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ロジック好きという点では、法月さんは新本格派の中では突出している気がする。ミステリのどんな設定も一度は試してみたいという欲求もあるみたい。
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それぞれ趣向が凝らされていて面白いが、論理的に明快で、パズル要素を持った「盗まれた手紙」が一番面白かった。
「使用中」
途中からは犯人側から描いた倒叙ものと思わせておきながら、さらにひねって、別の人物の疑心暗鬼によるリドルストーリーで終わっている。前半の推理作家と編集者の打ち合わせの内容がうまくラストのオチにつながっている。
「ダブル・プレイ」
見知らぬ人物から持ち込まれた交換殺人の顛末が語られていくが、思わぬ逆転劇が起こり、予期せぬカラクリが明らかになる。しかし、最後のある人物の独白にある「濡れ衣」はうまく行くとは思えない。
「素人芸」
浪費癖のある妻が腹話術の人形を買ったことにかっとなり、殺してしまったと思った夫。せんさく好きな隣人の通報で警察官がやってきて、死体の隠ぺいに四苦八苦する様子がコミカルに描かれている。
警察官が腹話術を見せてくれなんて言うはずがないと思ったが、意外なオチがあって納得した。
「盗まれた手紙」
2つの南京錠を使うことによって、他人には開封不可能な箱に入っていた手紙が盗まれた謎。極秘の手紙のやり取りの方法も面白いが、盗難の方法が論理的パズルになっている。私はこの方法を完全に見抜くことができ、謎解きの快感を味わった。
「イン・メモリアム」
存命中の作家の追悼文を書くことが会員となる条件の<評議会>のことを書いた文章。作中に出てくる「土方勇三」という人物は検索したところ、架空の人物のようだ。
作家先生であればいかにもやりそうな奇妙なことを想像した奇想か。
「猫の巡礼」
飼い猫の「猫の巡礼」の様子が切々と描かれている。実際にそんなことがあるのかと思い、検索したところ、「猫の巡礼」は見つからず、存在しない模様。
実際にはないものを、真に迫っていかにもあるかのように語ったほら話か。
「四色問題」
戦隊物ヒロインの女優がナイフで刺された後に、手首を切って死んだ謎。特殊な専門知識を使った面白いダイイングメッセージだが、ちょっと凝りすぎ。
「幽霊をやとった女」
妻を寝取られて、ルンペンに落ちぶれたニューヨークの元私立探偵が主人公。
ハードボイルドタッチの文章の中に、意外なカラクリを暴く本格的な内容を持った作品。
「しらみつぶしの時計」
論理的ではあるが、ちょっとわかりにくいし、中身にも疑問。最後の2つの内でどちらかを決めるロジックがあるのだろうかと思っていたが、最後はそうきたかという感じ。
(ネタバレ)
・「1440個の時計は、たったひとつの例外もなく、すべて異なった時刻に合わせてある」という書き方だと、午前と午後のペアは「デジタル/デジタル」の場合しか駄目なように感じる。「デジタル(午前)/アナログ(午後)」は、同じ時刻を指しているのでは?
「時計は1分ずつずらして設定しているが、『正しい時刻を示している時計』と同じ時刻を示している時計はない」とすべきでは?
・12のブロックに分けた後、それぞれのブロックについて並べ替える必要などない。ブロックごとにデジタルの時計の数と、アナロ���の時計の数を数えて、2つの数が違うブロックに正しい時刻の時計は含まれている。こちらの方が簡単。
「トゥ・オブ・アス」
男の思い込みから生まれた勘違いによる事件だと思わせておいて、最後まで読むと、さらなる勘違いが秘められていることがわかる。読者をミスリードする叙述トリックも複数盛り込まれている。
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バラエティに富んだ短編集。どれも面白かったが特に表題作は、これぞ法月綸太郎といったロジックでとても面白かったです。