紙の本
原子力に頼らず、人類が自然と共存する為には?
2012/04/25 10:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者、たつみや章さんの、『これが伝えたいんだ!』という熱い思いが、物語の全編にみなぎっていたので、
大変興味深く楽しんだ。典型的な都会のマセガキな主人公のマサミチが六年生という設定が、
この物語にちょうどよいなと思った。悪いことをすると罰が当たる。そんな理由が息づいている世界観。
マサミチに、巧妙に饅頭を食べさせた、ツクヨミのお方さまを筆頭として。
家神といわれる、ヨネハラさんや、月うさぎなど。登場してくるキャラの描かれ具合が親しみやすくて
興味を惹かれた。闇鬼(あんき)という概念には思うところあり。自己中心で他を思いやる気持ちをもたない者。
欲が深く、自分の欲を満たすことだけしか考えられない心の事。ムー大陸の人々は闇鬼で滅んだ。
それにしても、たつみやさんって、子どもの中にある様々な要素、ワガママなだけか、
と思えば魂に純粋無垢な聖域を保っていたりする点、などなどを巧みに描き分けるよなあ、凄い!
そこら辺があるから、マサミチが神々の世界の存在、自然界の理を、素直に吸収できるようになるのに
違和感を覚えないんだと思う。たつみやさんの作品の中で繰り返し述べられる世界観。
「鳥も獣も虫も魚も。木や草たちだって、ちゃんと言葉をもっています。魂をもってるんですからね」にも
共感する所、大だった。そんな中で、マサミチは、パパの同僚でもある大好きな、
「スイッチョさん」の身体が、青い炎に包まれているのに気付く。ヨネハラさんを揺り起こして問うと、
「あれは、病ではあるが病ではない。おそらくは、人が作りだした毒のしわざでしょう」と告白される。
毒の正体はパパが勤めてる原子力発電所の放射能だった。スイッチョさんは自ら、故障した弁を閉めるために、
ふだんは立ち入り禁止の危険区域に入った。それで大量の放射能をふくんだ蒸気を浴びてしまった。
スイッチョさんは、もしかすると死んじゃうかもしれないんだぞ!
だったら……ぼくがどうにかしなくちゃいくないんじゃないのか?
スイッチョさんをたすけられるかもしれないツクヨミさまに、
たすけてくださいっていいにいけるのはぼくだけで……。命懸けの思いで動き出した所に、
ヨネハラさんに連れられスイッチョさんが現れる。いよいよ、原子力発電所の原子炉が壊れようとしてる……。
印象的だった言葉がマサミチのパパが所長と電話でのやり取りをした後の絶叫
『会社にたかだか二、三十億円の損をさせる決断ができんのだ、所長は!もしこれが重大事故になっちまったら、
損害は金の問題なんかじゃなくなるっていうのに!』この小説は実に20年近く前から、
原発の事故が地球環境や人間に与える甚大な被害を予想し警鐘を鳴らしていたことになる。
そして最終的に脱・原発に向かい代替エネルギーを提案している点が、
今後人類が進むべき道を照らしているのが、大変素晴らしく、単なる絵空事でない物語の現実への
踏み込みかたに拍手を贈りたいと感じた。原子力の問題がクローズアップされている今だからこそ
読んで欲しい傑作です!!
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「田舎に引っ越してきたマサミチが、古いお宮で出会った白い着物に白い袴姿の青年は、ツクヨミの神と崇められる「夜のお方さま」だった。マサミチは成り行きで食べたサトリまんじゅうの効き目で、家霊のヨネハラさんや猫、木、虫とも対話できるようになる。一方、パパが勤める原子力発電所で恐ろしい事態が進行し、マサミチの大好きなスイッチョさんは全身を青い炎にむしばまれる。スイッチョさんの命を救い、この危機をくい止められるのは――」というお話。面白いし、色々と考えさせられます。
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神様三部作の一冊。
現代人に欠けている心だったり、原子力の恐ろしさだったり、児童書ですが、大人でも学ぶものは沢山あると思います。
初めて読んだ時は小学生でしたが、何度読んでも楽しいです。
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神様シリーズ三部作(?)をやっと制覇。どれも面白かった。やっぱりたつみやさんの書く話は好きだな。うさぎになったり月にいったりかなりファンタジー要素多めだった。
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ストーリーは結構面白いと思う。やっぱりめでたしめでたしだけでは終わらない展開はすごく好き。
ただ筆致が粗くて若干強引なとこもあって、大人の精神をもった大人が読んで面白いかどうかは、ちょっと疑問。主人公のマサミチをあんまり好きになれなかった。
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ふとしたはずみで家神さまが見えるようになった男の子が主人公。
理由もわからず田舎に越してきたことが不満で、頭は前の学校のライバルのことでいっぱい。
ウサギと身体が入れ替わってしまう。
原子力発電の問題点に触れた良心的な内容。
タイトルはおおざっぱすぎませんかね?
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この作家さんは、一貫して環境問題をテーマに扱っていますが、もう一つの着目したいのは、どの作品にも、素敵な大人、もしくは導き手が多く出てくることです。
元々、児童書ですから、彼らのように、子供に大切なことを説く人物は、やはり、必要不可欠なのだとは思います。ですが、彼らの教え方が、とても、上手いのです。
子供だからと甘やかさず、かといって放置せず、子供は知らないことがあるという前提に、言葉で優しく説いて態度で親愛を示す大人・・・父親母親だけではなく、主人公に接する大人たちの多くが、こういった視線で子供に接しているのを感じます。
本編とは少しずれた見方かもしれませんが、なんだか、大人としての有り方を考えさせられるような気がします。
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生き物の言葉を理解できるマサミチの冒険ファンタジー命の大切さと自然の大切さ、人が高慢になり科学に頼ることの怖さが綴られてる。優しい語り口なので読みやすいが深いテーマだと思う。
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3・11の大震災で福島に起こった原発事故が、どれだけの人たちが被害を受けたか。福島のみならず多くの日本人が今、どんな目にあっているか・・・この本は、今読むと大変多くの事を教えてくれているとよく分かります。今から18年も前の事なのに、気付かなかった私たちがバカだったのですね。
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たまたま手にとったので読んだだけだったんですが、まさに今の話題だったのでびっくりしました。
こういうお話を子供に読んでもらえたら、で、なにか感じてもらえれば、いいなと思う。
でも、今の子供は本どれくらいよんでるのだろうか・・・
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http://tukiyogarasu.blog80.fc2.com/blog-entry-297.html
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原子力発電所で働く家の子まさみちが、突然母と田舎に来たことから始まる。原子力発電所のちょっとした事故から、危険を感じた職員が妻と子を遠くに回避させるのだが、詳細を知らない子供が、なかなかなじめない中展開してゆく、かえるを自転車で引いてしまい気味悪がってから、罰として食べさせられた饅頭のおかげで虫や動物の言葉が聞こえるようになる。また、放射能も青い炎として見えてしまう。被爆したお父さんの同僚、大好きなおじさんが田舎に着てから、急展開。お父さんの働くげんしろで大きな事故があり、神様含めみんなで第三次を未然に食い止める。人には、まだ原子力を扱うだけの科学力がないので危険と物語る。。。。福島の原発事故のあった今、この警鐘は現実味を帯びる。実際ににたような事が起きたんだ。。。児童文学なので事故の状況がとてもわかりやすく書かれていてすごい
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家魂のヨネハラさんの言葉がズシリと重く響きます。 曰く
あの青い火は、まだ人たちが使うには難しいもののようですねぇ。 かと言って、一度使い始めたものをやめるのも、また難しい事のようです。 なにしろ一度燃え始めてしまったあの青い火は、何百年、何万年という「時」にまかせるほかには消す手立てがないらしいのですから。 困りますねぇ。
ひとつ間違えば家でも山でも火事にしてしまう赤い火は、人はうまく使っていますけどね。 あの青い火は、その何百倍も使い方が難しいようだ。 人の知恵が、いずれは安全に使いこなすのかもしれませんけど、それまでにいったいどれくらいのスイッチョさんが・・・・・あの青い火の犠牲になる人が出るものやら・・・・・・
我が日本国ではあの福島原発事故でいったい何人のスイッチョさんが出てしまったのでしょうか?? この物語ではこの原子力発電所の事故のあと、TVのニュースがマサミチ君が思う本当に大事なこと(原子炉がどれほど危険な状態だったか、もしかしたら何万人もの人たちが逃げ惑うことになったかもしれなかったということ、それを防ぐためにスイッチョさんが自分の命と引き換えにして人々の安全を守ったこと 等々)を一切伝えなかったのに対し
それだけだった。 たったそれだけ!
と憤慨していたけれど、今、私たちが聞いているニュースもそういう大事なことを伝えてくれているのかどうか・・・・・。 避難を余儀なくされている方々の近況はいろいろな形で報道されているけれど、それが本当の状態をちゃんと反映しているものなのかどうか・・・・・。
こんな事件を引き起こしてしまった日本であればこそ、この物語はもっともっと読まれてもいい物語だと感じました。 児童書と言えども決して侮れる内容のものではありません。
(全文はブログにて)
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もっと世に知られて評価されるべき内容だと思う。児童文学の枠に修まらず、大人も読むべき。スイッチョさんの信念と行動には涙。
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子供向けの本ですが、大人が読んでも十分満足できるお話。読み始めは主人公が子供かー、気持ちが入らんなー、なんて思いながらページを繰っていたのですが、月ウサギに体を入れ替えられたり、原発の危機にツクヨミ様やスイッチョさんと行動するあたりはなかなかの緊張感。ところどころに、スイッチョさんダメだな、っていうフラグを感じ、何度か涙ぐんでしまった。で、最後も当然、涙。
まさかの原発の話で、今とこんなにかぶってくるとは。単行本が1993年刊行なので、震災の18年前か。著者もまさかこんなことが現実に起こるなんて思ってもいなかったのでは?『現実は小説より奇なり』、では済まされないですよね。
1年半になろうとしますが、今でもスイッチョさんみたいな人たちががんばっていると思うと、ちょっとツライものがあります。
いつの間にか忘れていた自然を畏怖する心・敬う心,日本の八百万の神々への思いに気付きを与えてくれるお話でした。そういう点ではジブリっぽいのかな?
解説にもありましたが、単純なハッピーエンドではないです。それでも、希望というのは大げさですが、次へ進む気持ちを感じれる、清々しさある読後感でした。
ま、個人的にはエネルギー問題はそうそう簡単には解決しないだろうな、とやや悲観。画期的な代替案は出てこず、地道な努力を続けるしかないのだろう。
主人公まさみちと同年代の小学校高学年~中学校はじめの頃の子供に読んでもらいたいと思う。
この本はブクログか読書メーターで関連図書に出てきて、ポチッたのです。このサービスがなければ手にしなかった本だな。