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病とフットボール エコノミークラス症候群との闘い みんなのレビュー
- 高原 直泰 (著)
- 税込価格:792円(7pt)
- 出版社:角川SSコミュニケーションズ
- 発行年月:2007.12
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新書
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紙の本
病気を抱えながら一流のプロとして戦い続ける気持ちと自信
2008/01/07 22:56
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本のサッカーを代表するフォワードのひとり、高原直泰選手による本。
本の内容は、大きく分けて二つ。ひとつは高原選手の「肺血栓塞栓症」(通称「エコノミークラス症候群」)という病気の話。もうひとつは、高原選手のサッカー選手としての考え方について。
「エコノミークラス症候群」については、名前こそ知っていたが、詳しいことはほとんど知らなかった。特に、一度発症したら、常に再発のリスクがあるという話は衝撃的だった。事実、高原選手は2002年、2004年の2回、病気を発症している。それだけに、高原選手は常に自分の体を気遣いながらプレーを続けている。もしも、それでももう一度発症した場合はサッカー選手を引退する覚悟があるという。なぜなら、「現在は、自分なりに気をつけてやっているので、それでもなってしまうのであれば、もう打つ手がない。(中略)次にまた発症するようであれば、どうしうようもない。自分の命にも徐々に関わってきてしまいますから」(p.45)。
そのような状況の下で、サッカー選手として高い目標を持ち、これまでの選手生活も、現役の今も、引退後のプランもしっかりした計画を考えて行動している高原選手には、強いプロ意識を感じる。例えば、サッカーの強い中学校に通うため、新幹線で通学してサッカーと勉強を両立させたり、1999年のワールドユースに出場した時点で海外でのプレーを考えていたり。また、これまでの自分のプレー、日本代表のプレーについても冷静に分析し、はっきりと意見を述べている。それは例えば、2007年のアジアカップで日本が4位に終わった原因の分析や、これから日本のサッカーのレベルを上げるための考え方(早い段階で相手チームも含めた日本代表の試合スケジュールを決め、できるだけ海外で試合を行うべき)など、あまり現役の選手は口にしない内容も含まれる。これはやはり、自らのプレーや考えに対する自信があってのものなのだろう。
その自信は、2004年8月のアテネオリンピック直前に、病気を理由にメンバーをはずされたことへの怒りにも表れている。2004年5月に、エコノミークラス症候群を再発したことを受けて、日本の医師が高原選手をメンバーからはずすことを決定した。「しかし納得できないのは、最終的に自分を診ていない医師が、一般的な症例をもとに判断したということです」(pp.39-40)。「実際、アテネ五輪が開催されている時期には、復帰してブンデスリーガに出場していましたから。一般的な症例で判断されても、意味がありません。自分はサッカーでメシを食っている、プロのスポーツ選手なのですから」(p.40)。「それに、日本の医師が、診ないで決めるのなら、なぜもっと早く決断してくれなかったのか。不思議で仕方がありませんでした。決断を先延ばしにすることで、チームに多大な迷惑がかかりました」(p.40)。こうした部分にも、病気を抱えながら一流のプロとして戦い続ける気持ちと自信が表れていると思う。
この本の最後に、高原選手はこんなことを言っている。「誰にとっても、人生でこれだけは譲れないということがあるでしょう。/俺にとっては、それがワールドカップです」(p.165)。2002年は病気のために欠場、2006年は怪我のために万全のコンディションで臨めなかった高原選手は、「2010年の南アフリカ・ワールドカップは、俺にとって最後のチャンスになるでしょう」(p.40)と言い、今回のワールドカップには、予選から万全の状態で出場したいと考えている。そのために、「近い将来、日本に戻ってプレーすることも考え始めて」(p.166)いたらしい。この本の中では、現在の所属チーム(ドイツ・ブンデスリーガのフランクフルト)との契約の終了する2009年6月頃がその時期と考えていたようだ。
しかし報道にあったように、高原選手は2008年からJリーグの浦和レッズでプレーすることがほぼ確定したようだ。ワールドカップへの準備が、予定よりも早く始まったことになった。
これからJリーグで、日本代表で、高原選手がどのようなプレーを見せてくれるのか、非常に楽しみである。
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