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「国力」会議 保守の底力が日本を一流にする みんなのレビュー
- 浜田 和幸 (責任編集), 麻生 太郎 (著), 石破 茂 (著), 平沼 赳夫 (著), 与謝野 馨 (著)
- 税込価格:1,760円(16pt)
- 出版社:祥伝社
- 発行年月:2008.5
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紙の本
大将と参謀
2009/07/12 17:33
10人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
自民党の重鎮4人によるインタビュー形式の対談となっている。ただし、議論の応酬ではなく質問に答える形によっている。麻生総理がいまだ一議員であった時代の対談である。いまふりかえれば、自民党員が多数で選んだとおり、麻生以外人材がいなかったのである。それは間違いない。他の誰がやってもこれ以上の結果は出なかった。今後、小売業の決算や設備投資、鉱工業生産など指数によっては株は下がるが、これを食い止める力は誰にもない。金をばらまけば、財政不安からもっと株は下がる。
さて、4人の中で群を抜いて見識が高いのは平沼氏である。まことに残念ながら病気で苦しい状態にあったことで総理の座は果てしなく遠のいてしまったが、人材という人材を見渡してみても平沼氏こそが総理大臣の重責に耐えうる筆頭だろう。なんといっても本書で述べるビジョンをみても、氏には明確な国家観というものがある。そして、郵政にかんしても野田聖子のような矮小なる小粒な鼠が次々と自説を曲げ党に復帰する中、唯一最後まで曲げなかった。こういう人は外交が強い。
麻生総理は、日本の可能性に言及している。それはとてつもない日本とほぼ同主旨である。もっと見識が高いかと思ったのだが、最近天皇陛下がいらっしゃらなくても解散できるなどというあほバカ発言をしたという。陛下不在では解散できない。これは憲政の慣習であり、これを破るとはここに麻生の運命は極まった。政治とは権威である。総理といえど歴史と伝統の前にはひれ伏すという態度を示すことは最も権威を保つ手法である。英国議会はかかる権威に溢れている。これは、伝統のある国家しかできない。天皇陛下は伝統の頂点であり、政治がこれを軽んずるのならすなわち自らの首を絞めるのと同じだろう。
石破氏は軍事の見識を披露する。これほどの軍事通なら今の日本がいかに危険な状態かもっと言及してほしかった。日本はいま世界で最もミサイルによる被ばくの可能性が強い。かつてソ連とアメリカはお互いに地球を何個も破壊できるミサイルを有していたにもかかわらず、遂に着弾はなかった。なぜか。簡単である。お互いミサイルをもっていたから。撃たれたら撃ち返す。これをおそれてのこう着状態だったことはもはや定説である。
翻って日本は、北朝鮮と最悪の敵対関係にあり、しかも、北は国家ではなく領土をデブジョンイルが占領しているだけの場所であり、そこに核がある。国家というのはその後の責任があるから容易にミサイルは打てない。しかし、独裁国家でしかもやがて中国か韓国に吸収される以上、責任追及も難しい。もちろん、アメリカの報復がやっぱり怖いから打たないという人もいる。たしかにそれはある。しかし、アメリカはたとえ日本が灰燼に帰しても北に報復ミサイルは撃たない。せいぜい、基地を破壊するだけ。
冷静に考えてほしい。民主国家アメリカが北朝鮮市民2000万をまきこく「報復」など日本のためにするだろうか。絶対に絶対にしない。した瞬間に政権は終焉である。それどころか、アメリカは北に日本へのミサイル発射に暗黙のゴーサインを出す恐れもないではない。MDの価値を誇示し、日本へ費用捻出を迫るためとか、動機はいつでてもおかしくはない。それくらい、他国民の生命など外国にとってはくそほどの価値もないのが現実だ。
石破氏でさえ言及しないが、日本は万難を排してでも対地攻撃ミサイルを持つほかない。北朝鮮が放棄するまでという条件付きでもいい。一刻も早くもたければ、日本の安全はない。それが戦争を避ける逆説的な最も有効で唯一の方法である。
石破氏は将来総理になるかもしれない。本書では石破氏の発言に注目すべきだろう。目は逝っていることもあるが、話の内容は実にリアリスト。少なくともそうあらんとしている。これに平沼氏のような重み(これは歴史への平伏で自然とでてくる。かつて中曽根総理は、「日本のいまの政治家は歴史の勉強が足りない。そして、たとえば休日には茶道に慈しみ、坐禅をする・・というような日本文化への傾倒がない。だから軽んじられる」)といっていた。まさにその通り。政治家はただの実務家としての優秀さだけを見せても絶対にだれも付いてこない。政治家には、権威すなわち「重み」が必須。山本一太、石原知事の長男、前原誠二、石破氏、よさの氏、民主の野田、みんな優秀には違いない。しかし、大将ではない。参謀なのだ。中曽根さんと彼らの違いはそこだろう。石原慎太郎はおそらく本来は参謀である。しかし、この時代本来参謀の石原でさえ最も優秀な大将となってしまう。
要は日本式議院内閣制の限界が最大の原因だが、ここは論考の場所ではない。そういう視点で本書を読むと、総理の器を見極める大きな材料となるに違いない。
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