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紙の本
でくのぼうの城
2010/06/27 21:44
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
のぼうの城 和田竜 小学館
「のぼう」とは、「でくのぼう」の「のぼう」であり、「でくのぼう」とは、城主成田長親(ながちか)氏を指します。城の名前が「忍城(おしじょう)」、現在の埼玉県行田市(ぎょうだし)となっています。最初は、豊臣秀吉の小田原城攻めに取り掛かる場面があるので、のぼうの城は小田原城だと勘違いしました。その記述の前に備中高松城の水攻めの様子が描かれています。秀吉の豪快な水攻めに感動した石田三成は、「忍城(おしじょう)」を水攻めにしますが、大失態を演じてしまいます。なにゆえそうなったかの経過が歴史事実を基に創作されています。
戦闘シーンの記述は、映画「レッド・クリフ」を見ているようでした。ときには、漫画が思い浮かびました。この物語は面白いのですが、でくのぼうである成田長親(ながちか)氏の魅力がいまひとつ足りません。性格がはっきりしないのです。英雄ではあるけれど、強く支持もできないのです。脳に障害があるのだろうかと思うような行動を感じました。物語の流れも、多勢に無勢で敵を倒しつつも最後は悲劇的な滅亡に向かっていくと予想したのですが、そうでもありませんでした。
総じて、勝利のためには、人心をつかむことが大切と教えてくれる物語でした。
紙の本
戦国で優しさを説く
2009/03/22 21:38
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ばー - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこかにいるよねこういうひと。
それがこの『のぼうの城』の主人公、成田長親に対する印象だ。
傍から見ても何を考えているか分からない顔、その顔は決してお世辞にも容姿端麗とは言えず、つまり醜男。背格好は大きく、だが、ただ大きいだけ。機知に富んだ性質ではなく、その言動、姿は百姓にも小馬鹿にされる始末。「でくのぼう」を省略して「のぼう様」。超然としているのか、ただぼーっとしているだけなのか。
ただ、そんな「のぼう様」、成田長親は人気だけは篤い。無論、信頼等ではなく、上下関係、主従関係、などを取っ払った人望。それはまさしく、なにやらよく分からんが現代でもたまーに見かける「しかたねぇなあ、あいつは」である。
長親の為に百姓達が【「しょうがねぇなぁ、あの仁も」】と戦に進んで参戦していったのには、思わず「いいねいいね」と喝采。そして、民を想う長親の策が三成軍を退けたのにも喝采。武士らしい爽やかな終幕には、心がすかっとする。ハリウッド的?ええやん別に。本当に史実かどうか分からんけど、実際忍城は最後まで落城しなかったし。ちょっとぐらいの脚色はええやん別に。この本の場合、要は、その構成や筋書きよりも、「長親のような人物が主人公で、大いに活躍する」ことに意味があるんじゃなかろうか。
理知や力や才ではなく、人望で戦に勝つ。普段は百姓にまで小馬鹿にされるけど、実は思わぬ才を持っている。そこは確かにいい。
私がこの小説をめちゃくちゃ良い!と思ったのは、めちゃくちゃ長親に肩入れしてしまうのは、長親も、長親の周りの人間もとっても優しいからだ。不器用な長親が百姓の手伝いをして失敗ばかりやらかしても、ため息ついて「手伝わなくて良いからそこで見てて」と言う百姓たち。どんだけ愚図でも、友として怒ってくれる馴染みの友人。結局はそこらを含めて人望、隠れた才なのかもしれないが、その優しさは見てて気持ちいいものである。それに応えるかのように、自分の命を賭して戦を終わらせようとする長親。優しさが伝播して広がっていくのが気持ちいい。
峻烈な戦国時代の中の、恐らくは「if」の話だけど、だからこそ良いよね、こういうの、と際立つ。
最近の激烈な世の中には、長親のような潤滑油が必要だ!なんて思ったり。すれてすれてみんな擦り切れてしまいそうな時こそこういう人材が必要なのではあるまいか。理想論だが。
百姓たちは長親に才を見ずとも戦った。臣下の者は長親に才を見ても小馬鹿にした。それは長親の策か、と言われれば答えづらい。それでも長親の、人望を盾に取ったあくどさが全面に出ないのは、長親が愚者であり、愚者であることを自覚した将であるからだ。そこをつけこませる余裕、うーん、無意識なんだろうね。
愚者を装う才人には私はピンとこない。隠れた才を持った本当の愚者の方がいい。しかも「やっぱり馬鹿は馬鹿か」なんてな結末になったら最高である。それは私が愚者であることへの慰めなのかもしれない。だからこそこの物語は痛快なのかもしれない。
長親という一見愚者の才人を描いたこの本は、優しいに溢れるいい物語だった。
紙の本
軽妙な物語
2009/10/29 16:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふぉあぁ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公と個性豊かな脇役達が、まるで映画を見ているかのような軽妙な物語廻しが見事です。
と、裏書きをみたら作者はシナリオライターなのですね。
紙の本
明るく痛快、マンガチック新感覚歴史小説の登場
2011/12/14 15:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新感覚の歴史小説の登場として話題になった本。そもそも映画のシナリオとして書いて、それが賞をもらって、今度は小説化したものらしい。そういえば映画も来年秋に公開されるとか。
素材は、関白秀吉が天下統一の過程、小田原攻めと同時に石田三成の担当で進めた北条傘下の成田氏、忍城攻めで、圧倒的な多勢に対抗して城を守りきった成田方を、城代を務めた成田長親を主人公に描いたもの。
ポイントは2つ。一見愚昧な人物があっと驚く活躍をするパタン。第二は、圧倒的不利を乗り越える少数派の健闘への讃歌。その痛快さ、明るさが新しさとして人気を呼ぶのかもしれない。
この明るさとわかりやすさはマンガ的だ。そこが、そもそも映画のシナリオらしいところで、時間的にも短いし、戦国史の壮大からすれば、ごく小さなエピソードを、コンパクトに描いたところも売りだろう。歴史の重さのようなものはちっとも感じさせない。その点不満と言えば不満だが、話を絞って、家臣団やら敵方を含め(三成がこれだけ魅力を持って描かれるのも珍しいだろう)魅力的な人物群をひたすら痛快に描いてみせた。文章もコンパクトで相当書ける感じだし、楽しめた。が、食い足りない部分を次の作品で試してみたい気持ちは出てくるのではないか。