紙の本
作者の微熱
2007/10/08 19:38
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
京都を一周する「京都市バス206番」の路線沿いに、語り進められる京都案内である。作者はいま注目を集める哲学者、鷲田清一。この本では、京都を題材にした都市論が、京都人を題材とした社会論が、そして、それらを通して鷲田哲学が展開されている。中でもこの本の魅力となっているのは、幼少の、青春の作者が随所に顔を出し、微熱を帯びた語りが味わえることだろう。
さらに、この本、京都(B級?)グルメ案内として使うこともできる。以下、ラーメンと喫茶店を抜き出してみた。
【ラーメン】(住所付き)
・サカイ御薗橋店(北区大宮東総門口町38-3)
・ますたに(左京区北白川久保田町26)
・新福菜館(下京区東塩小路向畑569)
・本家第一旭(下京区高倉通り塩小路下る)
・新進亭(左京区高野泉町6-73)
・吉林(上京区千本通一条下る東入)
・元町(上京区油小路出水上る大黒屋町)
・とんとん来(東山区四条通大和大路西入上る東側中之町210)
・天天有(左京区一乗寺西杉ノ宮町49)
・金ちゃんラーメン大徳寺総本店(北区紫野上築山町)
・麺許皆伝(大徳寺前 屋台?)
・力新(四条大宮 屋台)
・長浜ラーメン(中京区木屋町通三条下石屋町115)
・天下一品(左京区一乗寺築田町94)
【喫茶店】(自分で調べてね)
・わびすけ
・進々堂
・学士堂
・らんぶる
・えすぽあーる
・柳月堂
・りーちぇ
・みゅーず
・フランソア
・築地
・六曜社
・蝶類図鑑
・ZABO
・マンホール
・イノダ
京都で学生生活を過ごした人には、懐かしい名前がいくつもあるのでは。
次回、京都を訪れた時、是非立ち寄ってみたいです。
他に「うどん」「お好み焼き」などのグルメ案内に使えます。
(京都のうどん、お好み焼きは他の地方のとはまた一味違います。)
【出版社へ】
※すべての写真に住所(地名)を明記してほしかった。
紙の本
ミーツ・リージョナルからとんがった部分を削り、アカデミックさを強化したような京都本
2007/08/13 21:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つきこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
つんと澄まし「うちらこんなええとこ住んどるんどっせ」と京都中華主義を炸裂させた従来の京都本とは一線を画した京都本。モノクロの写真に貧乏クサと思うか人情を感じるか、その辺が好悪の分かれ目です。京都の貧しさに踏み込んだ点が画期的。
京都駅から今熊野、祇園・岡崎・百万遍、高野・下鴨・紫野、西陣・二条と来て四条大宮・島原経由で再び京都駅。東へ北へ西へ南へ。字面に過ぎ行く車窓の風景を容易に思い浮かべることができる人の郷愁を誘います。市バス206番の旅、始まりはたかばしから。
B級グルメに奇人にけったいなもの。現在の「汚のなった」京都を見つつその視線は過去に遡る。それはアートか単なる汚屋敷か、古道具で飾り立てた骨董屋も今はもう写真の中にしかない。かつて~だったとその多くが過去形で語られる辺りもの悲しい。河原町ジュリーやDX東寺を登場させて、ディープ京都をぐるりとひと回りしつつ、なぜ京都にかくも異空間が広がっていたのか、京都人の美意識に迫りながら考察の旅は続く。
80年代、全国から京都をめざして奇人が集結したという。言われて納得。果てを可視化した姿を目の当たりにした子どもは妙に物分りがよくなる。187頁、京都の子どもはこんなにも大人。後年彼らがイケズと呼ばれるなんて納得がいかない。よその人間はやっぱり世間を知らない。イノセントなニュータウン育ちの前ではイケズ爆弾も不発に終わる。奇人を呼び寄せた京都の魅力とは何だったのか。その多くが今は死に体で、そのエッセンスを充分に浴びて育った京都人を嘆かせる。
キーワードは貧乏、そして格差。
上を見ればきりがない。古き昔から連綿と続く由緒正しき方々が鎮座する都市。みなが千年この町に住んでるような顔をしているけれど、実はよそ者も相当多い。一代で追いつくのは土台無理。三代続いても貧乏ならやっぱり無理。絢爛豪華な京都とつつましい日常と、その越えられない格差を補う手段として共同防貧の考えが発達し、自立の精神を育んだ。歴史が長いからでもなく、神社仏閣が多いからでもなく、職人が多いからすごいのでもない。
越えられない格差ゆえにその美を拠り所としてきた人達の、自立精神こそが京都らしさの最も肝な部分。そのDNAを解しない人は住まいは京都でも京都人ではない。町家に住んでも京都人ではない。きれいね、いいね。貰うばかりでなく返せ。最終章、京都への提言をそう読んだ。
どこにでも住める人間が次々と京都にやって来る。そしてそこにしか住めない人達は今もそこに居る。片っ端から京都本で学習したとおぼしき知ったかぶりを、イケズ爆弾でもって迎える人がいても不思議はない。彼らはまだ知らない、京都らしさは唯一ではないことを。皮膚に染みこむように体感してきたこれらの事は、よその人にはやっぱりうまく伝わらない。知らないから京都本が次々と出る。
町家暮らしに憧れる前に読んでおくと、あなたの京都熱も少し冷めるかも。それでもやっぱり京都が好きな人はおこしやす。変化を好むのもまた京都人なのだから。
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京都の市バス206系統に乗り、その路線を中心の界隈に分析・批評を加えながら京都という都市を体感していく。知らない京都の裏話もあって結構面白く読めました。
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購入者:山田:
哲学者の京都案内。ワコール・任天堂・京セラ・島津マネキン・河原町のジュリー・任天堂・舞妓はん...と京都にまつわるキーワード。206番のバスに乗って、京都の歴史、習慣、京都人の言われなどを案内。興味のでないお話しもあるけれど、少し知的な笑いもこみ上げる京都が好きになる本です。返却:(2007.5.15)
京都に住みながら、文化的はことに、疎い僕ですにとっては、新鮮なことがたくさんあってよかったです。
貸出:田子(2007.5.25)返却:(2007.5.25)
京都市バス「206番」系統をぐるり1周の旅。「北へ」「東へ」「西へ」「南へ」と各地域の食べ物や、文化、おもしろエピソードなどが書かれています。
個人的には、もうつぶれてなくなってしまった、「しあんくれーる」(思案に暮れる)という喫茶店の事が触れてあり、嬉しかった。
貸出:藤本(2007.10.5) 返却(2007.11.6)
おもしろい!読みやすいし、ユーモアの種類も僕好み。ちょっと京都通ぶれます。おすすめ。(★★★★★)
貸出:下司(2007.11.7)身近な場所や店、知ってる、知ってる、またはそんな場所があったのかなどなど、京都に住んでいる人ならなお一層楽しめる、うんちくたっぷりのおもしろい本。是非皆様ご高覧下さい。
貸出:山口(2007.12.18)返却:(2007.12.2
6)通ったことのある場所や知ってる場所なんかが出てきたときはちょっとうれしかった。著
者は僕の苦手なタイプの京都人な気がします。
貸出:中山(2008.1.8)返却(2008.2.1)
京都について知らないことが多いと痛感しました。休みの日に京都散策もいいなと思いました。やはり車に頼らず、自分の足で歩き、街を感じないといけないですね。
貸出:裕志(2008.3.19)返却:(2008.6.13)
京都の歴史を感じられる一冊です。文化的なことに疎い僕には、新鮮なことに触れられよかったです。
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京都に行くと必ず乗る市バス206系統を全編の中心に据えて、その界隈を鷲田流に紹介してくださる。なんとも嬉しい一冊である。案内書でもあり、また、歴史書でもあり、当然ながら哲学書でもあるのだ。次回の京都の旅が、大いに楽しみになった。
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京都本というのはたいていオカシイ。イメクラなみだったり、オシャレ系だったり、生涯学習っぽかったりして、しっくりこない。ふつうに読める京都本を並べてみたら、なんのことはない、下京のフツーの育ちの人のばかりだった。京都は狭くて広く、イメージは多様で、生活は生活。いまんとこいちばんしっくりくる京都本を一冊。市バス206系統で巡る場所と記憶。
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これは京都市内をぐるっと一周する市バス206号系統を利用した、「思い出」と「京都の酸いも甘いも」をプラスした、役立ちそうであまり観光には参考にならないガイドとしても、秀逸です!
鷲田氏は私よりずいぶん上の世代の方ですが、普段着の京都人がほぼ描かれている。
まず出だしから、市バスを206番と呼ぶところが京都人として、やられました。正式には○○号系統なんだけど、そんな言い方する人いやぁらへんもん。
本書をまず手にしたとき、もっと小難しく、もっともらしく書かれているだろうから、襟や姿勢を正して読む本かと思っていました。
しかし、とても平易でするする読めます。それでいて哲学的な観点で書かれていたり、歴史について触れていたり。こんなふうに、ちらちらっと触れてみるあたりが、京都を説明するのにぴったりだと思う。
JRの「そうだ京都いこう」キャンペーンで紹介される社寺仏閣よりも、京都を体感できる本だと思います。
京都を離れた京都人(三十路以上か?)にもとてもおすすめです。モノクロの何気ない写真に郷愁を覚えることうけあい。
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知人が引用していたのにつられて、図書館で立ち読み。
京都と一言で言っても人の数だけ、京都があるんやね。
きっと。
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鷲田さん自身が生まれも育ちも京都とは知らなかった。
年代的にはひと世代以上上だが書かれている場所や事柄は自分にも十分以上わかる。
「おおっ同じ時代に同じもの食ってる」とか「へぇーほんとはここにこんな人が・・」なんてことがぞろぞろ書かれていた。
なかなかわかってもらえない「本質の京都」がわかってもらえそうな「哲学のある」京都本です。
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京都市街を大きく1周する市バスの206番の路線に沿ったエッセイ。
私も京都での学生時代よく206番のバスに乗っていた。
わざと逆回りにのって遠回りして下宿に帰ったりして。
地方出身の学生であったし、めったに途中下車しなかったのでそんなにいろいろなところがあったなんて知らなかった。
バスの窓からの景色が思い出されてなつかしいなあ。
著者の鷲田先生と一澤信三郎帆布の社長とが似ているとの話が出てくるが私は以前神戸市立博物館で鷲田先生そっくりのかたをお見かけしたことがある。ご挨拶の機会をうかがっているうちにどうも声が違うと思って人違いであることに気がついたのだが。ほんとそっくりだった。
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写真:鈴木理策
装丁:守先正
内容:
古い寺社は多いが歴史意識は薄い。
自然そのものより技巧・虚構に親しむ。
けったいなもんオモロイもんを好み、町々に三奇人がいる。
「あっち」の世界への孔がいっぱいの「きょうと」のからくり。
(帯より)
まず、表紙に使われていた鈴木理策の写真がいい。それにタイトルだ。「京都の平熱」。「平熱」とは実に京都らしい。ちょうど近く京都に行く予定があったので、これはいいガイドブックになるのではないか、それに鷲田清一の本とあればただの京都エッセイではないだろう。京都の地図もついていて、旅への期待を膨らませてくれそうで、個人的にタイムリーな内容で購入。
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七条通り周辺がすきになった。
人通りは決して多くはないけど、粉もんやや定食屋さん、居酒屋のならんだ下町っぽいお店のよさは、この本を読んで再認識。
観光本より、誰かの目から見た京都の方が魅力的だな。
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生活者あるいは哲学者の視点からの京都案内
京都の旅に持っていきたい一冊。
一人路線バスに乗ってこの本を読みながら、うむと納得したい。
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京都の日常、それも京都特有の濃さを含んだ生活観に溢れる一冊。
京都駅から市街地を一周する市バス「206番」の路線を辿りながら、臨場感たっぷりに京都の素顔に迫るという面白さ。
京都ラーメンやおうどんといった庶民の味、古都に潜むアングラなスポット、祇園、学生運動、喫茶店、京大西部講堂、フォークやGS、西陣、建築、遊郭、近代化した都市…そしてそこに暮らす人々。
“よそさん”には理解しがたい京都の気質を語ったこの本は、時に主観的に、時に客観的に都市の変遷を見てきた哲学者ならではの語り口が生きている。
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○京都人がかつて「着倒れ」と呼ばれたのは、ひとつには、リミットが明確だったからである。一方に飾りの極みともいうべき舞妓さんの衣装があり、他方にあらゆる飾りを削ぎ落とした貧相の極みともいうべき修行僧の出で立ちがある。服装の両極端が様式としてはっきりと見えるかたちで提示されているので、そのあいだであればどんな服装も許されるという自由を、京都の町中では、幼いころから膚で感じつつ育った。
→今の京都もそうじゃない?芸大の奇抜服装からいか京のウエストポーチまで。