紙の本
彼らのコンゲームは成功するだろうかとハラハラする読者を完全に騙すこのテクニック!!!
2010/08/22 22:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
道尾秀介で期待した『光媒の花』はいささか拍子抜けであった。この二冊目『カラスの親指』がなんとなくコンゲームの傑作『スティング』のように見えたものだから「最高の逆転劇」を楽しもうと手にした。
詐欺師である中年二人の同居生活。ここに掏摸師である少女が舞い込む。さらに彼女の姉とそのボーイフレンドの奇術師が押しかけて、五人の同居生活が始まる。中年の二人と姉妹の家族は悪質な金融業者の犠牲になっている。この五人は社会から疎外されたものであるが、最近の小説の風潮なのだろうか、あまり悲惨さは感じられない。前途を悲観することなくむしろ軽いノリのおとぼけで今を生きられている。そして物語の三分の二はこの五人の饒舌とギャグで埋まっているから、バラエティ番組に多い、若手の芸人同士の一発芸の競いあいを見ているようで、読み飛ばしたくなるほど退屈であった………と感じた………?!?!。
彼らはついに取立て屋の組織に一泡吹かせようと立ち上がる。詐欺師と掏摸師と奇術師である。役者はそろった。まさにコンゲームの開始である。
ここからが目を離せなくなった。
そして逆転、逆転の展開。
さらに読者をペテンにかける論理性は見事である。
退屈そうに見えたところを含めて、たぶん細部までつじつまが合っているということだ。
軽妙な語り口がミソだからリアル感はない。
登場人物の気の毒な過去も今の社会には日常茶飯事の出来事だから平板である。親子の絆が大切だとか、詐欺師は所詮悪だとか、その程度のメッセージで価値があがる作品ではない。
肝心なこと、ラストの大技で読者が騙される快感を味わうことができれば、それがこのタイプのミステリーの真骨頂なのだ。
このようなトリックだけで読ませる作品については、昔は読後に伏線の細部に潜ませた論理の一貫性を検証したものだった。たぶん10年前に読んでいれば退屈に読み飛ばしたところを再読してなるほどと感心し、その納得があることで、スッキリと騙されたであろう。
ただ、年寄りだからここまで伏線が複雑すぎると、知力・体力・好奇心の衰えから検証する気持ちになれなかったのだ。
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妻との関係、借金から身を持ち崩して詐欺師になってしまった男が二人。そこに女2人と変な男が一人加わって、物語は一気に加速する。人生を賭けた詐欺ゲームの行方を楽しむのだがこれが楽しい。嵌めたと思ったら、先読みをされていたり、偶然の出会いに支配された進行が実はて仕込まれていたりと、どこまでも読者をだまし続ける。
違和感がところどこに、この雑さはこの作家には珍しい。と思っていたら、全てが計算。どんでん返しが悔しいけど、楽しい。
人物描写もストーリー展開も俊逸。
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読んでいる途中ぽつぽつとあれ?と思う場面があったのですが、不自然な流れではなかったので読み進めていくと、結末にその答えがしっかりありました。ヒューマンドラマを描いた作品かと。
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最終章に至るまでは「えらいご都合主義のコンゲームやなぁ」というのが正直な感想。でも、最後の章で目から鱗が落ちます(笑。あちこちに仕掛けられた伏線を読み逃さず、あなたは真相にたどりつけますか?
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「こうしていると、家族みたいですよね」
という広告から期待していたけれど、擬似家族モノとしては今ひとつ。
道尾作品のトリックとしても、もうひとつ足りない。
物語はおもしろいし、すごく満足だけれども、期待していた分少し物足りない部分も。
向日葵、片眼並みの驚きを求めてます。
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またもやサイン本に食いつき、『story seller』を読んで以来、いつかは手に取ろうと思っていた道尾さんの作品を初めて読むに至った。
本編にも出てきたまさに詐欺師のような(良い意味で)小説家との前評判に終始疑りの目で活字を追っていたけれど、絶対これは見抜けないよ・・・。素晴らしい!!
読後感はこの伏線の回収だけではなく、前半に見られた惨さからの解放による暖かさ、人の持つべき在り方などからとてもすっきりしたものだった。
帯の「大丈夫。まだ、間に合うから。」ってのがこの小説を良く現しているなと感じる。
前半は、ただ面白い小説を読みたいならこれもいいかなとあまり評価できなかったけれど全てが伏線だったのだと分かった今は素晴らしい小説だったとただただ言うしかない。 カラスの苦労に気付けた気がする。
(2008.08.22)
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『流星の絆』でも違和感が残ったが、詐欺やローン返済にまつわるテーマは、ハッピーエンドでは終わらない現実の方に気持ちが傾いてしまう。
だから、軽い読み物なのだが心から楽しむことはできなかった。
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2月14日読了
ふたりの詐欺師がある日ある少女と共同生活をすることになり、そしてさらに人数が増え、彼らは過去と決着をつけるためにとある大きな計画をたてることに。。。
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伏線回収しすぎ。
主役二人のやりとりが神すぎる。
ラストがこれほどまでに心に残るのも珍しい。
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読み終えた後に
びっくりしました
騙されたのにあったかくなる作品でした
最近サギとか借金系の話ばっかり読んでる気がします(笑
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スリリングな内容で一気に駆け抜け、さらにどんでん返しが!!
途中ツライ部分と解けてない謎に、んん?と思ってたけど最後にスッキリしました。
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詐欺師の中年ふたりとひとりの少女。奇妙な同居が始まった。
ラストまで見事なオチでした。救いのある感じでほんとよかった…。辛いけど、最後はほんわりとした気持ちになれるお話でした。
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ふとした事から同僚の借金の保証人になったことで
返済に翻弄され、あちこちの消費者金融から借りるうち
思わぬ落とし穴に、会社も辞めざるを得なくなり
一人娘との平穏を取り戻すため
やがて、ヤミ金業者のヒグチという人物から取り立ての
仕事を持ちかけられ裏社会に身を落とした竹沢(あだ名:タケさん)
母子家庭の女性を自殺に追い込んでしまい心に負い目を感じ
挙句は、組織の機密種類を盗み出し警察に駆け込む。
捜査と摘発で壊滅するが、それによって、組織による仕業と思われる
報復で娘を死に追いやってしまうのである
そんな彼のアパートのドアの鍵穴に細工した事を見抜いた竹沢は、
同じ手口で錠の交換をさせ小金を稼いでいた常習犯と思われる
妻を亡くしたという鍵屋の入川鉄巳と出会うきっかけとなり
通称テツさんは、竹沢のアパートに転がり込むことに。
人生の辛酸を味わっている二人の中年男の前に、
スリで生活を支える曰くありげなまひろという少女が現れる。
スリが失敗した現場に遭遇し同業者のよしみなのか、
彼女を助けたことが縁で
家賃が滞り住まいを追い出される羽目になったまひろの同居人である
姉・やひろに、やひろの彼氏で売れないマジシャン・貫太郎と3人
が結局、竹沢のアパートに・・・こうして5人の奇妙な共同生活が始まるのである。
だが、摘発された筈のヤミ金のヒグチ、債務整理屋の謎の男など怪しい影がつきまとい
住まいを放火される、とか何者かがゴルフクラブを持って部屋に押し入るとか
危険な目にあい、怯える日々遂に、
彼らは、それぞれの再出発を決意し、リベンジに打って出ようと
アルバトロスという大胆な得意技を使った作戦を仕掛けるのだが・・・・。
世の中には、ファミレスとかで食事していてもメールをしてたり、それぞれが勝手気ままに
、他人のような家族があったり、だったら家族のような他人がいてもいいのではないか・・・と
この作品を描いた経緯を著者はあるTV番組で語ってた。
ちなみに、タイトルのカラスの親指について
カラスとは玄人、詐欺師のプロだという意味合いのことがラストで触れられる。
いくつもの伏線が散りばめられ一転、二転するドンデン返しに
ずんずんと惹かれていく。
古典的な詐欺の手口も読みどころかも。
HERON,BULLFINCH,・・・と各6章が英語になっていたり
テツさんが使う英単語や
登場人物たちの名前、詐欺に扮する際の名前がアナグラムという
まさにクロスワードパズルのような謎解きも面白さがあり
一つのキーワードになっている
読み終えて、結末の意外性に何だこれは・・と
狐につままれたように騙されていたことに気づくのだが
薫風のような心地よい読後感である
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☆4点! 相変わらずうまいですね〜。後半の詐欺を仕掛けるところの読み応えが! ぐいぐい行きました。
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なんとも…すっきりしたのかしないのか…しっくりこないと言うのが読み終えた正直な感想。
ストーリーはさまざまな付箋によって「ああ、なるほど!」と読み勧めるのには、面白かったのですが、まったくの凶悪ストーリーならば割り切れることも、“善人だけど仕事は詐欺師”というのが全編にわたって私の中にわだかまりとしてあったのです。
最終的には、大どんでん返しによって、美しい結末で終わるりストーリーも、ドラマとして「できすぎだろ!」と思うのはスッキリ系でいいとしても、
それでもやっぱり詐欺師じゃん…と…真面目すぎ?笑
テンポ、展開はすごくよかったので、高い評価を…とも思うのですが、どうしても “悪者になりきれなかったけど詐欺師だった過去” にマイナスかな。
主人公のタケさんも「どうにもひっかることがいくつかある。」と言っていましたが、私も同じく!です。
これが本物の悪党物語なら、行け行けどんどんなんだけど…でも、それじゃあこの物語そのものが成立しないのね。
ん〜どちらを評価すべきか、それが問題だ。