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少女向けの思い切りファンタジックな物語ですね。
ウィギンズの行儀の悪さに機嫌を損ねるラルフとか、『ね、可愛いペリウィンクル』っていう台詞とか、恋するヘリオトロープ先生とか、マリアの行動とか、なんか大変コケティッシュだと思う。
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この本は初読だったんですけど、一読して感じたのは「ああ、この本を子供の頃に読んだら今よりももっともっと夢中になっていたんだろうな」ということでした。 とにかく女の子が憧れるだろうありとあらゆるものが美しい言葉で描かれているんですよね~。 舞台となる古風なお城然り。 少女のサイズに作られた入口(つまり大人は入れない)の自分だけの部屋然り。 美しい家具・調度の数々然り。 毎日誰かが用意してくれる綺麗な洋服や美味しそうな食べ物の数々然り。 館を取り囲む美しい庭園とのどかな田園風景然り。 登場する地名や人の名前までもが、きれいなものを連想させます。 シルバリーデュー(銀のしずく)村とか、パラダイスの丘とか、ムーン・エーカー館とか、とか、とか・・・・。
ま、逆に言えば思春期の男の子だったらこの物語の描写は甘ったるすぎて「とてもじゃないけど読んじゃいられない!」という気分に陥る可能性大なのかもしれません。 もちろん美しい物語であることに変わりはないんだけど、やっぱり「少女の夢」っていう雰囲気があまりにも濃厚な作品だと感じました。
特にそれを感じるのは、物語の中盤から出てくる悪役たちの描写なんですよ。 色彩鮮やかな荘園の中で暗い松林に潜んでいるという明暗の対比とか「黒い男たち」という呼び方でその残虐さや不気味さを象徴しようとしているんだけど、そんな彼らの描写がどこか中途半端というか精気に乏しいというか・・・・・・。 いかにも女の子が空想の中で描く「不気味で悪い奴ら」という感じで、真に迫ってくる存在感・現実感みたいなものが希薄なんですよね~。 彼らの生業が強奪であることは所謂伝聞の形でそこかしこに描かれるんだけど、その割には荘園で暮らしその被害を被っている一般人の生活の悲惨さみたいなものもほとんど描かれていないし・・・・・。
訳者である石井桃子先生の解説によると「(この物語の作者は)学校にいかず、その教育は、いっさい家庭教師に任されていました。 (中略) 家庭教師による教育が、まことにむらで、作者がかなり大きくなっても、代々の王様の名前や九九算くらいしか知らないでいることがわかり、父親のグージ博士を驚かせたそうです。」とのこと。 つまり、作者自身が裕福な階級の生まれであること。 更にはどちらかと言えばあまり親には顧りみられなかった少女だったことが推察されます。 それってつまり、主人公の孤児マリアにどこか似ていると思うんですよね。 そういう意味ではマリアは恐らく作者の分身であることは間違いないことのように感じられます。
物質的には豊かな環境に暮らしつつも、どこか現実感に乏しい少女。 ある意味で俗世間にはほとんど汚されず、美しい空想の翼を広げることを心の喜びとしていた少女。 この物語に濃厚に漂うどこか夢見がちな雰囲気はそんな作者の実生活の中で純粋培養された結晶みたいなものなのかもしれません。
この物語の中で特に気に入ったのはイギリスの田舎での貴族の暮しぶりが、豊かな情景描写と共に詳細に描かれているところと、「お偉い貴族様」も元を正せばバイキングとい��あたりが実にさり気なく描かれているところです。 でもそんな「元バイキングとその末裔たち」も貴族と言う立場を得れば「家訓」な~んていう高尚なものを掲げるようにもなれば、noblesse oblige (財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴う)とはどういうものかを体現する存在ともなることをロマンチックにファンタジックに、それでいてリアルに描いています。
この本をかなり愛好している(らしい)中川李枝子さんによればこの物語を読むには少しばかり魔法が必要なのでそうです。 そしてその呪文は
「時は1842年 マリア・メリウェザー13歳 ちちんぷい」
というものだとか(笑) 確かに素直にこの物語に共鳴するためには少女の心が必要かもしれないけれど、「昔、少女だった」記憶とその当時に持っていた「美しいものへの純粋な憧れ」を忘れていない大人にも楽しめる美しい物語だと思いました。 はてさて、この物語、世の男性諸氏にはどんな感想を抱かせるものやら・・・・・(笑)
・・・・・という興味もあり、最後にこの本の宮崎駿さんの推薦文をご紹介しておきましょう。
敬愛する先輩から、すすめられた本です。 おまけに、訳者の石井桃子さんはとても素晴らしい方で、つまらない本を訳すはずがありません。
おもしろくなかったらどうしよう・・・・。 読む前から充分なプレッシャーがありました。 結果として、夢中でおわりまで読みました。 何かの結晶がキラキラかがやいている本です。 まるで先輩のように健康ですこやかな少女の内面の世界のようにも思えました。
あ、やっぱり印象は「結晶、キラキラ」ですか? 何だか KiKi と同じような感想で嬉しいなぁ!
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映画「ムーンプリンセス 秘密の館とまぼろしの白馬」の原作本
映画は日本未公開。映画もさほど良いわけじゃないけれど、
ストーリーは好きなので読んでみたいです。
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ああ、そうだった。『最後のユニコーン』の原風景は、私にとってはこの物語だった。妖精というものを信じていた著者の作、ということで、ケルトにも分類しておきます。
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イギリス南西部、デボン州に住むようになって、作者エリザベス・グージは妖精の存在を信じられるようになったという。森と入り江に囲まれ自然に恵まれた土地のその伝承と自らが見た夢から、この話が生まれたという。海の泡から現れる白馬の言い伝えを、伝説にはお馴染みのユニコーンとしている。
美しくも影を伴い、不思議で、深遠な自然の伝承。そこに明るく才気煥発な少女マリアの物語が見事にあいまって、とても面白くて、ロマンティックな世界が楽しめる。
ファンタジックな面だけでなく、リアリズムも感じさせるのは、マリアや登場人物たちの頼もしくたくましい気質によるものが大きいのかもしれない。
ウォルター・ホッジズの挿絵によく表れているけれど、こういう古めかしくも落ち着きのある魅力的な雰囲気、結構、好きかも(笑)
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古い貴族、閉じられた館、孤児の少女、秘密の部屋、隠された宝石、姿が見えない使用人たち、不吉な「黒い男」、そして魔法めいた動物たち。ファンタジーのエッセンスをふんだんに持ち込みつつ、物語は「勇気と元気」を基調に進んでいく不思議なお伽話。いくつか?なところもあったけれど、まずはこの雰囲気を楽しむ。
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児童文学の名作。
内容を忘れたので、再読。
大人にも読める描写を含んだファンタジックな内容。
マリアは父親を亡くして、遠縁の従兄にひきとられることに。
母を早く亡くし、赤ちゃんの頃から家庭教師のヘリオトロープ先生に育てられた。
ずっと一緒だった先生も同行するので、そんなに寂しくはない。
ヘリオトロープ先生は厳しいが、マリアを素晴らしい女性に育てようと決意しており、マリアは信頼しきっているのだ。
ロンドンで知り合った男の子ロビンと会えなくなったことは気になっていたが。
岩の中に入っていくような構造のわくわくするような面白い荘園に、塔の中にある可愛い部屋。
荘園領主ベンジャミン・メリウェザー卿は中年で従兄というよりは伯父だが、見るからに温かい人柄。
マリアが朝起きると、綺麗な乗馬服が出されていたり。誰が世話してくれているのかすぐにはわからない不思議な生活。
まだらの小馬ペリウィンクルに乗って見て回った自然が美しい外の光景と、海辺で見えた一瞬の幻。
マリアが連れてきた犬のウィギンズ。館を自由に歩き回る猫のザカライア。マリアが罠から助けたウサギのシリーナ。としだいに仲間も増えていきます。
門番の女性ラブデイは、マリアが夢見た母親のよう。
咲き乱れる花や、美味しい食べ物。
料理は、台所を仕切っている小柄な老人マーマデュークが作っているとわかる。
フサフサのたてがみのある黄色い大きな犬・ロルフ。
ロルフと一緒ならマリアはどこに行っても良いが、海にだけは近づいてはいけないと言われる。
海で魚を捕るのは、森に住む「黒い男達」が独占しているのだ。
彼らはメリウェザー家の先祖ロルフと仲違いしたノワール卿の子孫らしい。
村の牧師と、再会したロビンから話を聞き、メリウェザー家の先祖が引き起こした争いが今も尾を引いていることを知ったマリアは…?
13歳の少女が勇気を奮い起こします。
1946年に、およそ100年前の1842年の話として書かれたので、古風な所はあります。
それもまた魅力。人の心に普遍的に訴えかける物に満ちていますね。
過去の争いも悲しみも洗い流され、皆が上手くいく心地良い展開。
挿絵はディケンズ風の衣装。
巻き毛とふくらんだスカートとボンネットが可愛い。
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ロマンチックな女の子向けファンタジー。
美しくない女の子が孤児になって、地方の領主である遠い親戚の所へ行く。そこには美しい風景と、奇妙な召使いと、家にまつわるなぞがある。
これだけ書くと「秘密の花園」みたいだけど、あれよりも幻想的でファンタジック。
宮崎駿がこの作品が好きだと言っていたけど、よくわかる。少女の成長、謎と歴史でできた古い城、異形の者たち、特別な能力のある動物など、ジブリアニメでなきゃおかしいくらいの設定で、(もちろんこの本がずっと古いわけだから)、こういう児童文学が宮崎駿の血肉となったのであろうことは想像に難くない。
だから、宮崎作品が好きな人はすごく楽しめるだろうし、そうでない人も、本当によくできた作品だし、ディテール(身につけるものや料理や自然の風景)が素晴らしいうえ、完璧なハッピーエンドなので、読んで厭な気持にならない。
エリザベス・グージの作品で翻訳で読める作品をこれ以外に知らないが、人生に一冊、こういう本が書ければ幸せだろうな、と思う。
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暖炉にりんごの木を燃やしてお部屋をいい香りに、ベッドはラベンダーの香り、朝露に濡れたスノードロップの花束、マリーゴールド色のバター、ユニコーン、お茶会のフェアリーケーキ、暮らしをピンクで彩る、野うさぎ、焼きリンゴにハチミツ、よそ行きの街頭にすみれの花束、乙女心をくすぐる物語。
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主人公の少女やお相手の少年、登場人物が魅力的なのはもちろんのこと、スパニエル犬、猫、犬、子馬、獅子、うさぎといった主人公の周りに居る動物が、あたかも人間かのようにのびのびと個性をもって動く様、自然が意志をもっているかのように描写されているところにも、このお話の面白さがあるのかなと思いました。訳者の石井桃子さんの訳が本当に素晴らしい。本の中に自分の世界を見出す少女が心に住んでいる皆様、ぜひお読みください、ロマンスあふれる世界がここにはあります。世界が一瞬、素敵なピンク色に染められます。
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宮崎駿さんが『本へのとびら』のなかで紹介していたので、図書館から借りてきて読んでみた。
今回は物語の世界に入り込むことがなかなかできなかった。何でだろう? 最近読んだ岩波少年文庫のいくつかの本では、大人の私でも自然にその世界に入り込み、楽しめたのだけれど… ジブリがアニメーション化してくれると、何となくつぎはぎのように感じられてしっくりこなかった部分々が、なめらかに流れて、素敵な作品になることだろう。
作者の父は神学校の副校長だったそうで、その影響が所々で感じられた。
主人公の少女は孤児になったが、悲愴さは全くなく、むしろ新天地で新しい人々と接しながら、伸びやかにたくましく暮らしていく。こうした描き方は『秘密の花園』や『赤毛のアン』、『エミリー』などにも共通していて、私の好きな設定だ。
孤児でなくても、昔は奉公に出されたり、養子に入ったりと、実の親元を離れて生活する子どもがたくさんいた。そのほうが、子どもは大きく羽ばたく機会に恵まれることだろう。
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『まぼろしの白馬』
推理小説・冒険小説・幻想小説・恋愛小説の要素もあり、人間のいいものに焦点をあてた話です。ストーリはロンドンで育った13歳の少女が孤児になって、デヴォンあたりの田舎の城でくらすことになって「おひめさま」になるんだけど、その責任も負うという話です。
動物もかわいいし、人間もそれぞれ事情をかかえているけど、基本的によい人間で、そこに幻想がくわわる。舞台は田舎ではでな出来事はないけれど、そこに住む人間のこまかい描写はとてもいいです。
原題はA Little White Horseで1946年の出版、アガサクリスティーが代表作を書き終わったあと、ムーミンの一巻がでた年のようです。著者はウェールズの神学者の娘で、劇も書いたエリザベス・グージです。
タイトルは地味だけど、この本をとても好きなひとがいるようで、ハリー・ポッターをかいたローリングスもほんとうに好きみたいだ(I absolutely adored……と英語版の表紙に書いている)
映画化もされていて「ムーンプリンセス」とかいう題である。
いいことばを原文からひろってみた。
There's nothing like protecting someone more frightened than one is oneself, she thought, to make one feel as brave as a lion.(ライオンのように勇敢になるには、自分よりおびえているだれかを守ることにまさるものはない。)
All the best things are seen first of all at a far distance.
(いちばいよいものは遠くからはじめてみたものです。)
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小学生の頃に出会って本好きになったの、まさかこの本?いやピアス?
記憶があいまいだけれど、この本も自然や動物、個性的な仲間たちが登場しまくりで楽しい。