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人々は自分の理由をしゃべり、空間は自在につながる。
名を成したピアニストのライダーは「木曜の夕べ」というコンサートに出演のため、ヨーロッパのある町にやってきたが、出会う人々からいろいろな相談を持ち掛けられ打合せもままならない。
ホテルのポーター、ポーターの娘とその子供、ホテルの支配人、支配人の息子の若いピアニストなどが一方的に事情を話し出す。またそれに丁寧に応えてしまうライダー。またレセプションの会場、カフェ、ポーターの娘の部屋、写真撮影の建築物などががぐるぐると、あるいはドアからドアへとふいに現れ、途切れ、繫がる。
ポーターの娘とその息子ボリスのアパートに行くあたりまでの7,80ページくらいまでは普通に事が進んでいくようだったが、人間関係と建物の位置関係がだんだん歪んで来て、しかし内容は人々のライダーへの一方的な相談が延々と続く。
いつのまにかポーターの娘と息子のボリスがライダーの妻と子供になっていて、会話の内容も過激に、絵具を全色塗りたくったようなものになってゆく。いいかげん人々の独白に飽きて、ライダーがリハーサルできないのにいらいらしてくるが、だんだん混沌としてくるあたりから、ウォン・カーウァイあたりの映像でやったらけっこういいのでは、などと思い始めると、物語世界を楽しめた。
全939ページ、厚さ3.5cm。上下にしたらきっと下を買う人は半分以下かも。1冊で重かったが途中斜め読みしてしまったが、なんとか読み終えた。
カバー絵の黄色い街灯に照らされたこげ茶の建物と路地が内容にぴったりだ。一点透視の路地の先は歪んだ時空間に続くようだ。
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ライダーは著名なピアニスト。中欧のこの国のある街に演奏会の招待できている。街をあげての記念式典だそうだ。タクシーでホテルに到着したが、迎えにでる人もなく、運転手がとまどうばかり。ようやくポーターが出てきたが、本来は支配人が出迎えるべきなのに申し訳ないと何回も詫びる。これから先もライダーは色々な人に用事を頼まれ、それを成し遂げようと努力するごとにまた不思議な出来事にさえぎられるということが続く。不思議な霧の中でお話がすすむような感じを受ける。
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巻末の解説によると、発表当初から賛否が大きく分かれたという本書。デビューからそれまでに寡作ながらいずれも高い評価と栄誉ある賞を得た作家が、本当に書きたかったものを書いたそうです。
出だしから登場する人たちの長いセリフ、それに続く非現実な場面転換。序盤から、読み進める側は、この奇妙な小説をどう受け止めていいのか、戸惑います。否定的な感想を持つ人は、おそらくこの戸惑いを消化できなかったのではないでしょうか。そうした気持ちも当然と言えるほど、風変わりな小説です。
自分は、その風変わりさが、ルイス・キャロルのファンタジー小説に通じるものとして呑み込み、非現実な進行も含めて楽しむようになり、中盤からは予想もつかない展開にスリリングな興奮を感じるようになった口です。※なお、補足すると三月兎やハンプティダンプティ的なものは登場しません。あくまでもひと同士の想いのズレや行き違いを描いたものです。
もっとも印象深い小説のひとつ。そう評したいです。
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一応読んだことにするが、最初の数ページで飽きた。というか自分には面白さがわからない。文学とは難しい。ページ数も多い。
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読書とは苦しいものなのだよ、と思いながらなんとか読了。
翻訳本にありがちな、どーにもならない鼻持ちならない文章ではなく、自然な日本語な上に読みやすい文体に翻訳していただいていますし、内容もすっと入ってくるんですが…
とにかく、読み進めるのが苦しく、どんなに頑張っても1日2章か3章読めればよい方でした。
なんだろう、この経験は。
万人におすすめできない本の筆頭にあげられるかと思います。
ですので、評価はできません…
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この本はすごい。ほとんどもしくはすべての登場人物が自分のことしか考えられない。もどかしい思いで何度も本を閉じたのだが、読みきったあともう一度それぞれのエピソードを読んでみると、噛めば噛むほど味が出てくる。吸い尽くせないほどに。頑張って読み切る価値がある。
自分は果たして本当に誰かのことを知りたいと思ったことがあったのか? そう思っていたと感じていたときでも、ただ自分のことを誰かがどう思っているかを知りたかっただけではなかったのか? 時に誰かに優しくすることはできるが、結局いつも自分のことばかりだったんじゃないか? そんなことを思う。
最初は荒唐無稽で夢のような世界の話だと思うのだが、読み終わって数日が過ぎたあたりから、だんだんとそれが世界の本当の姿なんじゃないかというふうに思えてくる。みんな言いたいことだけを言っていて、すべての人同士がすれ違っている世界。でも、それは全くもってありのままの現実なんじゃないかと。
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とても風変わりな作品。私はこういうの好き。
夢の中のように脈絡なく続くストーリー、歪んだ時間、辿り着かない目的地、見知らぬ知人達(矛盾してるけど"見知らぬ知人"が正しい表現だと思う。)
永遠と続くワンカットシーンのような小説。
読後は長い夢を見終わったような気だるさ。
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世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り…。実験的手法を駆使し、悪夢のような不条理を紡ぐブッカー賞作家の問題作。
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正直に、読むのにとても疲れた一冊。
カフカの小説のような不条理感がずっと続き、時間の観念が崩され、いまどこにどれくらいいるのかわからなくなりながら、停滞しそうで停滞しない感じの物語に翻弄される。そして疲れる。
最後まで気の抜けない感じで、「よし、読むぞ!」と気合いを入れないと読み進められない感覚は久しぶり。
読後の達成感を味わいたい方は、是非。
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そろそろ桜が咲こうかという時季になんだけど、今年みた初夢の話。
燦々と陽光降り注ぐ部屋でクリスタルピアノを弾いているYOSHIKIが、メロディを奏でるのをやめ、グラサンを指先でスッとあげながら、こちらを見ると、じゃ、20分後に、これ舞台で歌って下さい、と言って出て行った。
オッケー!任しときな!と安請け合いしたのはいいものの、よく考えたら、俺、歌詞を知らないや、ということに気づいた。さすがにお客さんの前でカンペみながら歌うのも失礼だし、手のひらに書いて、それみながら歌うってのも、様にならないし、さて、どうしよう・・・
ってところで目が覚めた。
完全に大晦日にみた紅白の影響だ。
だいたい夢って、その先の展開が読めなくなって困ってくると、目が覚める。自分の想像力以上のものは出てこない。
じゃ、もし覚めなかったらどうなるかっていうと、この小説みたいな展開になる。
延々と困った、困った、が続く。
充たされざる者、ってそういうこと?
主人公はたぶん世界的に有名なピアニストのライダー。故郷に凱旋公演で戻ってきた。街中誰もが彼のことを知っていて、誇りに思っているので、あっちこっちで声をかけられる。有名人の宿命だから、それは我慢しなくてはいけないこととわかりつつ、公演を前に肝心のピアノを弾く練習が出来ない。
会う人会う人、私がどれだけあなたを尊敬しているかとか、昔あなたに会ったことがあるとか、今度こういう会があるからぜひ来て下さい、ちょっと寄ってひと言スピーチをしてくださるだけでいいんです、とか。
ライダーも、忙しいのに、まあ、ちょっとだけなら顔を出しましょう、とあっちこっちで安請け合いしてしまうので、もう、スケジュールがメチャクチャ。そもそも自分の公演までのスケジュールってどうなってんの?となってしまう。
困った。困った。
まんがにっぽん昔ばなしのおじいさんのナレーションが延々とリフレインする状況に陥る。
そのうち、時間の流れもおかしくなり、空間もあやしくなってくる。
そして、ひたすら、困った、困った。
だまし絵のエッシャーの世界を小説で表現したらこんな感じになるんじゃないかな。なんか拗れてて、どこかでループしてて、知らないうちメタモルフォーゼしちゃったよ、みたいな感じ。
この作品、傑作か駄作か評論家のあいだでも評価が分かれているらしいが、たんに好きか嫌いかだと思う。
自分はこういうの、嫌いじゃないから、途中退屈したけど、最後まで読んで良かった、面白かった、と思えた。でも人には薦めない。
だって長いんだもん。
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ブロツキーとは何者なのか
Audible体験、悩んだ末に分厚さ的にも内容的にも自力で読破できるか不安な本作を選んでみたけど朗読いい感じ。しょっぱなのホテルのポーターの哲学とかハンガリアンカフェとか家族関係をつらつらと綴る感じとか幼少期過ごした部屋の話とか不思議だけどなんか好き
9番⚽
ボリスを私の息子だと言い出すライダー
『2001年宇宙の旅』
度々思い出したように出てくるゾフィーへの苛立ち
ブロツキーに延々とチンポとキモい性生活の話聞かされるの嫌過ぎるんですが…
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悪夢を彷徨うような不条理な小説でした……
ふわふわ、あてどなく1000頁近くも彷徨うのはいささか疲れました。
なのにシュールリアリスティック的ではなく、最後まで読ませる力があるのは、作者の確かな手腕によるものでしょう。
そんな夢の中で、挟まれる断片的なエピソードは、誰でも覚えのあるような根源的な傷を抉ってきます。
両親とシュテファンの関係とかお辛い…
ライダーの両親が来ないこととの相似性もありますね。
ブロツキーとミス・コリンズとの関係は、ゾフィーと自分との関係とも相似しているような気がする。
過去、現在、未来を淀んだ形で顕現した世界なのかもしれない
そう考えると、グッと面白くなった
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まさに、不条理文学。みんながサイコパス。
物語って、なにか目的があってそれに向かって進んでいくものだけど、これはその途中でいろいろな別の目的がうまれて、結局当初の目的は果たされずに終わる。
しかもみんな話が長く、別のエピソードを勝手に語ったりするので、語り手と同じように読みながらイライラしてしまう。
でも不思議なことに、最後まで読めてしまった。すごいなカズオ•イシグロ。登場人物があまりに、予測不能なので、クスッと笑ってしまうところもあった。
結局、この世界は何だったのか。夢??
登場人物は結構、語り手と似ているところもあった。
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「充たされざる者」(カズオ・イシグロ : 古賀林 幸 訳)を読んだ。
読んでいる間中〈混乱〉か〈苛立〉もしくは〈混乱と苛立〉に支配される。
『ライダー』は泥濘んだ方泥濘んだ方へと足を踏み出さざるを得ない状況に落ちていく。
カズオ・イシグロ氏は読み手の辛抱強さを試しているみたいだ。(笑)
過去に一度挫折した作品だが、今回は腰を据えてじっくりと向き合った。
最後の最後に救済が待っていた。
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ある町の危機を救うために、世界的なピアニストがスピーチと演奏をしにくる話。約950ページの小説はさすがに長かった。かなり分厚い本だったが、わざわざ上下巻にわけるほどの小説ではないというのが個人的な意見。本当に何を伝えたかった作品なんだろう。しっかりとしたオチはないというのがイジグロの特徴なのだろうが、最後の最後にどうしても期待してしまう。しかし、案の定何もなく終わってしまう。まぁ、とにかく、出てくる人物ひとり一人が、ドラクエの敵のように、主人公の行く手を阻むというRPGのような作品だった。