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著者は錯視を含む幅広い知覚の錯覚現象についての第一人者であり、その解説も興味深いのだが、まずは美術書として眺めていただきたい。不可思議な作品の魅力に引き込まれること間違いなし!
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オクタビオ・オカンポの「パームサンデー」という作品が印象的。
一見、キリストの肖像画に見える。ところが絵に近づくにつれて、髪はれんが造りのアーチ型の門になり、鼻や口は驢馬に乗りエルサレムに入場するキリストの服の皺になり、目は白い服を身にまとった従者2人の顔に姿を変える。
ヨーロッパ起源のカトリック的題材が、大西洋を渡りメキシコの空の下で才能あふれる画家によって新たに多くの意匠が加えられることで、宗教的崇高さと親近感といった、1つの絵画に重ねられた複数の効果が与えられ、見るものの心を、より豊かで安らかなものにしてくれる。
私はオカンポの作品から、美術表現の変異型や特殊型ではなくて、進化型を見出す。
だから、これを「錯視芸術」という特殊ジャンルで一くくりにして、M.C.エッシャーやサルバトール・ダリという名前を出して得意気になってる特定のコレクターやスノッブさ満々の訳知り者だけに鑑賞させるのは、もったいない。
私がオカンポやロブ・ゴンザルヴェスの作品を初めて見たのは、近所の小児科医院で。美術作品に先入観がなく、見たときの驚きや発見の喜びをそのまま心の糧にできる小さな子どもに見せようとする、その病院のセンスはすばらしいと思う。
私はオカンポの作品に魅かれたが、もちろん、この本の収録作品は宗教的題材に限定されない。
サンドロ・デル=プレーテの絵画作品「イルカのメッセージ」は、ガラスの表面に浮かぶ模様が、複数のイルカが海を群れで泳ぐ姿に見えるが、見方を変えれば、男が裸の女を背後から抱擁している姿に見える。ある尼僧の団体がこの作品に猥褻性を見出したのか、作品の展示に対して猛抗議したらしい。でも「人の知覚は過去の経験に基づいています」と言われ、黙るしかなかったそうだ(笑)。
(2012/6/26)
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元々はシンプルなアイデアかもしれないが、それと個々の発想を組み合わせることで素晴らしい作品が生まれる。そのことを見て感じられる本だった。