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保守派が勝ってきたのは、人種差別撤廃の動きに対して反対する人々の票を得てきたから。例えば、元大統領のレーガン(保守)は、福祉をだまし取っている連中が国民の税金を上昇させている、と言うことで、直接人種差別的な発言をすることなくとも、白人有権者たちの人種差別意識をくすぐり、支持を得ることができた。つまり、白人たちが一生懸命はたらいて納めた税金を、貧しい黒人たちが無駄遣いしているよ、というイメージを暗に植え付けることができたと。
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現在のアメリカの格差社会はグローバリゼーションによるものでも技術革新によるものでもなく、アメリカの政策によるものであるというのがクルーグマンの主張。
諸悪の根源はアメリカの人種差別にあり、国民皆保険制度がないのも、累進課税の税制度がないのも黒人やそれ以外の移民への反発が白人の中にあるからで、その人種差別意識を巧みに利用して政権を奪取してきたのが「保守派ムーブメント」が牛耳る共和党であるという。
しかし人口動態の趨勢から非白人の有権者の方が多くなり、白人の中にも人種差別に熱心な者が少なくなり、民主党の時代が来るという。
「オバマ」という名前は本書には一度しか登場しないが、訳者も言っているように「なぜ今オバマなのか?」がわかる非常に時世にあった本だと思う。
これが国際経済学者が書いた本ですからね。すごいですね。
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技術革新が不平等と格差の最大の要因ではない。
中産階級は政治によってつくられなければならない。
平均所得は上昇している→少数の人々がとてもとても裕福になったから⇒上位0.1%の人々の所得は5倍に、上位0.01%の人は7倍に
技術やグローバリゼーションよりも制度と規範がアメリカにおける格差拡大の要因。
極右派の陰謀⇒少数の人々の利害
経済全体は成長していても、賃金と所得中央値が停滞している⇒一般国民の景況感と経済指標の乖離
幅広い中産階級こそが国にとって最も重要。
大きな収入格差は、必ず大きな社会格差を次第にもたらす。
アメリカ人は機会均等が与えられていなく、西洋諸国と比較してもその機会さえ少ない。
民主党は中産階級を生み出し支える制度を守る政党、共和党はそれらの制度を解体しようとしている。
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2008年ノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマンの新著。
大戦後のアメリカ政治史を右派・左派という切り口から分析し、現在のアメリカ経済・社会の様子を解説する。と、聞けば響きは良いが、途中で投げ出してしまった。内容としては興味があるものの、著者のあまりの反共和党政権な口調に辟易してしまった。その政治的立ち位置を抜きにしても、普段目に触れないほどの舌鋒の鋭さでちょっと食傷気味。アメリカ政治史を絡めた分析は、自分にバックグラウンドがあまりないので批判的に読むというよりも眉唾をつけながら読み進める感じ。
しばらく時間を置いて、そう、たとえば2009年オバマ政権になってから読んでも別の知見が得られるかもしれない。
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グローバル経済に関する著書で有名なクルーグマン氏の著作。
内容はアメリカで拡大する貧富差の原因を考察したもの。
・格差の原因はグローバル化による競争激化などではない。
・税制をはじめとする経済政策こそが格差の要因。
・富裕層の支持を受ける共和党が大多数の一般層に対してどうやって支持を得てきたか。
・人種差別、戦争、プロパガンダを利用した政治とその結果。
当然だが内容のほとんどがアメリカに関するもの。
ただ政治に関しては日本と重ね合わせると面白い。
これからの日本はアメリカでいう共和党と民主党、どちらの政策を採っていくのだろうか。
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(2008/10/25読了)日本で言えば、社民党か共産党が書いた自民党(小泉政権)批判くらいの勢いで、共和党に(というかブッシュに?)対して攻撃的な書で、これ書いてる人がノーベル賞かと思うとビックリしました(笑)
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全力で米民主党、オバマ政権を推している方の作品ですが、それも含めてノーベル経済学賞受賞者なので。そもそも「保守」「リベラル」の意味が日本とアメリカじゃ微妙に違うというかなんというか…で最初混乱しましたが(笑)
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来るリベラル派のアメリカは現在の大きな格差を解消し、より平等な民主主義の国をつくれるのか。世界が注目する経済学者が道義にもとる保守勢力の横暴を暴き、真に進歩的な国への道筋を照らし出す。(TRC MARCより)
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読みやすいように少し簡単に書かれているような感じがする。アメリカの富裕層は、低賃金労働者の上に成り立っているという事実が数字を挙げて書かれている。また、政府が自由競争の活性のため大企業からの税金を下げていることが格差を助長していると書かれている。税収の少ない政府は国民保険を崩壊させ、お金の少ない人は医療もまともに受けられない国にしてしまったという事実が述べられている。オバマ新政権に注目する上で、いくつかのヒントが見つかる。
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反-体制!!
クルーグマン!!
個人的には多少の論理は目をつむっても、応援したくなる人だなぁ。。。
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ノーベル経済学賞をとったクルーグマンのエッセイ。
格差は生まれたのではなく政策の失敗によってつくられたという本。現代アメリカは大格差社会ともいえるびっくりするような状況になっていて、それは自由競争だからいいじゃないか?という話ではなくやっぱりよくないよね、という主張。背景には人種差別的なものがあるのではというのがクルーグマンの指摘。
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●読書録未記入 ●未読
◎「世界金融崩壊七つの罪」p.170でも紹介。原題:「リベラルの良心」
〜全ての根源は、アメリカの人種差別問題にあるということである。今でも残る奴隷制度の悪しき遺産、それはアメリカの原罪であり、
それこそが国民に対して保健医療制度を提供していない理由である。先進諸国の大政党の中でアメリカだけが福祉制度を逆行させようと
しているのは、公民権運動に対する白人の反発があるからなのだ。(帯より(第1章:「あの時代の追憶」より。
p.246「訳者あとがき」にも同様の記述あり)
p.54〜55 【南部州の政治家にとっては、貧しい白人に医療を提供するよりも、黒人を白人の病院に入れさせたくないことのほうが
重要であった。】(1964頃トルーマン大統領の頃。白人と黒人の病院は現在と違い分かれていた)
p.122 【「ランボー」(映画)のセリフ:「俺は勝つ為に(ベトナムで)戦った。だが、誰かがそれを邪魔したんだ」
(文民がアメリカ軍の手を縛った為に勝てなかった)
:「空港で俺に唾を吐いて抗議して、俺を人殺し呼ばわりした嫌な連中」
(リベラルな人々が兵士に対し無礼である、という俗説に)
この匕首(あいくち)理論の後に出てきたのが、復讐の空想。↓以下はその流れを受けた映画
「地獄の七人」(1983)・「地獄のヒーロー」(1984)・「ランボー/怒りの脱出」(1985)
→反抗的な兵士がベトナムに舞い戻り、戦争をまた戦い、勝利する
「ランボー/怒りの脱出」前作の精神的に傷ついていたベトナム帰還兵をアクションヒーローとして登場させて成功している。
p.203 ◎「ニューリッチ」(ロバート・フランク)という本の紹介。
〜【今日の富裕層は、彼ら独自のバーチャル国家を造り上げている。…
独自の医療保険システム(高級プライベートドクター)、
旅行のネットワーク(自家用・企業用ジェットの「ネット・ジェット」)や超高級ホテルやリゾートクラブ…、
そして独自の経済といった具合に、彼らはすべてを備えた自分たちだけの世界を築き上げている。
裕福層の人々はさらに裕福になっていったのではない。彼らは次第に経済的によそ者になっていき、国の中にいながら
彼ら独自の社会や経済を造り上げていったのだ。】
p.206 【RDK〜「リッチ・ダム・キッズ」(金持ちの・バカ・息子たち)
P.239 【「メディケア」(高齢者向け医療保障)には「薬代(処方箋薬)」が含まれない。
これは制度開始当時、それほど薬の治療費に占める割合が高くなかったことによるが、医療費の高騰した現在にはそぐわなく
なっている。(高齢者の慢性病や医療の進歩による多額の費用を必要とする高度医療の発達のため)
以下は「訳者あとがき」
p.247 【レーガン大統領の頃、福祉の恩恵を受けていたのは、貧困に喘いでいる黒人や移民たちであり、その福祉の財源と
なっていたのは、白人たちが支払っていた血税だったからだ。
つまり、レーガン大統領が福祉削減を声高に訴えたとき、彼は「小さな政府」の必要性を主張しながら、自分たちの稼いだ
カネを黒人たちが食い物にしていると思い込んでいた白人たちの反発や猜疑心、そしてその根底でうごめいていた
人種差別意識を刺激し、人気を博することができたというわけである。】
p.248 【アメリカ国民全員に健康保険を与える場合、当然、黒人・ヒスパニック・アジア系などの非白人を含むことになり、
それを税金によって一番多く負担する事になるのはアメリカの富裕層である。そのほとんどが白人たちだ。
一部の白人たちにとってそれは到底受け入れ難いものなのだという。
実際アメリカでも過去において国民皆保険が実施されそうになったことがあったが、一部の白人たちが黒人と同じ病院を
使用することに猛反対したために実現できなかったという。
また、レーガン大統領らの保守派が説く「小さな政府」や「富裕層に対する減税」論を聞いて、
なぜこの「レーガノミックス」が支持を集めるのか、長年理解できなかった。
巨額の軍事費増加と同時に大規模な減税を敢行すれば、財政赤字と累積債務が膨れ上がることは明らかであった。
だが、実際のところ、その支持は経済イデオロギーの枠を超え、国民皆医療保険が設立されない理由とほぼ同根の
差別意識に支えられてきた側面が大きかったのである。(アメリカでは1960年代半ばまで、黒人は法律・制度によって
あらゆる差別を受けてきた)
・「white backlash」:「黒人解放運動に反対する白人の反発」
p.250 【「保守派ムーブメント」の成功に不可欠であった「white backlash」:「黒人解放運動に反対する白人の反発」を
基礎とする政治は、2つの理由でその勢いを失いつつある。
1.アメリカの白人人口の減少 2.以前ほど白人が人種差別的でなくなって来ている】
p.254 【クルーグマン教授は「アメリカの経済格差は是正されるべきだ」と本書で主張している。
それは何も人種差別撤廃といった社会正義だけのためではない。
アメリカが最も繁栄したのは政策的に中流社会を生み出したときだった。
したがって、アメリカの経済・社会の発展の為には、再度政治的に貧富の差を是正しなければならないということである。
〜この点は日本にもあてはまるのではないだろうか?】
p.255 【「シッコ」(マイケル・ムーア監督のアメリカの医療状況・問題を扱った映画】
訳者のHP http://homepage3.nifty.com/ymikami/index.htm
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ポール・クルーグマン
ノーベル経済学賞受賞
当月号のクーリエジャポンに寄稿していたので、手に取りました。
アメリカの経済の歴史が大半だった為、殆どは読み飛ばし、
一番最後の第12章とあとがきだけで十分です。
これからの展望で良い
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リーマンショック前に書かれたものであるが、「経済格差が是正されること」「国民皆保険の実施」などの幾度となく説かれていた。
日本に当てはめても、経済格差も政策でつくられたもの、グローバル化で安いものが入ってきて、産業構造が変わって、勝ち組と負け組が生じたといった議論もあるが、国民がそれを是正することを望み、政府が是正する政策を実施ししてきたならば、ここまで経済格差が広がらなかったと考える。
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この本はすごい。原題は "The Conscience of a Liberal (リベラル派の良心)" で、邦題とはずいぶんと違うのだが、日本ではリベラルと言われてもピン! と来ないし、邦題の方が内容を的確に表しているようにも思える。
アメリカに住まない我々日本人にとって、共和党と民主党のイデオロギーの変移や、社会情勢、経済状況の移り変わりは肌感覚としてなかなか分からないのだが、ここ 100 年ほどの変化をこの一冊で読み取ることができる。
2008 年にノーベル経済学賞を受賞しているポール・クルーグマン教授が本書で綴る驚きの真実は、経済格差は広がっていることと、それは技術革新やグローバリゼーションがもたらした結果ではないということ。では、経済格差の原因はどこにあるのか? それは人種差別という負の遺産の影響を活かし続けた共和党の戦略にある。すなわち、誤った政策のために "格差はつくられた" と。それが真実かどうかは、本書を読んで確認していただきたい。
もっとも、ことはアメリカの事情である。ポール・クルーグマン教授は、国民皆保険の導入について,本書で多くのページを割いているのだが、既に国民皆保険が導入されている日本に住む我々にとって、本書から学べることは少ないような気もする。私が本書が綴る歴史から学んだことは、選挙の重要性だ。人種差別時代は選挙権を持たない多くの人たちの問題は解決されることがなかった。その後も根底に燻る人種差別意識をうまく利用し、投票を妨害するなどの戦略をもって、白人富裕層に有利な社会として発展を続けたのが大きな潮流とのことだが、これを投票率の低い日本に当てはめると、投票率の高い一部の人に有利な (そして全体としてはマイナスとなる) 方向に社会が傾倒しているであろうことが想像できる。経済学者ではない私には、ここまでの日本の状況を端的に語ることはできないのだが…。
閑話休題。
最後に、ポール・クルーグマン教授の著書は、その肩書きから想像するのとは違って、めちゃめちゃ読みやすいことを伝えておきたい。一般書だからということもあるのだろうが、マルクスだのなんだの…難しい経済学の常識を前提知識としていなことと、平易な文体であることが大きいと思う。もちろん、日本語で読んでいるので翻訳者の方の尽力のお陰でもある。どうやって "格差は作られた" のか? その謎に興味があったら、「経済なんて難しそうだし、まして教授が書いた本なんて…」というアレルギーは無用だ。遠慮なく手に取って、謎に迫っていただきたい。