
急にハードSF的に難しくなったため、内容を把握できている自信はないけれど、“ヒトの意識”という繊細な領域をピンセットで抜き出すかのような芸当を、素直に凄いと思った。
人間・情報的似姿・AIの違いが不鮮明になっていく感覚、“人間としての尊厳”を剥ぎ取られ裸にされていくような感覚が何とも言えない。
投稿元:
レビューを見る
すごいすごいすごい。すごくおもしろかった。すごく好み。仮想リゾート<数値海岸>の中の嗜虐趣味に満ちた<夏の区界>だけではなくて、<大途絶>も<数値海岸>そのものも、誰かの欲望の中で生まれたようなもの。傷つけたい傷つけて欲しい。現実世界では自分をコントロールできる普通のヒトが持っている、いわゆる<殺し愛>的な倒錯した欲望。諸々。なのに仮想リゾートの中で演算されるAIの人格を通して「ただの著作人格なのに、それでもいたたまれない。この感情はいったい何なのだろう。」なんて突きつけられたら読者の傍観者的立ち位置なんて揺らいでしまう。ショッキングだ。そうして最後にあとがきで、『クラッシュしたハードディスクのデータたち(=<小途絶>に遭ったデータ群)に捧げる』…なんてものすごく身近なところに話を落とすなんて!そんなに念を入れて衝撃を与えていかないで欲しい!(褒め言葉)1作目の『グラン・ヴァカンス』に至るまでの前日譚的な5編の中編集。
投稿元:
レビューを見る
この世界観が大好きだ。
シリーズ1作目とは違い、仮想リゾート〈数値海岸〉の外のこと、つまり現実のこの世界についてのエピソードもある。
開発秘話なんて、ゾクゾクするほど面白い。
グランドダウンに至った経緯も、そんな深い理由があったのかと思うような内容だし。
ただ、ほったらかされてるだけじゃなかったのか。
しかし、ランゴーニの父って誰なんだろう?
あの蜘蛛を作ったのはガウリだよね?
ん~わからない……。
投稿元:
レビューを見る
グラン・ヴァカンス未読で読み始めてしまったが、今作で垣間見える部分だけでも十分楽しめた。こちらがここまで濃密なハードSFなのに、グラン・ヴァカンスのほうはSF的解説なしだったは…びっくり。むしろこちらの≪数値海岸≫創世記のほうが先にあったのではないかと思ってしまう。ただのオーバーテクノロジーでダラダラやるだけではなく、人の「意識」の境界・AIの自意識などなど興味深いテーマもちりばめられているから、読了後もじっくり余韻に浸れます。面白かった…。
投稿元:
レビューを見る
47:「廃園の天使」シリーズ第2弾。前作は「数値海岸」のAI視点のみでしたが、「数値海岸」の製作者、リアルの人間側の描写を交えることで世界観がぐっと深まりました。情報的似姿、アイデンティティ境界、区界のリソース、区界を行き来する鯨。心躍るキーワードの意味が明かされ、「大途絶」の背景が見えたかと思いきや、その何重もの構造に気が遠くなる。「わたし」とは? 「わたし」は実在するのか? 答えのない問いをぐるぐる考えたくなる。細かな設定好きにはたまらない。文庫版購入検討中。
投稿元:
レビューを見る
「零號琴」が面白すぎたので、遡って初期の作品を。この自由に広がり、複雑に(でも意外とシンプルに)絡み合う世界観をするっと受け入れられるかがまず問題だけど、設定以外はあくまで普段の会話で成り立っているから、意外といける人が多いのではないでしょうか。世に出ている下手なAI(人工知能)の書物を読むなら、この作品を読んだ方が身に迫ってAIがある感覚を味わえて、理解できるように思われます。五編からなりますが、「魔術師」がクライマックスというか、一気にモヤが晴れる感じで気持ちいい。ただ、読むのはほんと大変というか、図書館で3回借りてやっと読了しました。ぜひ先入観なくチャレンジしていただきたい作品です。
投稿元:
レビューを見る
数値海岸はどうできたのか?
大途絶とは?ランゴーニは何者?
…等々の、前作の謎があっけないほど開かされる短編集。
短編じゃなくて長編で読みたかったかも…。もったいない…
ともあれ、シリーズ新作の完成がより楽しみになる。