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『進歩的な社会ほど“苦痛する肉体”は心理において消える傾向にあり、実体としては残り続ける。結果、“苦痛する価値”は、ねじれを起こした。あってはならない苦痛の源泉が他ならぬ自己の肉体であるという事実に愕然とするのだ。
以来、人間は様々な方法で苦痛を征服しようとしてきた。苦痛を快楽の延長とみなした。娯楽化した。苦痛する者をときに排除し、ときに歓迎した。苦痛をもたらす自己の肉体を改造しようとした。切除しようとした。特定の個人に苦痛を閉じ込めて背負わせようとした。苦痛は消えなければならなかった。たが全て無為だった。我々は消えたと思っていた肉体に常に報復され続けている。』
いや〜、壮絶な総力戦、めちゃくちゃ面白かったなぁ。後半は謎解きで、ミステリとしても楽しめる。“虚無”の誕生秘話。それにしても、09に対してカトル・カールのメンバーのキャラ設定が雑すぎて笑える。少なくとも言葉話せる設定にしてあげれば良かったのに…。
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バロットのいない、憎たらしいボイルドの物語。
スクランブルほどの満足は得られまい、と読みすすめ、油断した。
不覚にも涙がこぼれた。
憤怒に拳を握りしめ、やがて喪失感に呆然となった。
読み終えて、たまらず、スクランブルから再読するはめとなってしまった。
ボリュームと登場人物の多さに苦労するが、全編ダレなかったなあ。
展開には、スターウォーズや七瀬ふたたびをイメージさせるが読み終わったあとは、この不朽の名作らが霞んでしまった。
よくもまあ殺したもんだ。
膨大な出演者のジェノサイドショー、すべてはマルドゥックシティの犠牲者か。
どうぞ皆さん、時間を作ってスクランブルからの一気読み、二度読みを敢行しなされ。それに値する傑作ですから。
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なんか切ない。。。
ナタリアとのことにしても、ウフコックとのことにしても。
とりあえずスクランブルを読み返したくなった。
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ひとり、ひとりと仲間が消えていく。この結末はわかっていたはずなのに、十分に切なく、同時に驚きもあたえてくれる。私はボイルドがすべてを失って虚無へ落ちたのだと思っていたのだけれど、彼には虚無へ落ちることで、あるいは相棒を得たウフコックによって殺されることで、得るものも多かったのだとわかった。「スクランブル」を読んだときとは都市の景色がまた違って見える。
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巨大な力を前に追い込まれていく09メンバー。そして、事件を終結させるためにボイルドが下した決断は…
小説を読んでいて時々出会うのが、話の内容が今一つわからないのに、それでも引き込まれてしまう小説。自分的には『薔薇の名前』がそうだったのですが、この『マルドゥック・ヴェロシティ』も、そんな小説でした。
権力者一族やギャングの家系の闇、財界や都市の政治の陰謀が渦巻く事件の様相は、09メンバーを狙う殺し屋一団の凶悪さと相まって、読めば読むほど闇が深くなってくるのがわかります。
ただその分、ややこしくもあり、登場人物全員カタカナ名だったのも、ちょっときつかったかなあ。
しかし、それでも読ませる上に、ボイルドの絶望と虚無が伝わってくるのがすごいところ。=や―、/を多用する文体(クランチ文体というらしいです)が、状況を報告しているようで、ボイルドの感情を失った感覚が伝わってくるということ。
拷問を受けた死体の残虐さ、そして、底なし沼にはまっていくように終わりが見えない事件の深さが、分からないなりにも、読者である自分に伝わってきたからだと思います。
ボイルドとウフコックの決別も印象的。この時点では、まだボイルドはウフコックだけでも、安全圏に逃がそうとする意志が見られた気がするのですが、その後の『マルドゥック・スクランブル』の感じだと、これから数年がたち、完全に虚無と暴力に飲み込まれてしまい、武器としてのウフコックを求めたということなのかなあ。
それか失って改めて良心としての、ウフコックを求めたのか、改めてスクランブルを読み返したくなる作品でした。
ボイルドとナタリアの話も切なかった…。スクランブルとはまた違った楽しみ方のできる作品だったと思います。
あとがきで冲方さんが、この作品の執筆時のエピソードも書かれていましたが、なんというか…、改めて小説家(冲方さん)ってやばいなあ、と思いました(苦笑)
文字通りマルドゥックシリーズに冲方さんは命を懸けてらっしゃいますね。
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2018/7 11冊目(2018年通算113冊目)。色々な事が明らかになり、その悲惨な現実に色々な意味で頭がパニックになりそう。ボイルドがダークサイドに堕ちていく過程は急だなとも思うが、ウフコックのことは袂を分けた後でも、一番のパートナーとして大切に思っているのだなということもい理解できた。この後の「~フラグメンツ」「~アノニマス」も引き続き読んでいきたいと思う。