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無数の時計が配置された不思議な回廊。その閉ざされた施設の中の時計はすべて、たった一つの例外もなく異なった時を刻んでいた。すなわち、一分ずつ違った、一日二四時間の時を示す一四四〇個の時計――。正確な時間を示すのは、その中のただ一つ。夜とも昼とも知れぬ異様な空間から脱出する条件は、六時間以内にその“正しい時計”を見つけ出すことだった!? 神の下すがごとき命題に挑む唯一の武器は論理(ロジック)。奇跡の解答にはいかにして辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎! 名手が放つ本格ミステリ・コレクション! (アマゾン抜粋)
1998年から2008年にかけて書かれた非シリーズ短編集です。さすがロジックの法月さん!久々にワクワクした気持でミステリを読むことができました。
以下は覚書。
「使用中」
スタンリィ・エリンの「決断の時」を下敷きにしたスラップスティック・コント。作家と編集者とウエイトレスのそれぞれの心のうちは・・・?
「ダブル・プレイ」
妻を殺しい夫と、金持ちのおじを殺したい男との交換殺人ミステリ。幾重にも伏線が張られていて、最後に笑うのがだれなのかを読み解く楽しさがあります。
「素人芸」
浪費癖が止まらない妻を思いあまって殺してしまった夫。さわぎを聞きつけ隣人が通報したのち、警官が家にやってきてしまう。妻が最後に購入した腹話術の人形を使い、なんとかその場をやり過ごそうとするのだが・・・。ラストは落語のオチのようで、ブラックかつほのぼの。
「盗まれた手紙」
暗号ミステリ。ボルヘスの「死とコンパス」に出てくる名探偵、エリック・ランロットが主人公。ボルヘス作品の前日譚と言う体裁のパスティーシュ。某国将軍の若き妻が書いた、不倫の恋文。それを二重の暗号にくるんで運んだはずなのに、それが敵性勢力の手に渡ってしまい・・・。ランロットはその謎を解くことができるのか?宿敵シャルラッハとの決着は?
「イン・メモリアム」
かなりの短さのショートショート。文学界に伝わる〈評議会〉の存在の噂。そこでは存命中の高名な作家の追悼文を発表する奇妙なコンペが行われるらしい。生意気盛りの若き作家が、憧れの先生の追悼文を書いたのち、本当に死んでしまったのは偶然なのか?そして今書かれつつある追悼文は・・・。
「猫の巡礼」
一生に一度、猫が巡礼をする俗信がある世界の物語。飼い猫みどろが心配する飼い主をよそに、無事に巡礼を終えるまでのお話。うーん、これはミステリなのか少し疑問。
「四色問題」
都筑道夫氏の「退職刑事」シリーズのパスティーシュ。安楽椅子探偵という形で、退職した刑事が〈犯人に刺されたあとに自分の手首を切る〉というダイイング・メッセージの謎を解くという趣向。心電図検査の語呂合わせなんてよく持ち出してきたなぁ、びっくり。
「幽霊をやとった女」
これも都筑氏の「酔いどれ探偵クォート・ギャロン」シリーズのパスティーシュ。妻に逃げられたおちぶれ探偵の上着は、なぜ火をつけられたのか?夫の様子がおかしいと、心配する妻の依頼の裏に潜む謎は・・・。
「しらみつぶしの時計」
表題作。タイトルは都筑氏の「やぶにらみの時計」のもじり。ロジックの法月の本骨頂を味わえる良作。
「トゥ・オブ・アス」
「二の悲劇」の原型となったデモ・バージョン。京大ミステリ研の機関誌にに書いた「二人の失楽園」を改題。
卒業後に再び出会った恋人たちがはまってしまった心の迷路。言い出せなかった言葉は、ふたつの死をうみ、ひとつの心を壊した・・・。
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法月綸太郎の短編集。
個人的には表題作『しらみつぶしの時計』と
『素人芸』が好きです。
『しらみつぶしの時計』の最後は 成る程っ!!と思えた。
面白かったです。
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法月さん単独の著作は実に5年ぶりでした。
評判がよいので読んでみようと思い手に取ったのですが、ハードカバーで2008年に出版されたものをノベルス版でこのたび発売された作品だったようです。
「使用中」「ダブル・プレイ」「素人芸」「盗まれた手紙」「イン・メモリアム」「猫の巡礼」「四色問題」「幽霊をやとった女」「しらみつぶしの時計」「トゥ・オブ・アス」の10編収録。
どれも、さすが、というしか言いようのない作品ばかりで、今のところ今年読んだ作品のなかでは一番。
特に表題作のロジックには頭がクラクラ。
1日24時間、1分ずつ違った時を示す1440個の時計の中から、ただ一つ正確な時を刻む時計を見つけ出す方法。
よく考え付くなぁ。
あと、リドルストーリーの「使用中」も面白かった。
「盗まれた手紙」の錠についても、なるほど!でした。
探偵「法月綸太郎」が登場しない、非シリーズものだったから逆に楽しめたのかな。
あまり読んでいないのですが、読んだ作品での法月探偵の迷走っぷりにはイライラさせられた覚えがあるので・・・。
でもやっぱりさすが法月センセ。楽しませていただきました。
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全10篇が収められた短編集。全体的な印象は雑多な感じ。できればもう少し統一感を出してほしかったなぁ。「使用中」トイレに駆け込んだ男性を用意周到絞殺したまではよかったが、現場から立ち去ったあと、証拠を残して来てしまった犯人。果たして…。出るべきか閉じこもるべきか、ジレンマがらみの変則的な密室もの(といっていいのか)。「ダブル・プレイ」最悪の夫婦仲、夫が喧嘩して出かけた先で交換殺人の話を持ちかけられる。さっと読んだだけだと夫の交換殺人の裏で行われていた交換の真相の形がすぐにはわからなかったが、なかなか面白い。「素人芸」衝動的に妻を自宅で殺害してしまった夫。隣人の通報で警官がかけつける。一応ホラーテイスト?「盗まれた手紙」2重鍵を使った手紙のやり取り、それを逆手に取った盗みの手法が面白かった。「イン・メモリアム」存命中の作家の追悼文を書くことが入会の条件という組織、評議会。わずか4ページの超短編。「猫の巡礼」ある程度の年齢に達した猫が聖地を訪れる巡礼。飼い猫を巡礼に行かせるか悩む飼い主夫婦の心の葛藤。ミステリアスな話だけど…異色な作品。ミステリではない。「四色問題」ダイイング・メッセージもの。専門的な知識がないとちょっと解けない。なるほどとは思ったけれど。この内容で「四色問題」というタイトルはいかがなものか。「幽霊をやとった女」パスティーシュものらしい。落ちぶれた元私立探偵クオード・ギャロンのもとに依頼人が現れる。そのねらいとは…。「しらみつぶしの時計」1440個の時計の中から正確な時間を示す時計を見つけ出さなければ閉ざされた部屋から出られない。最後の2個まで絞り込むロジカルな過程が緊迫感を伴っていて面白かった。オチでガクっときたけど。やっと法月作品らしいと思える作品がでてきて安心した。「トゥ・オブ・アス」探偵・法月綸太郎の長編『二の悲劇』の原型。『二の悲劇』は既読だったが、短くまとまったこの作品の方が凝縮されてて自分は好み。
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表題の作品は論理的に現在の時間を指す時計を見つける、という作品ながら、最後はオチがついての解決で、いまいち。その他の作品もテキトーでつまらなかった。
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いくつか別の単行本で読んだことのある話も多かったけど、短編集ながら読み応えがあって面白かった。自分が時計だらけの部屋に入っても絶対に解けないと思う…。面白かったのは「使用中」「しらみつぶしの時計」「トゥ・オブ・アス」でした。
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表題作、「トゥ・オブ・アス」は及第だが、後は、掲載が後回しになるのもわかるように出来は良くない。どうしてもこの作者には愚直な新本格を求めてしまう。5.5
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法月氏のノンシリーズもの。
面白かったが、文体というか、ミステリ以外の部分に微妙に引っかかりを覚えたのだけれど…昔からそうだったのかしら?
『二の悲劇』のプロトタイプ『トゥ・オブ・アス』が面白かった。
表題作も結構好き。
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無数の時計が配置された不思議な回廊。その閉ざされた施設の中の時計はすべて、たった一つの例外もなく異なった時を刻んでいた。すなわち、一分ずつ違った、一日二四時間の時を示す一四四〇個の時計―。正確な時間を示すのは、その中のただ一つ。夜とも昼とも知れぬ異様な空間から脱出する条件は、六時間以内にその“正しい時計”を見つけ出すことだった!?神の下すがごとき命題に挑む唯一の武器は論理。奇跡の解答にはいかにして辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎、!名手が放つ本格ミステリ・コレクション。
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表題作のほか、「使用中」 「ダブル・プレイ」 「素人芸」 「盗まれた手紙」 「イン・メモリアム」 「猫の巡礼」 「四色問題」 「幽霊をやとった女」 「トゥ・オブ・アス」
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表題作は、夥しい時計に囲まれ、刻一刻と過ぎていく時間との闘いにドキドキハラハラさせられた。ラストに思わず頬が緩んだ。こういう趣向は嫌いではない。全体にバラエティに富んでいて、先へ先へと興味を向かわせる一冊である。
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うーん。帯には「見よ、本格の真髄を!名手が仕掛ける極限の推理」と謳われているのだけど、実際はショートショートだったり、本格じゃない作品が入っていたりする。
「ダブル・プレイ」「素人芸」「盗まれた手紙」「しらみつぶしの時計」は面白かった。それ以外はあんまり。やはり法月先生には愚直な本格を期待してしまう。
ただ「二の悲劇」の原型が読めるのと、最後に一作づつの著者解説が付いてるのが嬉しかった。
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寄せ集め短編集。
実は読み終わってない。半分ほど読んで。やめて図書館に返した。
アイディア(トリック)はいいんだけど、小説になりそこねた感じの短編ばかりで。奇抜なトリックに、ほうと膝を打ちたいわけではないので。
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長編だと信じてたら短編でしたw 内容としては、一つの主題や流れを汲んだ短編ではなくて、色々なアイデアやテスト的文章をまとめた感じの内容。リドルストーリーだよ?って提示されてからの梨ドルストーリーは、読んでみて・・・あぁ、リドル苦手って感じることしばし。表題作はあとがきでもあったように、トリックを楽しむというより、取り組む過程を読む内容ですね。ニの悲劇の元を読んで、二の悲劇がどれくらい衝撃だったかを再確認しました・・・設定すべて覚えてたのでw
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短編十篇。バラエティに富んでいておもしろかったです。非ミステリが一作だけ収録されていますが、そちらもなかなか良かったです。
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ベストミステリーズに載っていた表題作を読み、法月綸太郎かっこいい!と思って読み始めた。
面白い。暇つぶしにいい感じ…
でも、やっぱり表題作が1番でした。
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ロジック好きという点では、法月さんは新本格派の中では突出している気がする。ミステリのどんな設定も一度は試してみたいという欲求もあるみたい。