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「ストロベリーナイト」と比べて良く言えば落ち着いた、悪く言えば地味な警察小説でしょうか。大沢在昌の一連のシリーズに似ていなくもない。意外な結末はさほど意外でもないんですが、ほっとさせられるエンディングに救われました。
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つい先だって車検工場のロビーにて、愛車を点検してもらっている間、置いてある雑誌を何気なく開くと、そこには国境の写真が載せられてあった。
国境、と言われても、日本人にはあまりぴんと来ないものだ。
北海道であれば、国後島を眼前に望む羅臼漁港を思い浮かべたりする。あるいは、歯舞諸島への国境の海を、ロシア軍警備艇が、不穏に動き回る根室海峡を、思い浮かべることもできる。
いずれにせよ隣国が見えなければ国境のイメージはない。稚内の高台にある氷雪の門から遥かサハリンが見えるときには、ああ、ここは国境の海なのだなと実感することができる。でも、サハリンが見えないことのほうが多いここは、やはり国境と呼ぶには広漠とし過ぎている。
逆に、歯舞くらいの近距離となると、これは国境というよりも、難癖をつけられて強奪されてしまった元日本の島々であることが、明確に意識される。北方領土という意識でしか、歯舞の海を見ることができない。眼前で機関銃を積んで威嚇をかけるロシア船がゆっくり航行しており、時にはそれは根室の漁民を射撃することがある。拿捕などは日常茶飯のことである。
石狩にある車検工場のロビーに置かれた雑誌は1年くらい前のものだった。このロビーの雑誌は3年前くらいのものなどもあり、少なくとも新刊は全然置いていないので、苦笑しながら、一番新しい部類のものを、私は手に取ったのだった。それでも一年前。古く、手垢に汚れた雑誌に掲載されているのが、即ち国境。国境、としての対馬の写真は、実は初めて眼にするものであり、意外であった。国境の向う、日本海の向うに朝鮮半島が浮かんでおり、そこ行き来する車が、晴れた日には肉眼で見えたりもするのだそうである。
その雑誌で少なからず好奇心を擽られてから、奇しくも一週間後、わが愛用の石狩図書館に予約していた本書が入庫する。『国境事変』というタイトルからだけは本書の内容が、対馬を舞台にしたものであるとは当然予測もしていなかった。だからこそ、いきなり対馬の海辺で始まる本書のプロローグに、天啓とでも言うべきあの写真が、私の頭の中で重なり、何とも不思議な思いに、心がぐらりと揺すられるのだった。
海辺には何者かが上陸した気配。おそらくは北朝鮮の工作員だろう。ちぎれたゴムボートの破片。そうしたプロローグに続いて、舞台は新宿に移る。ここからが、例によって誉田哲也の得意とする警察小説の世界である。
誉田哲也が得意とするパターンは、二人の両極に立つ主人公による小説世界のコントラストである。女性刑事を主人公に据えることが多いのだが、本書では題材が硬派であるためか、二人の男性捜査官の対比で描いてゆく。一人はなんとあの『ジウ』シリーズの一徹刑事・東警部補であり、もう一人は本書の重たい部分を担う若手公安捜査官・川尻冬吾である。
新宿警察署の現場刑事である東の健全ぶりは相変わらずだが、公安の川尻の方は、潜入捜査・囮捜査が多いことから、心の矛盾を抱えながら鬱屈した日々を送っている。もちろんそうしたイリーガルな捜査が水に合うという人間も仲間にはいるのだが、川尻はどこかで自分がこの世界にフ��ットしないでいることを感じている。
そんな鬱屈とは対象にある、新宿署・東警部補との対比の中で、川尻の世界に蔓延するジレンマ、仲間たちとの違法捜査の舞台裏、意見の食い違い、等々、やや毒気が強すぎるくらいに、作者はダーティな描写を執拗に続けてゆく。東警部補の世界は『ジウ』の門倉美咲であり、川尻の世界がちょうど『ジウ』では修羅の役を果たすことになる伊崎基子のそれであろう。清と濁。清廉と隠微。光と影。
そんな二つの世界の住人である男たちが、もう一つの影的存在である北朝鮮の工作員たちを追い詰めてゆく。プロローグで紹介された対馬勤務の捜査官は、まるでドクター・コトーのような穏やかな鄙びの土地に生きる健康優良児そのものだから、この作品では、都会と離島という対比もよく効いている。
誉田哲也というエンターテインメント作家の、さらなる熟達を感じさせる刑事アクション。本書は、そのまた新たな局面と言っていいだろう。この程度の作品なら、いくらでも書いてしまいそう作家である。であるからこそ、むしろ、もっと重たい素材に挑戦すべき頃合であるのかもしれない。
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ジウシリーズで大活躍した東が登場。
あの事件の後のストーリーですが、ジウシリーズが
もの凄い大袈裟な展開だったんで、やや地味に感じて
しまいがちです...。
あくまでも東はストーリーの主人公ではなく、関わってきますが
こんなキャラだっけ?? と思えるくらいタフなキャラで描かれてます。
プロットは結構スケール大きい割にはなんか小さく
纏まった印象で正直、誉田作品としては物足りない...。
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警察小説。おもしろかった。北の話でちょっとめんどくさくてだらだら読んでたけど、おもしろかった。やっぱり、帯になるセリフはかっこいい。目の前で誰が殺されそうになったら、その時は助けろよ。手ぇ出して足出して、命かけて守れよ。それが警察官ってものだ。絶対も刑事も公安もない。それができない人間に警察官を名乗る資格はない。
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在日朝鮮人が殺害され、
その事件を追う捜査一課の刑事、
その影で暗躍する公安。
国境に近い離島に住む刑事。
北朝鮮や在日二世・三世の現状を描いたハードボイルド。
ちょいと難しいけれどすごくリアルに感じる展開。
ただ、人物描写が弱いかな。
【図書館・初読・8/19読了】
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アウトローな印象の警察小説。いろいろと組織ならでのしがらみがあるようですが。公安って本当にこんななんでしょうか? だとすると怖いなあ。もちろん、必要な組織なんだろうけど。それでも……ねえ?
在日問題も重いですね。どこで生まれたかよりも、どこで育ったか、が重要だと思うのだけれど。そういうわけにもいかないのかなあ。特に「同じ国の人間」に裏切られるというのが、痛い。怖いながらも哀しい話でした。
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何者かが密かに上陸し、不穏な空気漂う長崎県対馬。東京・新宿の片隅で発生した在日朝鮮人殺人事件。捜査を巡り、対立する警視庁捜査一課と公安外事二課。己れの「信じるもの」を追い求め、男たちは国境の島へ向かった…(amazonより抜粋)
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何者かが密かに上陸し、不穏な空気漂う長崎県対馬。東京・新宿の片隅で発生した在日朝鮮人殺人事件。捜査を巡り、対立する警視庁捜査一課と公安外事二課。己れの「信じるもの」を追い求め、男たちは国境の島へ向かった…。 (amazonより抜粋)
内容は重たいものではありましたが、小説として楽しむという観点を重視したら、あまり面白くなかったです。
同じ警察でも全く違う立場に置かれるということは十分わかったんですが、・・・ちょっと微妙でした。
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おなじみの警察もの。ジウの東警部補が主役の一人。主に3人が話す形。
公安のことが結構詳しく出てて、面白かった。公安をここまで表にしたのを読んだのは初めてかも。これは本当なのだろうか。
何でこの人はこのミスとかに入らないのかな。うそばっか書いてんじゃないだろうかって思っちゃう。
しかし、北朝鮮がほんとにこんなだったら、恐ろしい話だ。対馬が舞台だったけど、近さから言えば、新潟、佐渡だって他人事ではない。
最後がいまいち。何で新巻が殺したのかが分からない。全部において、ごちゃごちゃっとして終わった感じ。
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国境事変
大好きな誉田氏の本でしたが読んだ作品で一番つまらなかったですね。
ジウに登場した、東刑事が主役ですが警察内部の問題であり、あまり設定にひかれませんでした。
事件は大きいですが、最後の謎解きも微妙です。
今までの、誉田氏の作品と思えません。
次回に期待します。
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在日韓国人と北朝鮮を主軸とし、警察官3名からの視点で描く警察もの。
視点がくるくると変わるので、冒頭で主役「達」を上手く把握しないと辛い。
ジウシリーズの人が出ているとのことですが、この方の本は初めてなので
そこら辺のことはよくわからず。
ただ、東警部補が好みでした(この方がジウの登場人物らしい)
公安と警察庁、そして地方警察。
北朝鮮と、在日韓国人。
こう言うことも、もしかしたらあるのかもしれないと少し考えさせられた作品。
なんだか、歯がゆい。
ストロベリーナイトにはココロ惹かれませんでしたが、東さんが好みでしたので
ジウシリーズに手をつけてみようかなと思います。
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2011.6.15.
誰が主人公なのかよくわからない 。
事件は壮大なのに、なんか終わりがビミョーな感じ。
在日朝鮮人としての苦悩を抱えながらかなしい最期だった英男くんがかわいそう。
公安と警察ってなんだろう。
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残り1/5で、話が動き出しました
日本より朝鮮半島の方が近いという対馬
こういうことって、実際ありえるかもって思いました
公安がどういう組織なのかがよく分からなくって
アンフェアで言うところの江口洋介?
踊る大捜査線で言うところの暗い部屋にいる人たち?
北朝鮮の一本釣りって言葉も初めて聞いた
参考文献が大量に書いてあったけど
読んでみる気はないなぁ
逆に怖くて読めない 公安のことって知らないほうが良さそう
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読書完了日2008年06月10日。警察庁と警視庁の違いも分からない多賀にはかなりハードルの高いお話でした。もっと色々な本を読んで理解が深まったなら、また違った感じ方があるのかも。
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対馬から始まる話は密航・警察内部・スパイ・公安とどんどん闇の方へ行って頭がこんがらがった。国際政治や警察機関に詳しくないけれど、凄くリアリティがあってホントにこんな構造なのかと思って怖くなってしまった。
出自による逃げられない運命を背負った英男とジレンマを背負う川尻が心が通いあっていたことが救い。
こんな状況、誰も信用できなくなるだろうな。