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女性警官の物語。たくましさ、繊細さ、ユーモア、どうしようもない時にもどうやって人々が人生を生き抜いているか。
読んでいて涙が出た場面があった。
人が死ぬ、とか、別れ、そういう場面ではなかった。
彼女たちの、汗ばんだ肌の体温と鼓動を、ただ感じ取って泣いた。
犯罪の暗闇、死が存在する世界に足を踏み入れる瞬間、凄惨で、すべての生命がどれほど儚く尊いものかを、この次の瞬間に肌に刻み付けられるような世界。まるで彼女たちに自分が一体化し、その場で息をしているような体験が、そしてこれほど心地よく、なぜか救われる気持ちになるのはなぜだろうと、不思議だった。
きっと、すべての人が、自分の物語を抱いているからなのだろうと思った。
だからこの本は、あらゆる人にとって、自分の過去に寄り添ってくれて、頭を撫でて慈しんでくれるような存在になりうると思う。
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【265冊目】アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀短編賞を受賞した1編を含む10編の短編集。筆者は元女性警察官だということで、アメリカの警察官の日常がかなりのリアリティをもって書かれており、細部の描写などはさすがの一言。
内容はミステリーではなく警察小説。ハードボイルドでもあり、純文学のようでもある。実は硬い筆致の隙間からこぼれ出る登場人物の心のひだをすくうように読むべき本。
僕は前評判ほど傑作だとは思わなかったし、すごく面白い!とも思わなかったけど……苦笑
とはいえ、Black Lives Matter運動がアメリカで盛り上がり、人種差別への抗議が警察批判と混同されているこの時期に、本書を読む意義はある。フレーズにも登録したが、警察官が遭遇する日常は、一般市民の想像もつかないものであり、彼らに襲いかかる悪意は想像を超えて邪悪であり、彼らが放つ銃弾は被弾者とともに発射した者にも相応の覚悟と代償を求める。治安を守る職務に従事する人が主観的に体験する過酷さを、少しは顧みてあげてほしいなとこの小説を読んで感じました。
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心を震わせる10編の小説。事件の謎を追うという意味でミステリだけれど、5人の女性警察官それぞれの葛藤や苦しみや絶望、不安、怒りと諦め、そして祈りがリアルに描かれる。そしてそこに惹きつけられて涙が出てくる。これだけ魂を揺さぶられたらもう十分立派な純文学だ。アメリカでは探偵作家クラブの最優秀短編賞を、日本ではこのミスと文春のランキングで1位となった名作。
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ミステリーというより文学と思って読んだ方がいいかも。前半は正直言って挫折しそうになったけど、最後まで読んでよかった。
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いいねぇ。
ハードボイルドと思わせつつも、文学ちっくというかモヤモヤした描写が入り込んで、この絶妙なバランス。こういう語り口はむしろ日本の小説っぽくもあるけど。いや、むしろ日本にも立場を変えて、警官じゃないっていう場合の小説はいっぱいあるかもしれん。
じゃあ何が良いかって言われると、警官っていう、いや常に拳銃持っててしょっちゅう殺人事件が起きるような環境っていうのはやっぱりあらためてアメリカ怖い、だし、あとは語り口かもしれないし、うまくいかねーぜな登場人物たちが気に入ったからかもだし。
このモヤモヤが好きなのよ。
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短編集。
5人のアメリカ女性警官を主人公にそれぞれの物語が語られる。
ミステリーなんだろうけど、フィクションというよりノンフィクションを読んでいるような感じで、謎やどんでん返しはまったくない。
臨場感というか迫力はあるが、ミステリーとしてとらえるとちょっと違和感がある。