サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

ポル・ポト ある悪夢の歴史 みんなのレビュー

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー4件

みんなの評価4.4

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (1件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本

悪の凡庸さについて:カンボジアのケース

2008/02/17 14:12

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:梶谷懐 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ポル・ポト。誰もがあの忌まわしい悲劇と結びつけてその名前を覚えていながら、彼が一体どんな人物なのか、自信を持って語ることのできる人はほとんどいないだろう。この分厚い本を読めば、ポル・ポトという人物の具体的な像が浮かんでくるかというと、残念ながら必ずしもそうではない。読後も強く印象に残るようなエピソードや言動といったものがこの人物についてはそもそも乏しいからだ。本書の大部分は、むしろ複雑極まりない第二次世界大戦後のカンボジア国内の政治状況やインドシナ半島を取り巻く国際情勢の解説などに費やされている。

 もちろん、クメール・ルージュが極端に秘密主義だったため、彼の人物を示す資料や関係者の証言も少ないので、さすがの著者もその実像に迫れていない、という可能性もあるだろう。しかし、いくら資料が出てきても例えば毛沢東とか周恩来、あるいはレーニンやスターリンといった、肯定的にせよ否定的にせよとにかく分かりやすくて感情移入しやすい人物像が描かれる可能性はまずない。そう確信させるだけの力がこの本にある。むしろアレントが『イェルサレムのアイヒマン』で提示したような「悪の凡庸さ」こそがカンボジアの独裁者の特質だった、ということを浮かび上がらせることこそ、本書の持つ最大の意義なのかもしれない。

 山形浩生さんの解説でも触れられているように、著者のフィリップ・ショートはクメール・ルージュ政権下のカンボジアで起こったことは「ジェノサイドではない」という立場をとっている。では、「あの悪夢」は一体なんだったのか。ショートは明確な答えを出すのを慎重に避けているけど、誤解を恐れず言ってしまえば、僕のイメージに浦沢直樹の『MONSTER』で描かれたような、どこかの平和な田舎町が憎悪と殺戮の連鎖に巻き込まれていく恐怖に近いように思う。もちろん、カンボジアのケースと『MONSTER』との違いは、おぞましい悲劇を引き起こしたのがヨハンのような特別な存在=モンスターではなく、徹底して「凡庸な理想主義者たち」であったという点だ。もちろん、その背景としてベトナム人への民族的憎悪、農民の都市民に対する憎悪、旧宗主国フランスやアメリカの自己中で非人道的な振る舞い、著者の言うところの「クメール人気質」・・etcなどのさまざまな「火種」があったことも忘れるわけにはいかない。

 筆舌に尽くしがたい歴史的な悲劇が起こったとき、「モンスター」がそれを引き起こした、という解釈をとることは一番安直な方法で、それゆえ大国の政治的利害のために使われやすい。かといって「凡庸な役者」しか登場しないところになぜあれほどとんでもない悲劇が生じるのか、それを説得力のある道筋をつけて描くのはとても難しい。本書は必ずしもその道筋を分かりやすい形で示しているわけではないが、その代わり膨大な資料収集と丹念な実証的記述によって、少なくとも起こったことを「ありのままに」提示し、「モンスター史観」を葬り去るのにかなりの程度成功しているといえるだろう。口で言うのは簡単なことだが、大変な労力と強靭な精神力を要する仕事だと思う。

 本書の記述からは、時にシニカルな冷徹さが感じられるかもしれない。しかし、国際社会が長い間「支援」してきたカンボジアの現政権の首脳がいずれもクメール・ルージュの生き残りであり、「全く無慈悲で人間的な感情を持ち合わせていない」と評される現実に思いをいたせば、このような冷徹さこそが精一杯誠実な態度なのだ、ということが分かるはずである。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2013/09/27 10:44

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2019/04/02 23:08

投稿元:ブクログ

レビューを見る

3 件中 1 件~ 3 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。