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ITブームの頃、セレーラなどのバイオテック企業株が月まで上ぼった。その後ITバブルの崩壊に先立って、セクター全体が大暴落を演じたのはまだ記憶に新しいところ。著者はこれはバイオサイエンスが有する構造的な問題だという。ビジネススクールの教官が書いた本で、文中には「アムジェンとJ&J」の対立がほとんど説明なしに出てきたり、ちょっと予備知識がないと難しい。・まず、そもそも方法論を重視するサイエンスと結果を重視するビジネスでは相容れない。バイオのように、成否の予測が極めて困難な、ある種のアートを必要とする分野では安定したリターンを望むのは絶望的に難しい。バイオ株は1944年のシンテックス以降、1976年のジェネンテックまで上場がなかったが、90年代を中心にその後のIPOが激増している。参入の増加によって収益自体は増えているが、利益はほとんど出ておらず、アムジェンを除くと業界全体での利益はマイナスになる。・産学協同が問題で、大学で開発されたあまりに初期の分子・方法だけを元に企業を設立し、資本を集めても成功率が低すぎてリターンが得られないのだという。「たとえ時間を与えても、この産業に大量の果実は実らない」と極めて悲観的な立場が語られる。・統計データからは、資金のある企業は臨床試験を先のフェーズまで進めるが、かならずしもそれで成功の確率があがるわけではないことが読み取られる。(資金があるだけに諦めがつかない)