紙の本
82ページから、世界が加速を始める
2008/07/05 00:05
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
長嶋有氏の長編小説。高校の図書部を舞台に、部員たちを中心とした学校内の人物に起こる出来事を描いている。
まず、部室という舞台の特異性がうまく使われている。廊下や校庭のように、学校内の人間が無制限に行き来する場所ではなく、また教室のように、決まった人物だけが存在する場所でもない。部員という、学年もクラスも違うが互いに知っている集団の中で、その時に応じて何人かの人間が集まる場所。だから、そこにいる人間の組み合わせで、色々なドラマが起こる。
さらにこの部室が特徴的なのは、図書室の一部をベニヤ板で区切ったスペースである、ということ。一般的な部室よりも、外部との境があるようでないようで、外の人間を意識する場面も多く、それが部員という集団を刺激して、様々な出来事を起こす。
そして、元々月刊連載されたという形式のためか、途中から物語の雰囲気が変わってくる面白さも感じた。はじめは、良くも悪くものほほんとして、だらだらとした空気が漂うのだが、途中で急に小説の世界の動きが加速していく。具体的には82ページ。ここで、部員の一人の様子が変化する。この場面も印象に残るのだが、そこから先、それぞれの人物の隠れていた部分がちょっとずつ見えてくるようになったり、それまで存在感がなかった人物が急にはっきりと見え出してきたりする。まさにタイトルどおり、みんな落ち着きがなくなる。
私は連載中は途中一回しか読んでおらず、今回改めて読んだのだが、例えるなら伝説的コンサートのライブ盤CDを聴いた時と同じ思いを持った。改めて読んでも面白い(ライブ盤でも素晴らしさを追体験できる)のだが、できることなら連載を追いかけて読むべきだった(コンサートの会場に居たかった)という気持ちも抱いた。
小説が何重もの構造になっていくのも、興味深かった。部員の日常の物語の中に、別の物語が登場することもあるし、架空・実在の小説が話題に上ったりもする。また、もうひとつ上の目線を感じる部分もある。こうした、物語の目線が上下に移動する感覚も、長嶋氏の作品の中では新鮮だった。
それから、小説の最後で小説の世界が閉じていないのも、私にとっては嬉しかった。もちろん、最後にどんでん返しがあるのも、うまくまとまって終わるのも、私は好きです。でもこの小説は、ラストの閉じていない感じ(開放感、とは違う)が好ましく感じた。部員達の人生の中の、高校の部活動という時間を垣間見たというか、自分もそこにいた気分になれた。
あとは、長嶋氏の小説の魅力である、細かな場面やセリフの面白さも充分に堪能できた。高校の校歌に「チェリーブラッサム」(p.106)という歌詞があるらしいとか、作中に登場する小説に対する「大学ノートに一気に書いてあったらもっと似合う小説」(p.181)という評価とか。
投稿元:
レビューを見る
うわあなんだこれっていう、うっわなにこれ、っておもう 新しくて読み終わって途方にくれてちょっと笑った まさしく落ち着きがなく、散漫!!!!! 読みたいものかどうか内容がどうとかこうとかいうより散漫すぎて本を読んだかどうかもあやふやになりそう・・・ これはおもしろいのでこういう風にしていようっと 意識の中に入ったり日常に出てきたりというのはこのくらい散漫なんだろうか!そしてそれが人それぞれになっていくとこんなにもとっちらかっているのだろうか!特に家に帰った後の私の心の中のあれこれってのが書いてないのでよりそういう感が強いかなあと思う 本を読んでいるときでさえ視線があっちこっちいって散漫になり、全然長編を読んだ気がしない ものすごくほめてる、あたらしいおもしろい こういうのがでーんとでるだけでもおもしろいもんなー 長編と問いかけたときに絶妙のまっとうでどうでもいい返答が帰ってきたような気がする あと個人的にわたしは図書委員だったことが結構あるけど図書部がなかったために図書委員は結構人気でちょっとおたっぽかった。本を読む人の中ではどうしてこうもちがうのだろうと思っていたけど、それはそのまま書いてあってちょっと面白かった。
投稿元:
レビューを見る
ハードカバー買ったの久しぶり。これから。
↓
その後1年以上の歳月を経て、人生史上最悪の誕生日に一気読み。
昼の部。
投稿元:
レビューを見る
部室のあの閉じられた感じ、部内だけの流行り、あだ名。
高校時代部活にきちんと通った人ならわかるはず、この感覚。
長嶋有さんとは同い年なので「そうそうそう!」と思う。でも描かれているのは現代なので自分がリアルタイムで読んでいたものが「昔の漫画」などとして表現されているとものすごく不思議な気持ちになります。
どの世代にも属さない、でもどの世代でも「ああ」と納得して読める内輪の世界を描いた部活小説なのかもしれません。
ところで表紙裏に登場人物のその後がぎっしり書かれているというのを本日書店のPOPで知りました。
これから読みます。
投稿元:
レビューを見る
図書部に属すると云うことは普通の子等とは一線を置くことなのかもしれない。だけども図書部に属することは、楽になるのかもしれない。薄っぺらい一枚のベニヤ板ではあるけれども、図書部に属すると云うことは、ベニヤの向う側の安住の地を獲得することが出来たのだから。でも、いつかはその場も越えて、成長していくことも必要な事を知るのだから。 図書委員とは又別次元の図書部。
投稿元:
レビューを見る
ベニヤ板で仕切られた図書館の一角にある「図書部」そこに所属する面々のお話。
文化系小説(?)らしい独特の明るいテンションで話が進んでいきますが、不登校や人間関係の悩みなど、複雑な問題もからんでいます。
こんな部活あったらいいのにな、と思いました。
ただ、登場人物が多いわりにあまりスポットが当らないまま終わってしまったり、もう少しそこ知りたいのに!っていうところもあったので、ちょっと残念でした。
続編があったらよかったのにな、と。
投稿元:
レビューを見る
あらすじ
とある高校の図書室。
その端のベニヤ板で区切られた空間が、図書部の部室になっている。
そこでダベる部員たちの、何かが起こったり起こらなかったりする日常。
感想
文化系の部活っていいな。その中でも文学少女や氷菓とはまた違った、緩やかな友情。
それと、F1の例え(読めばわかります)を読んだときは何だか清清しかった。
一方で、この本の主題は「残念さ」じゃないかと勝手に思ってます。
自分たちではどうにもならないこともあるという。
面白い所も色々とありますが、カバー裏に書かれた後日談は・・・
投稿元:
レビューを見る
カバー裏も読まないと読みきった感じがしない。
まさに落ち着きがない。
ナス先輩はあれ、すごい才能だと思うのだけれど
投稿元:
レビューを見る
なんだか知っている人のことが描かれているようなそんな近い感じがしました。わたしは本を読む時カバーをはずして読むのですが、はずしてよかった★←ね。
投稿元:
レビューを見る
とある高校の図書部の話。
ほぼ図書室と図書室の脇にある図書部の部室が舞台になっている。
いやあ、前半特にゆるかった(笑)
「無為に過ごした十代」
よーく解ります。青春って実はこんなもんだったりするのだ。
これは、十代の時に読みたかったなあ。
投稿元:
レビューを見る
著者自身が、「若者向けだけど、大人になってから読んでも楽しめる小説」と語っていた一冊。本当にそのとおり。ものすごく読みやすい文章だけれど、やっぱり長嶋さんらしい!と嬉しくなることばに溢れていて、いろんなことばを頭の中にメモ。長嶋さんの文章、リズム、あのうまく言葉にできない気持ちやものごとをそのまま説明しちゃう感じがたまらなく好きです。
投稿元:
レビューを見る
人って、生きにくいものだ。
みんなみんな、本当の気持ちを言っているのかな?
青春小説の金字塔、
島田雅彦『僕は模造人間』('86年)
山田詠美『ぼくは勉強ができない』('93年)
偉大なる二作に(勝手に)つづく、'00年代の『ぼくは~』シリーズとも言うべき最新作!
投稿元:
レビューを見る
初めて読む作家だとしたら★★★★☆かなとは思うんだけど、長嶋有であれば・・・・という感じでしょうか。ツボが面ではなく点なのが残念。常に面なのは前田司郎です。
投稿元:
レビューを見る
なーんか語り手が気に喰わない
なんでかなー?って考えた時
考え方が自分に似ているからだと言うことに気付いた
うむ…
投稿元:
レビューを見る
高校の「図書部」を舞台にした青春物語。活動は地味だが、高校生特有の会話のノリとか面白い。高校三年間ってほんと一瞬。当時はなにげなく過ごしていることが、大人になってすごく貴重に思えたりするんだろうなあ。