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紙の本
国を愛するとは一体どういうことなのか
2007/01/21 07:35
14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「国を愛するというのは、一体どういうことなのか。それは現在の政治体制を支持するということなのか、それともむしろ、国を愛するがゆえに体制の変革を望むことなのか。私がこういう疑問を持ったのは、18世紀のイギリスにおいて、愛国派を名乗る人々が政治の変革を要求し、それがやがて急進主義の運動へつながっていったからである。日本でも愛国を唱えたのは、まず自由民権運動の人々であった。彼らは国を愛するがゆえに藩閥政府を打倒し、議会制を開こうとしたのである」
引用が長くなったが、この「まえがき」の一部に著者の問題意識が表れている。また本書がイギリス近代史と日本の近代を考えることで、この問題意識を問うことの意義が表明されている。
現在、「愛国心」が大きな問題になっているだけにこの著作で「国を愛するとは」が問われる意義は大きいだろう。多くの人が私も含めて「愛国心」を括弧つきで表現するのも著者の問題意識に共通するものがあるからと思う。
引用にもあるように、もともと「愛国」を唱えたのは「国を愛するがゆえに現状を憂うという」ことからである。著者はそのことをイギリス、日本の近代史から明らかにしている。それがいかに現在括弧つきで使われる「愛国心」として変質させられたかの分析は興味深い。
もともと「愛国」を唱えたのは国を愛するがゆえに体制変革を望んだ人々であり、政府や支配者ではなかった。当初「愛国」を唱えた人々は、当時の様々な時代的限界はもちながらも、自由や人権を唱えた人たちである。
それがいつの間にか「愛国心」という言葉のもとに、自由や人権が制限され抑圧されてきた事実を知ることは興味深いものがある。
現在の「愛国心」を考えるうえで貴重な問題意識を提起しているだろう。その表現のひとつにリチャード・プライスの「われわれは祖国を愛するとともに世界市民でなければなせないのである」が度々引用されているが、「世界市民」という表現に重要な問題意識を感じることができた。
最後にもう一文引用したい。
「日本の植民地支配や戦争犯罪など認めることを『自虐史観』と呼ぶ人々は、これを認めれば国家の誇りを失うと主張している。実際は逆であって、自国の誤りを率直に認め、これを克服する努力を内外に示すことこそ、国家の誇りではないだろうか」
著者の思いはここにも要約されているのではなかろうか。
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