紙の本
イラク復興支援・佐藤隊長の戦闘記
2007/04/02 11:38
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐藤正久一等陸佐(大佐)といえば、人道復興支援部隊としてイラクに派遣された陸上自衛隊先遣隊長としてよく知られる。派遣当初、その活動状況が大いに注目され、マスコミでも頻繁に報道されたものである。
そのころ、新幹線車中の電光ニュースでも、「佐藤正久1佐は、・・・・」というように電光表示が流されるのを見て、すっかり有名人だな、と思ったものだった。
さて本書は、佐藤隊長のイラク人道復興支援戦闘記である。本書の内容から、あえて「戦闘記」とすることが適切だろう。
復興支援として陸自は、給水支援、医療支援、公共施設の復旧・整備を行った。
元々、佐藤隊長は実は給水支援活動には反対だったという。さらに、殉職した奥克彦大使も別の理由から給水支援に反対だった。
読み進むほどに、これまで報道されなかった事実、また事実、さまざまなエピソードが明かされる。
先遣隊長として現地入りしてから本隊到着までの1ヶ月間は、毎日の睡眠時間が2、3時間だったというから頭が下がる思いだ。
この度の復興支援活動は、自衛隊にとって初めての試みだった。なにしろ、自衛隊が現地で活動する間だけでなく、撤収後も引き続きイラクの人たちが自立できるような復興支援としなければならなかったからだ。そのためのレールを敷くことが佐藤隊長たち先遣隊の役割だった。
何事においてもそうだが、一旦レールが敷かれたならば、それを維持運営していくことはさほど困難ではない。それに対して、何もないところから一定のレールを敷くことには苦労も伴い力量が試される。
佐藤隊長は、現地の人たちが自立できる復興支援とするため、また、イラクの人たちの心を掴むため、どのように考え何を実施したのか。
本書からは、佐藤隊長が素晴らしく有能な人物だということがよくわかる。ビジネス交渉の経験がないにもかかわらず、宿営地借り上げの交渉などは見事なものだ。先遣隊長として、うってつけの人物だったのだろう。現地人の心を掴んだ彼ら自衛隊は、アメリカ軍やオランダ軍もできないことを成し遂げていた。
評者の事前の想定とは違って、本書は単にイラクでの活動内容を記しただけの書にとどまらない。国際社会における日本の貢献、さらに、国家とは・・・、政治とは・・・、経営とは・・・、組織とは・・・。多くのテーマが包含される書なのである。
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徹底した現場主義の実践によって自衛隊の古い体質に風穴を開け,先遣隊長として活動をゼロから軌道に乗せた功績は素晴らしい。もっと広く世に知られても良いのではないかと感じるし,こんな人が上司だったらと単純に羨ましくも思う。報道で伝えられる著者の姿に,海外でも活動できる頼もしい自衛隊の姿を見て取った人も多かったはずである。
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自衛隊のイラク派遣について、自衛隊員の視点で書かれている。
実際に現場に行った隊員たちの「戦闘記」!
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イラクへの自衛隊派遣は確か高校生くらいのときだったが、
その時の詳細な活動をまったく知らなかったので読んでみた。
とにかく撃たない撃たれないよう地元の人たちとの信頼関係を築くため、
いろんな人にあったり食事をしたり交渉をしたりと大変苦労していたそうだ。
その時の中東(?)の人たちの性格が吉村作治さんが言ってたこと
ほぼそっくりでそっちに驚いた。
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外交と国際貢献を、現場の目線で実務的に語れる人はとても貴重。この人がいるだけで、自民党を政権につける意義があると思う。
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イラク派遣の「ヒゲの隊長」佐藤正久。やっぱり現場の話は面白く、かっこいい。右だろうと左だろうと、偉かろうと偉くなかろうと、安全なところから言うだけのやつの言うことなんか聞くだけ時間の無駄だ。
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日本国内でさえ、意見の対立がある。現場でこちらから撃つことはできない。等々、ものすごく制限された状況の中で、ゴールを設定し、イラクのその地域の人々が自立できるように、地域に入っていき、信頼を得て、必要な援助を高品質なレベルで実現させていく。その過程。
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現役自衛隊時代に、イラク復興支援で体験した、現場の本当の声がかかれた貴重な一冊。全国民が読むべき本だと思う。
復興支援には物資や体力だけでなく、現地のしきたりや宗教、そのほかにも気を使わなければならないことが山ほどある。
これを読めば、防衛費を減らそうなどという間違った意見は出ないはず。
国会は一刻も早く、自衛隊がよりよく活動できるよう、法整備をすすめるべきである。
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著書は軍人ではなく外交官ではないか、という印象の一冊。読み口はとてもさっぱりしていてさっと読めてしまう。法整備問題からアラブ社会のビジネスのノウハウまで、様々な実務に関する経験をまとめた一冊。
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自衛隊のイラク先遣体調で、「ヒゲの佐藤」というあだ名で知られた筆者のよる、文字通りの最前線での奮闘記。ヒゲの佐藤はわざわざ表紙でも名乗っており、当時その名前で広く知られていたことが伺える。
政治がどう判断しようと、日本のマスコミがどう報道しようと、現場では命がけの活動であり、相手の習慣や宗教にもかなり細かく気を遣って、復興支援を慣れないビジネス的な駆け引きも交えながら現地に必死に溶け込んでいく。マスコミの報道は一面的であり、現場で何が起こっているのか、はこういった書籍がないと本当のところはわからないものだと思い知らされる。
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自衛隊の、本当に命懸けでいろんなものを背負った、んで、見事に成功したオペレーションの記録。
陸自は、日本社会で認められ難く、受け入れられる為に苦労して来たことが現地でも役に立った。なんという逆説的。だが、「軍隊」でない故に、日本人故に、磨き上げれて来たことがある。他国の「軍隊」ではできなかったことだ。
軍の仕事ではないが、軍ではない仕事だ。
そういう事なんだろう。
色々と考え込むところはあるものの。
国民は、自衛隊の活動について、腹を括るべきなのだ。
しかし、1番の問題は、今こうしてこの本を読んでいるオレが、当時、ちゃんとした社会人であったはずのおれが、リアルで、殆ど覚えてないということだ
大半の日本人がそうなんじゃないか。
平和ボケとは、そういうことだ。
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ヒゲの隊長としてテレビでお見かけした覚えがあるが、実際の活動についてはほとんど知らず、今後の自衛隊の動きについて、まずは過去の活動状況を知りたいと思い取り寄せた。
イラク復興支援活動で多くの協力をどのように得たのか現場視点で臨場感がある。
2003年10月末にイラク派遣の命令、外交官と自衛官の現場主義で協力体制をとりあい数日前に会った矢先の出来事として、2003年11月29日奥克彦大使、井ノ上正盛一等書記官がイラク支援会議出席途上に銃撃されたという。
危険と隣り合わせの復興支援活動。多大な期待を寄せられながら、給水、医療支援、公共施設の復旧・整備の三つに限られ、安全確保視しつつ現地の信頼も得ながら活動することの難しさ。壊れたものを元に戻す復旧だけでなく、元の姿よりさらに高めるというニュアンスを含む復興支援。粘り強い交渉と広報で日本の自衛隊が友好的に迎えられた様子が生き生きとした文章で伝わる。
ガソリンは石油埋蔵量世界3位のイラクだと1リットル1円、部族長の力や交渉力についてなど豆知識も得られる。
自衛隊の体質を揶揄した言葉として、陸上自衛隊は「用意周到 動脈硬化(融通がきかない)」海上自衛隊は「伝統墨守 唯我独尊(伝統固執しプライド高い)」航空自衛隊は「勇猛果敢 支離滅裂(一度離陸すると撃つまで基地に返ってこない)」らしい。
自衛隊法一部改正に伴い「付随的任務」から「本来任務」へ
自衛隊の国際貢献によって世界から認められれば国際社会の地位が向上、日本の安全保障にもつながり、支援した国だけでなくともに汗を流した国々からも友好関係の促進が期待
海外派遣の窓口が基づく法律によって、外務省だったり内閣府だったり内閣官房だったりするらしい ノウハウ蓄積のためにも窓口を一本化してほしいとの意見あり
治安維持活動に対する集団的自衛権、武器使用制限の問題点、地位協定、派遣時の殉職に対する保険補償(300万程度から1億と幅があるらしい)など、課題山積の現状の語り
隊員の中には遺書を残して悲壮な覚悟と純粋な使命感を持っている方の話もあり、安全に任務につけるように家族も送り出せるように手当の支給を願うことは「名誉の確保」として触れていた。彼らの人生がかかった安全保障について、全く考えが及ばなかったことを申し訳なく思った。