投稿元:
レビューを見る
『丹那殺人事件』。鉄道関係は詳しくないので、丹那(たんな)と言われてもピンと来なかったのですが、来宮神社が出てきたところで、ああ舞台は熱海か、と。作品が書かれた当時は、丹那トンネルの工事関係で有名な地名だったようで。話の途中に展開していくジャケットの問題に対する理論は、これ私の好きな奴でした!
『呪の仮面』雨村の作品は、探偵役がいるにはいますが、リレー形式で活躍するキャラが変わっていくので、ドラマか映画を見ているようですね。冒頭の不思議なフィルムの上映会から始まって、謎の目出し帽男など、乱歩風の怪盗VS名探偵の雰囲気も盛り込んできて、要素満載の作品でした。
後半に収録された随筆からは、編集者「森下雨村」と作家「森下雨村」のスタンスが垣間見えて面白い。そして探偵小説に対する愛と、明治~大正期にかけての探偵小説の変遷を出版関係者からの視点で描いているところも興味深い(後の研究者が文献で調査して云々するのではなく、リアルタムで体感して生きてきた人の言葉という点でも)。
馬場孤蝶が師匠筋に当たる人なのね、というのはちょっとビックリ。そうか……あの当時の出版関係はホントあちこち移籍諸々で繋がりますねぇ。