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自分は特別支援学校の教師である。
その立場から評する。
この本は、第2章「障害児とどう向き合うか」が最も重要かつ一般の人にもわかりやすい部分である。
あとは一般の人にはやや難しいかもしれない。
また浅く広く書かれている箇所があり、LD、ADHD、HFAなどの対応は具体に欠けているし、TEACCHやSSTに関しても、わずかな記述で否定を示している。
せめて学びを深めるための参考文献リストを巻末に載せて欲しかった。
私的には、特に第2章が特別支援教育に携わって初年度に読み、3年後くらいに読み返すと、役に立つと思われる本である。
2008年01月14日読了。
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障害者教育について専門的で、紙幅の関係上それほど概念定義など丁寧にしているわけではないので、初学者が読み進むにはややしんどい感じがしたが、著者の主張と現状の問題点はよく理解できた。前半は障害児の発達権について、後半は発達権を保障する特別ニーズ教育の、とりわけ制度論的問題点を考察した内容になっている。統合教育の理念そのものは結構だが、問題はマンパワー的にも財政的にも裏付けが乏しいなか、特別支援教育への役割期待が大きくなっているということ(地域との連携…etc)。障害者にまつわる教育行政をマクロに理解する上でよい。
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障害が教育に与える影響と、そうした障害を持つ児童と向き合う現場、そして障害児教育を取り巻く今の(やや古い?)日本社会の状況について書いた本。
子供の目線を合わせた教育なんて、ものすごくコストの掛かることだと思う。それでも、ここに取り上げられている実践は感動的だった。第二章が特に良い。
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2011年2月16日読了。特別支援教育を発展させるには何をどうすればよいのか。この問題について読者とともに考えたい、というのが本書執筆の動機である。/障害が子どもの活動に制限を加え、それが諸能力の獲得や価値意識・自己意識の発達にいろいろな影響を与えることも事実である/医学モデル→医学・社会モデル→国際生活機能分類/子どもの場合は、心身の諸能力を獲得し発達していく途上にある。このため、障害は持っていた能力を低下させるというよりは、それらを獲得し発達させていくことを抑制してしまう可能性が高い/うまく経験効果を積んでいくと、知的能力から予想されるよりも高いレベルの技能を社会生活で発揮して適応していく可能性もある/教育によって生命が輝く/「尋ねる」とは、障害児教育においてもっとも大切にされる「子どもに学ぶ」ことと、ほぼ同義なのだといってよいかもしれない/障害児と触れあうことがほとんどないか、それが少ない場合にはー障害児と健常児の共通性に目を向けることができないこともある/こうした行動(かみつきや突き倒し)の奥に「初歩的なコミュニケーションの力を身につけたい」という発達への要求が潜んでいるのだと見ることもできるであろう/知的障害の有無にかかわらず、知的能力の発達に限界があると言えるのである/教育サービスは「場に付く」「人に付く」という区分の仕方がある(我が国は場に付くできた)/イギリスのウォーノック委員会報告く「特別な教育的ニーズ」「特別な教育的措置」「統合教育の原則」→サマランカ声明へ影響/文科省うは通常学級に特別な「学級」を引き続き設置することについて、当初は明らかに消極的・否定的であった/特別支援教育は、それが本格的に発展させられるならあ、子どもの理解においても教育の考え方においても、通常の教育を含む学校教育の全体を、言ってみればスロー・エディケーションの創造に向けて変えていくための絶好の契機を含んでいるのだ、と私は思うのである
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本書が書かれた2007年から始まった特別支援教育が
この2年でどうだったのか
また民主党に政権が移ったこれからはどう変わるのか
気になるところ
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2007年に障害児教育の枠組みが「特殊教育」から「特別支援教育」に移行したことを契機に、これまでの障害児教育の理論や歩みを振り返るとともに、「特別支援教育」の理念と制度、そしてその課題を論じている。
著者は教育心理学や障害児心理学が専門とのことで、内容が理念的・理想的なものにやや傾斜しているような印象を持った。紹介されている障害児教育の実践の内容は非常に興味深いものが多かった。しかし、そういう実践は属人的なものであって、どの教師でもできるものではなさそうという感想も持った。障害児教育は、理想は高くあるべきだが、その実践にはなかなか課題が多いと感じた。
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これから障害児教育を目指す学生、教師、一般の人向けに書かれた本である。
基礎を勉強したい方には読んでもらいたい本。
障害観、子ども理解、権利論、自立支援法など障害児教育全般にかかわる内容を取り上げており、タイトルのように障害児教育について考える本。
集団性、ライフステージ、問題行動の捉え方など実践的な視点に共感できるところがたくさんある。
「すぐに実行すべきなのは研修・研究である」
実践の在り方など勉強したい要求が存在していることをあげ、そこに特別支援教育を高める可能性を見いだしている。
これは常に意識しなければならないこととして、一教員として取り組まなければならないと強く感じた。
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2007年刊行。桜美林大学学群長(専攻は教育心理学・障害児心理学)が、重度・重症の障害児の発達保障を目指す実践・改進等障害児教育の蓄積を素描しつつ、特別支援教育の発展のための必要事項を検討しようとする。個人的には、著者が本文にあげる文献は読破済み。また、著者の強調する特別支援教育の財政的な不備も明らかなこと。だが、教育(特に教科教育)の主たる意義につき職業教育との関連性をやや否定的にみるのは理解しがたい。まず、生きていくための方途を学校で身に付けさせるべきと考えられるからだ。情操教育は家庭でも行いうる。
他方、TEECHプログラムの問題点(学校以外での構造化は不可能で、自閉症に適合した環境調整をすべからく実施するのは非現実的)は、著者指摘のとおりだが、獲得能力の現実社会への応用方法が必要なのに、その具体的な方法論については全く書かれていない。さらには、財政的な不備の是正をどの程度まで図るのか(無限定というわけにもいくまい)、増税は如何、他の教職員給与の切り下げ、年金受給金額の切り下げまで踏み込むのか…。うーん…、本書ではこれらの解決指針は示されておらず、問題提起も十分とは…。
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周囲や自身が当事者というわけではないのですが、こうしたテーマの本を読むと、障害という枠組みそのものについて考えさせられる。障害にはどのようなものがあり、それぞれ程度の差がどれだけあるのか。そのことが、障害児の教育、障害者の社会進出を図る上では外せない、理解すべきテーマとなるでしょう。そして、もうひとつ考えさせられるのがコミュニケーションですね。 障害児教育の変遷、法律の整備すべき点、現場の声など必要な要素が記載されており、10年後の今読んでも色あせない内容だと思います。