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日本を代表する作曲家、伊福部昭(1914-2006)による管弦楽法の事典。
一般的に、こうしたタイトルの書籍の中身は「楽器法」に終始し、最後の方に申し訳程度に合奏について書かれているのが常。それに対して本書は、第3編(かつての下巻)で、「管弦楽の共同効果」として、楽器間で起る様々な現象や特性について書かれている。
各章とも、その内容は高度で、高度な作曲技法を学ぶものが本書の対象となるはずである。
日本で、もっとも多く読まれている管弦楽法の書籍はウォルター・ピストンのものであろう。それと比べて、圧倒的な分量と、やはり、第3編が特徴となる。また、最近、再出版されたリムスキー(1912)やベルリオーズ=シュトラウス(1844)のものは、時代的に古いか、地域的に譜例が全くなじみのないものが多い。本書の譜例には、もっとも後発なだけに、近代・現代作曲家のものが多い。
今回、新装版出版にあたり、弟子達も加わり全面的に見直され、2分冊を1冊として装丁している。旧版での活字も新しい活字に置き換えられ、読みやすくなっている。
難点は、とにかく価格。2万5千円!
辞書としての機能はあるが、やはり、作曲専門の学生は熟読する必要もあるので、人生のどこかで決断を迫られる1冊。