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『日本ロボット戦争記 1939~1945』(井上晴樹著,NTT出版,2007年)という本を読み終わりました。昨年の秋頃に店頭で見かけ,その装丁と帯の文句に負けて勢いで買ったものの,439ページもあるのと予想外の内容の専門性に阻まれて読み進まず,途中で『鴨川ホルモー』とかに追い抜かされていました。いや,すごい本です。一般啓蒙書ではなく学術書に近い雰囲気で,卒論・修論を書いていたあの頃を思い出しました。人にはあまりお勧めできません。
戦争の時代に日本人はロボットとどう関わってきたかを,膨大な資料から明らかにしていくという内容です。実際に開発されていたロボットから,漫画や小説に登場する空想のロボット,さらには自動制御機器や計算機のようなロボット的なものに至るまで,ロボットっぽいものはすべて網羅しています。その中でいくつか感じたことを書くとすると,まず驚かされるのは「ロボットを戦争に投入する」ということに対する日本と欧米の考え方の違い。ドイツやアメリカでは「自軍の兵士の犠牲を減らすために」自動制御・無線操縦の兵器を投入しますが,日本は「兵器の精度を上げるために」むしろ兵士をロボット化して特攻兵器を生み出します。機械を人間に近づけるのか,人間を機械に近づけるのかというところで決定的な違いがあります。