紙の本
独自の選択眼が光るミステリ・アンソロジー
2009/03/11 18:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
角川文庫の本格ミステリ・アンソロジーでは、有栖川有栖、北村薫、法月綸太郎に続く一冊。密室ものからリドル・ストーリー、幻想SF小説風味の作品まで、「本格ミステリ」を広義に捉えて選ばれた短篇の数々。さすが、色んなミステリ短篇を読み、独自の見識を持っている作家だけに、ユニークで面白いミステリ・アンソロジーになっているなあと、楽しく読ませていただきました。
「リドル・ストーリーの饗宴」の章では、作品を読む前の【解説(前説)】と、読み終えた後の【後説】のふたつが掲載されているんですね。作品のネタをバラさない気遣いと同時に、「というわけで云々」「さて、いかがでしたか」という、「読み終えた今だから話しても大丈夫だよね」とする文章が置かれている。こういうところ、気が利いていて、楽しかったですね。
収録作品のなかでも面白かったのは、次の四編。
◎全編、道化師ずくめの不思議の国の殺人。犯人が分かった後の展開に、特に妙味を感じた・・・・・・ジェイムズ・パウエル「道化の町」
◎集中、随一の名品。さりげない伏線と終盤の展開に、「おおっ!」と唸った・・・・・・P・D・ジェイムズ「大叔母さんの蠅取り紙」
◎リドル・ストーリーの古典三大名作のひとつ。再読になるけれど、やっぱり面白かった・・・・・・クリーヴランド・モフェット「謎のカード」
◎奇妙な味系統の、幻想的な風味のある一品。この短篇を最後に持ってきた編者の勇気を称えたい・・・・・・J・G・バラード「マイナス 1」
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アンソロジーの楽しさを知りました。自分が読んだことのない作家の作品を、各カテゴリ毎に楽しめるのはいいですね。2008/01/06読了
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やはりどれも高水準。漫画だけはどうも好きになれなかったけど、これもパロディと思えばまあまあか。
リドル・ストーリーは「女か虎か」以外にも面白いのは多いんだな……。
「意外な謎と意外な解決の饗宴」は、短いながら切れ味鋭いものが多く、楽しめた。
「密室の競演?(最後の密室)」は、二つともなんともいえない後味。そうきたか……。
「密室の競演?(密室の未来)」のほうは、二つとも本格とは言いがたいが、そういうメガネを外せば面白い。
「幻の作家たちの競演」もなかなか。
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『道化の町』 ジェイムズ・パウエル
道化師たちとマイムたちが暮らす架空の街での事件。誕生日に届けられたパイを投げつけられパイに含まれた毒で死んだ道化師バンコ。彼の周囲にちらつく道化師ワーコの影。住居から引っ越したワーコ。消えてしまったワーコ。ワーコの引っ越しを手伝ったマイム達の秘密。
『ああ無情』 坂口安吾
結城新十郎シリーズ
人力車の車夫が依頼された行李を受け取り中橋家に届けると・・。行李の中の遺体。被害者は中橋英太郎の愛人ヒサと判明。行方不明の中橋。ヒサの元恋人・荒巻敏司。ヒサを暴行した小山田新作。敏司の愛人で剣劇役者の梅沢夢之助。夢之助の母親の愛人であった中橋。ヒサの面倒をみる使用人ヤス。ヤスと敏司の関係。付添途中に消えたヒサ。発見された英太郎の遺体。
『足跡のなぞ』 星新一
殺人事件の現場に残された足跡。エム氏に呼び出された探偵の推理。
『大叔母さんの蠅取り紙』 P・D・ジェイムス
大聖堂参事委員のヒューバート・ボクスデイルから自分の大叔母のアリーにかけられた夫殺害の疑いの真偽を明かして欲しいと依頼されたダルグリーシュ警部。アリーが残した遺産を相続すべきか悩むヒューバート。事件の研究をしている人物から事件当夜の状況を聞くダルクリーシュ警部。事件当夜に現場にいた人物で唯一生き残っている被害者の孫マーガリート・ゴダールへの訪問。ダルグリーシュ警部の語る事件の真相。
『イギリス寒村の謎』 アーサー・ポージス
イギリスの寒村で起きた殺人事件。15人の村人の内12人が異なる殺害方法で殺される。捜査に行き詰ったデュー・イースト警部は素人探偵セロリイ・グリーンに相談を持ち込む。名前と凶器の関係。
『Zの悲劇 僧正殺人事件 グリーン殺人事件』 高信太郎
『〆切だからミステリーでも勉強しよう』 山上たつひこ
『女か虎か』 フランク・R・ストックスン
半未開人の王が支配する国。王の法を破ったものは闘技場で2つの扉を選ばされる。一つは人喰い虎、一つは女性が。虎を選べば死が、女性を選べば結婚と幸せな未来が。王女と恋に落ちた男の刑罰。男に合図を送る王女。王女は女と虎のどちらを教えたのか?
『三日月刀の促進士』
半未開人の王が支配する王国を訪れた王子。王国の女との結婚を望むが目隠しされ促進士と共にある女との結婚を果たす。王が仕掛けたゲーム。40人の女の中から花嫁を見つけられるのか?
『謎のカード』 クリーヴランド・モフェット
アメリカ人のリチャード・バーウェルがパリで出会った女に渡された謎のカード。フランス語で書かれたメッセージ。そのカードを見せるとホテルを追いだされすべての人間に嫌われれしまう。妻にも去られついに謎の女と再会しカードの言葉の意味を訪ねるが・・・。
『謎のカード事件』 エドワード・D・ホック
ジェフリー・ランドが友人の娘ジェンマからの依頼。フランスで彼女が受け取った謎のカード。ホテル、友人の芸術家、警察など彼女がカードを見せるとその場を追いだされる。戦争中の対独レジ���タンスの闘志が使用した暗号。
『最後の答』 ハル・エルスン
オフィスビルのエレベーターに乗ったストックランド。エレベーターボーイの質問。質問の中の矛盾。ストックランドの最期の答は?
『ファレサイ島の奇跡』 乾敦
貿易商ブルーム氏と共にファレサイ島にやってきたブラウン神父とフランボウ。原住民の禁断の地で砂金集めをするシュルツ大佐。禁断の地のつり橋と3つの神像の関係。
『新納の棺』 宮原龍雄
鉄道の中で毒殺された新納ツタ子。1週間の間に4人兄弟の内3人が死ぬ異常事態。生き残った三郎。
『最後で最高の密室』 スティーヴン・バー
リージェンツ・クラブで語られる過去の事件。家族をないがしろにしシルヴァンが引き取った息子ジョナサンを連れ去ったデンバー。密室で殺害されたデンダー。消えたジョナサン。何者かが何かを燃やした暖炉に隠された秘密。
『密室学入門 最後の密室』 土屋隆夫
作家・渡辺流砂に原稿を受け取りにやってきた編集者。流砂に暴行され死んだ恋人への復讐。彼の考え出した密室のアイディアに聞き入る流砂。密室で発見された流砂の遺体。
『真鍮色の密室』 アイザック・アシモフ
悪魔シャープアーと契約を結んだイジード・ウェルビー。10年後に悪魔の幹部候補としてのテストを受ける契約。悪魔が用意した密室。
『マイナス1』
グリーン・ヒル病院から消えた患者ヒントン。担当した医師ですらヒントンの容姿を見たことがない。消えたヒントンの行方。
2009年11月21日購入
2012年7月24日読了
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意外な謎と解決、ミステリ漫画、リドルストーリー、幻の作家、密室、と本格ミステリの様々な側面を切り取って数編ずつ編んだバラエティに富んだアンソロジー。アシモフやバラードも入っているのが面白い。
リドルストーリーの古典「女か虎か」の続編を楽しみにしていたが、それよりも同じくリドルストーリー「謎のカード」の続編をホックが描いた「謎のカード事件」が面白かった。