紙の本
短編の怪奇小説集
2015/06/25 23:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ルルイエの通行人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラヴクラフトが添削や共作を手がけた作品を集めた、全集の別巻(上)。
短編が多いので、ちょっと読みたいときにはとてもいい。
電車の中、喫茶店、散歩…。
内容は
「死」の魅力にとりつかれ、殺人を犯す青年を描いた、「最愛の死者」。
悪しき蛇の伝説が伝わる地で、蛇を殺したために悲劇が起こる、「イグの呪い」。
会社の書類を持ち逃げした男を追い、その途中の列車の中で起こる恐怖、「電気処刑器」。
美しい髪を持つ美女の背後に見え隠れする、恐るべき真実、「メドゥサの髪」。
魔性の鏡に閉じ込められた少年を救おうと試みる教師の苦悩、「罠」。
など、全十二編が収められている。
ラヴクラフティアンにはおなじみの「ヨグ=ソトース」「ルルイエ」…といった心くすぐる演出もちりばめられている。
当然ではあるが、作品の舞台は1900年代初頭なので、現代と比較してしまうと現実感が薄れてしまうのが残念である。
なお翻訳者の大瀧氏の作品解題は、下巻に収録されている。
個人的に一番おもしろかったのは「イグの呪い」。
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ラヴクラフト名義の話ではないけれど、ラヴクラフトが手を入れ時には全面改定までしちゃっている話。彼はこのお仕事で原稿料を得ていたというので結構な量を捌いていたと思いこんでいたのですが、……あれ、けっこー少ない?w
他人名義の話で、クトゥルフ神話ものではないのですが、気を抜くとクトゥルフとかシュブ・ニグラスとかヨグ・ソトースとかいう単語がもれなく滑り込んできます。ラヴクラフト先生、「恐ろしげな呪文」「狂いかけた人のたわごと」「異界の固有名詞」を何でもいいから書く必要があるともれなくオリキャラ名を使うってどーなんだ……いちお、他人様のお話なんでしょーに(^_^;)
ラヴクラフトの手は入っていますがラヴクラフトの作品ではないので、プロットは全体的にフツーのホラーミステリーです。事件性やオチ、起承転結がはっきりしているので、他のラヴクラフトものを参考にするより、こっちの方がコール・オヴ・クトゥルフのシナリオ作成のヒントにしやすいかも。宇宙的な理解不能恐怖を認識しようとしてリアルSANが削り込まれる心配はありません。
……まあ、ただ、それだけに、……全編に渡ってフツー。超フツー。
ラヴクラフトの書くラヴクラフトものって、やっぱり異質なんだなぁと、逆説的ながら感じました。狂気性が薄かったからかなぁ……。『宇宙的恐怖ってどんなものかわからないけれど、もしかしたら今感じているのが宇宙的恐怖ってものなの?』という感じがなかった。未知の感情をかき立てるという意味では、本家ラブクラフト作品は異常性が際だっているのかなと。
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「ラヴクラフト全集」の別冊は、ラヴクラフトが、他の作家の小説を添削した作品を載せているようです。
しかし、この添削っていうのは、職業としてなりたつほどのものだったのだろうか……。だって、それなりに名前の売れている作家なら添削なんて必要ないし、無名名作家なら添削している間に自分が書いて原稿料をもらった方が割がいいだろう……。
そかも、この人、けっこう徹底的に手を入れている感じがあるからなぁ……。
まあ、手紙魔で、ペンフレンドも多かったようだから、こうやって、文章上で人とつきあうというのが、合ってはいたのだろうと思いますが。
えーと、本の内容ですが、かなり出来に幅があります。1作、2作は、おもしろいけど、何作も連続で読むと、つらいかな。
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別巻上の読みどころ
サイコホラー『最愛の死者』
『ラヴクラフト全集』の読みどころ
1930年代のパルプフィクション・ホラーの中から生まれ、みじかい活動期間でありながら、多数のフォロワーを今なお生み出しつづけている。
ラヴクラフトの面白さを、ぜひ知ってもらいたく選びました。
今すぐにでも彼の小説のガジェットを使って彼のフォロワーとなることができるのも、ハマリこめる理由の一つ。
初心者には特に、短編かつラヴクラフトらしい『ダゴン』がオススメ。
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別巻の上(しかしこの区別は言いづらいな)。
別巻にはラヴクラフトがリライトを担当した短編を収録。読んでみたら全く記憶に無かった。見つからないのも当たり前で、買っていなかったようだ。全部あると思ってたよw
何処までが元の著者の筆で、何処からがラヴクラフトの筆によるものかは解らないが、当時らしいホラーだと感じた。敢えてそのように訳されているのかもしれないが、個々の作家のカラーが掴みづらいのは残念。
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ラブクラフトの作品は読みにくい。なぜかと思っていたがある人からの指摘で理解できた。単純に文章が下手なのである。翻訳するとどうしても格調は一ランク上がってしまうので気が付かない。この本は彼の作品ではなく他の作家のクレジットだが彼の手も加わっているという変わった作品集。「ジョージ王朝風切妻屋根」「名状しがたい***」などラブクラフトの作品には必ず登場する表現がここにも登場する。でもはたと気が付いた。この文章の拙さが神話の形式に通じているのだということを。
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生前、ラヴクラフトは自身の作品の執筆とは別に、文章添削や他の作家の作品を改訂する仕事、梗概を元に原案者名義で代作をしたり原案者とともに共作をしたりもした。それらの中には、後にクトゥルフ神話に取り込まれたものも少なからずある。別巻では、そのような経緯でラヴクラフトの手が入った作品が収録されている。
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『最後の検査』
カリフォルニア州の刑務所で謎の熱病が発生する。マスコミの報道で人々がパニックとなる中、妹は、刑務所の医療部長である兄とその助手の間で交わされた不穏な会話を聞いてしまい――。
(……なんだろうな。悪い話ではないのだが、展開がC級映画っぽい。原作準拠で映像化したら間違いなく大コケすると思う。あと作中(1920年代)でのマスゴミの捏造のやり口が現代(2000年代)とほぼ変わらなくて草だった。なお、ナグ、イェブ、そしてシュブ=ニグラスの名前が初めて登場するのがこの作品。)
『電気処刑器』
社長の命令で不本意ながらも人探しにメキシコに行く羽目になったわたし。しかも道中の電車内で一緒になった男に、自作の器械の実験体として殺されそうになり、製作の経緯を訊いたり書類の作成を勧めたりして、なんとかこの危機から脱しようとするのだが――。
(殺されまいと時間稼ぎに必死になるわたしと男との攻防がメインだが、頭の中で絵にするとなんだかコントっぽくなった。)
『イグの呪い』
蛇神の伝説が色濃く残る地にある精神病院で、ある異形を見せられたわたしは、院長からその異形にまつわる話を伺うことに――。
(起承転結が素晴らしい。「そうだったのか」と思わせてのまさかのオチ。)
『メドゥサの髪』
道に迷ったわたしが訪れた屋敷にいた老人。彼が語る、この屋敷で起きた悲劇とは――。
(不条理系。原題のメドゥサは海神ポセイドンの愛人でもあるという話から巫女的な存在とも深読みできるが、さて。)