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読めば読むほど恐ろしい。平和ぼけならぬ、水ぼけの日本人には即座に理解できない状況や問題もあるけれど、読み進むにつれ身につまされてゆく。まったく怖い話である。
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丹念な取材を重ねたノンフィクション。
「水は再生可能な資源である。だからこそマネジメントが大切だ。」
この言葉を理解することが、まず私たちにできることなのだと著者は説いています。
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世界の水の問題についてまとまっている良書。
中東問題の根っこにも水が絡んでいることは驚き。
消えたアラル海やヒ素中毒に苦しむインドなど現場を自分の足で歩き取材している。
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1 農業が死ぬ
2 子孫たちの水が奪われる
3 湿地帯が滅びる
4 洪水が人々を襲う
5 その裏でダムが建造される
6 人間は水をめぐって争う
7 文明が滅びる
8 新しい水源を探す
9 雨を集めろ
10 自然の流れを取り戻せ
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日本にいるとあんまり考えることのない水の問題。
しかし、世界では10億人もの人が安心して飲める水をもたない。
「水の惑星」と呼ばれる地球。
しかし、実際には海水が97%、
さらに地表近くにある淡水のうち3分の2は万年雪や氷河に閉じ込められている。
こうみると、水は大きな重要性を占める資源であり、
日本はこの資源を活かすことを考えるべきだと感じた。
筆者が勧めるのは節水農業・雨水利用・氾濫の許容だ。
雨水利用は地域共同体単位で進められることだから、
世界に広めていくべきだ。
アメリカや中国の大規模農業は、
いつか必ず「水」の問題に行きつくだろう。
日本は彼らのまねをして大規模・低コストを目指すのではなく、
昔からやってきた家族単位での協力を活かし、
自然農法などの、持続可能で、日本にしかできない方法で
付加価値を高めた農業を行うべきだと感じた。
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黄河が枯れる、という番組を観てから、気になっていた1冊。アラル海やチャド湖など、私の持っている世界地図帳との差は、どれほどあるのか。読みながら自分も干上がってくる・・・水をめぐる世界、こんなにおそろしいことになっているとは・・・。とりあえず、途中で一度返却。再度借りて、後半に突入。水をめぐる未来、何かしらの解決策はあるのだろうか。(5/23)浸透性の高い都市作り雨・露、とにかく資源である水を集める個人ではなく共同体での水の活用(古代カナートの復活)水1滴での収穫量を意識する発想の転換(水を多く使う作物、綿花などの栽培の見直し。米・麦などの品種改良で栽培に必要な水分を押さえる。農業が一番水を使う産業であるとは、当然といえば当然だけど・・・驚いた)巨大ダムの見直しチェック・ダムの推進実現には難しいことが多いが、決して出来ないことではないようではあるようです・・・フィールドをよく視察し現地で話を聞いてまとめただけに、なんとも説得力のある内容でした。(6/1)
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大規模灌漑が これまで どんな問題を 起こしてきたのか なくなってしまった アラル海 や チャド湖 テレビ番組でも 取り上げられたのは見ましたが もしかして こっちが 元ネタ?そして 昔から行われてきた 雨水による灌漑の 可能性
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水問題の入門書としては非常によい本だと思う。農業がいかに多くの水を必要とし、世界の湿地が生態系にとっていかに重要で危機にさらされているかを教えてくれた。緑の革命に代表される農業生産性の向上も水資源の観点からはマイナスだし、化石水の様な天水で容易に涵養されない水を灌漑に用いることは石油資源の浪費と同じぐらい問題だということもわかった。
告発調で、あまり公平な視点に立っているようには感じられなかったが、こういう視点を加えておくことは重要だと思う。
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出張先の山東省は黄河の河口があるがかつて何度も段流がおこっている。Googlemapで見ると山東省に入ったあたりで黄河は見つかりにくくなりとても中国第二の大河には見えない。黄河は反乱を繰り返すとともに豊かな養分を含む土砂をばらまいてきた恵みでもある。一方でこの土砂は川底を埋め天井川になることで洪水が起こったときの被害を拡大する。
中国は水不足に対し南水北朝という長江の水を引く大プロジェクトを進めているがこの本ではそういった大規模な治水工事が失敗に終わってきた歴史を指摘している。例えばダムは発電、灌漑、洪水対策として作られるが乾燥地帯にある人造湖は蒸発により本来使えるはずだった水を失っている。洪水対策としても厄介な問題がある。水を溜めなければ灌漑や発電に使えないのに水を溜めると洪水対策としては役に立たず決壊を防ぐための放水自体がしばしば洪水を起こしている。昨年のタイの洪水も上流のダムが満杯だったことが被害を拡大させた。また灌漑そのものも大量の塩分を堆積させ農地を破壊している。
河川の流路を変える試みも失敗続きだ。湿地や自然の放水池を埋め立て蛇行する川を真直ぐ流したところ大量の水が押し寄せたときに最も弱い部分が決壊する。河川には余裕を持たせた方がよく現在ではダムを取り壊し、河川を蛇行させ湿地を回復するプロジェクトがいくつか進んでいる。プランBは自然な洪水を受け入れる余裕をもつことだ。
ではなぜ川は干上がるのか?日本人は一人1日314Lの水を使っているらしい。これを減らすのも少しは効果があるが本筋ではない。日本は実は大量の水の輸入国で食料や綿などとして入ってきている。ハンバーガー1個を作るのに必要な水は3000L=3トンだ。多くの問題は大規模な灌漑にある。
緑の革命で綿花の生産量は拡大したが必要な水の良も増えた。インドやパキスタン、中央アジアは綿花の一大産地となり一方で水を浪費している。トルクメニスタンはシルクロードの砂漠の国でありながら一人当たり年間500万Lの水を浪費する。川からの取水は下流の水質を悪化させ、地下水を汲み上げると水位がさがりいずれは涸れる。また水の奪い合いはしばしば戦争の原因になっている。イスラエルとパレスチナ、インドとパキスタンは水を争い、中国はメコン川の上流にダムを造ろうとしている。
ここまで読むと救いがないがいくつかの対策が用意されている。それも昔ながらの方法で。まずは雨水をためること、また雨をゆっくりと海に流すことで地下水の水量を回復させることができる。露や霧を集める方法もある。新しい方法は例えば海水で空気を冷やし水分を凝縮させる方法や下水を処理する方法もある。ちなみに下水はリンや窒素といった養分を多量に含むため農業用としても価値が高いらしい。海に流して赤潮を発生させるよりは賢そうだ。海水の淡水化についてはコストが問題だ。膜を使うのも今のところは高いそうだ。
灌漑についても少ない水で灌漑する方法がある。チューブ入りアイスキャンデーの袋を改良したものが安価にできる灌漑装置として利用され始めている。また少ない水で生育する品種改良も行われている。
八ッ場ダムとス���パー堤防はやめた方が良さそうだ。
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水資源。
実に世界のあらゆるところで、「水」をめぐる問題が起こっていることがわかります。
・干ばつ。
・上流域の水の独占による下流域の水不足。それにともなう紛争問題。
・井戸水の過剰なくみ上げによる帯水層の低下、さらには、井戸水の枯渇。
・工場からでる排水に混じっているヒ素・フッ素などの水質汚染(農民の健康被害)。
・巨大ダムが引き起こす大洪水の被害。
・次々と干上がっていく世界にある湿地帯。
そして、「水」をめぐる国家間の対立。
ヨルダン川をめぐる争い。つまり、イスラエルとヨルダンの関係。
パレスチナの関係。
これらの国が抱える対立は根深いということ。
また、。ナイル川。チグリス…ユーフラテス川、黄河、メコン川・・・、さまざまな大河で、国家間の対立の発展するような危険をはらんでいるということも知る。
必読。
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ジャレド・ダイヤモンドの『文明崩壊』にも繋がるテーマの本。ただしこちらはタイトルにもある通り、水資源に特化した内容です。中でも、ダムや灌漑、地下水の過剰なくみ上げ、干拓などによる環境への悪影響が数多く取り上げられています。
というか、各章で世界中の様々な場所の問題について網羅しているため、よく言えば「たくさんの事例を知る」ことができるし、悪く言えば「個別の事象の掘り下げが甘い」ということになります。
まぁ、この本で触れられているテーマをすべて詳述したら、軽く倍以上のページ数が必要になるのではないかと思うので、仕方ないと言えば仕方ないですが。
水のないところに無理やり水を引いて農業や牧畜をすることの(文字通り)不毛さは、この本を読めば誰でも理解できるかと。水の効率的な活用という点だけで見るなら、もともと水資源の少ないオーストラリアなどでは農業も牧畜もされるべきではないのでしょう。しかし、「その世界にあってほしいと人が望む景色や文化、伝統」としての農業や牧畜がある以上、そうそうドライに割り切って輸入に頼る、というわけにもいかないのが、人の業なんだろうなと思います。
後半では、敵側の水資源を強奪したり汚染したりするアクターとしてイスラエルという国家が出てくるのですが、この手の分野の国際関係になってくると、不思議とキリスト教圏(欧米)から見て味方(のハズ)のイスラエルが悪者に見えてしまうのが、いかにも皮肉です。こういうのを読むたび、そもそもの元凶である欧米もうちょい何とかしろよ、とか思ってしまいます。
結論の一つとして、著者は「ダムや運河、浚渫で自然の水資源を支配することはできない。人間が自然の水循環に加わることを考えるべき」であり、「水を奪い合うのではなく分け合う方法を学ばなければならない」としています。この、いかにも凡庸とも見え、使い古しの結論のように見えるものの、いまだに世界中で現実味と切迫感を持って捉えられていないように見える「分かっちゃいるけどできてない」テーマに、どれだけ真剣に取り組んでいけるのか。
問題提起の書として、一読の価値はあると思います。
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地球において水は再生可能な永久循環資源であるとの認識で、涸渇する危機なんぞは露知らずであった。学ぶに、この水の惑星において我々が欲する淡水は決して多くはない。そんな中、個人が風呂やシャワー、水洗便所で使う水量は増えている。しかし、それは真の憂いに値せず、食料生産や綿花栽培など農業用水こそが深刻な水の消費に通じる。乾燥地での灌漑水利用がいかに大量であることか。それに対処せんがためのダム建設や地下帯水層利用の恐るべき弊害も知る。そして、水問題を通して世界各国の政治、経済の思惑、紛争の一因までもが見えてくる。
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全くの素人にも分かりやすく読みやすい1冊。
自然がそうあることには理由があることをつくづく実感。
文明でコントロールしようとするとそれ以上の自然の力強さを知らしめられるのは、洪水問題に限ったことだけではない。
日本ではイマイチ危機感の薄い水問題。
でも待ったなしで増え続ける人口と、枯渇していきつつある資源。水が得られないということは飲水だけの問題でなく、それに農業、畜産、生きていくうえでの営みができなくなるということを認識させられた。
一方で起こる水災害との矛盾。
それは自然のあるべき姿に戻す事の必要性を感じざるを得ない。
しかし、解説にて沖教授は
「水は再生可能な資源である」「だからゆえにマネジメントが大切である」
いずれにせよ、環境問題を後ろ向きではなく、前向きに考え、子孫にあとから感謝されるような作を今から講じる事。これが、水の問題も含めた、環境問題に対する基本スタンスだと、評者は思う。
と結んでいる。
2008年 日経BP出版
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◆世界各地の水の問題を具体的に摘示すると共に、ダム建設がもたらす、周囲の環境や生態系への破壊的影響と、その目的達成のための効率性の悪さに言及しつつ、解決の指針を過去の知恵と地域固有の方法論に求めんとする◆
2008年刊行。
著者は英国人環境ジャーナリスト(01年英国最優秀環境ジャーナリスト選)。
今、水問題を論じる書は多い。「水戦争」「日本は世界一の水資源・水技術大国」「水ビジネス」などなどがある。
そこでは地球温暖化・砂漠化に伴う水不足や、中国とチベットのように、広域河川流域国間の紛争。農産物交易を介した水資源の移転(仮想水と言われる。例えば、水資源の豊富な日本が仮想水まで大量輸入との批判)。
或いは工業廃水や下水の未処理といった古典的環境問題に、灌漑農業に伴う農地の塩害に言及しているものもあれば、水枯渇による文明破壊など歴史に目を向ける書もあるだろう。
本書は、都市水道の老朽化、水の販売商品化の問題に触れないものの、先の問題を意識しつつ、世界各地での水問題発生地域における具体的実情を集積・開陳した書である。
つまり、他の書でも叙述されるような、エジプト・スーダン、インド・パキスタンといった河川流域国での紛争や、中国黄河の断流問題、あるいは森林保全・水の適切管理ができずに文明が崩壊した歴史的事実、従来型灌漑農業の限界なども展開され、既に聞いたことのある問題点も多かった。
しかしながら、本書は、
➀ 中東紛争後における。イスラエルの水管理の横暴さと獲得に過剰に貪欲な点。
➁ ダムが環境、水資源、近隣の生態系、農業など第一次産業に及ぼす悪影響の他、メタン放出の重要要因として地球温暖化問題にも深く関わる点
に目が行く。
前者の具体的内容は本書を紐解いてもらいたいが、なかなかに酷い遣り口である。
一方、後者のダム問題。ここが本書の特徴的な部分である。
本書は全体的にコンクリート利用の巨大プロジェクトに懐疑的な視座で論じているが、その極め付けがダム建設への批判であろう。
なるほど一見すると、水を湛えるダムは、水不足解消、灌漑用農水や飲料水の確保に繋がるようにも見える。
しかし、本書の中では、世界銀行がインドのダム建設融資を拒否し、その後に作った世界ダム委員会の2000年最終報告の内容が目を引く。
それによると、
⑴ ダム建設の費用は予算を概ね56%超過。
⑵ 発電用ダムの半数は実発電量が予測値を著しく下回る。
⑶ 給水目的ダムの2/3は予測値よりも少量給水で、そのうち1/4は予測値の半分以下。
⑷ 灌漑目的ダムも同様で、予測値の35%以下しか灌漑できず。
とある。
さらにダム建設が生じさせる生態系破壊、湿地枯渇。塩害やシルト堰き止めで下流域の肥沃さが喪失。また海岸地域の顕著な浸食という事実に言及している。
そして極めつけはダム建設が水力発電であっても地球温暖化に逆行する事に関する指摘。
それはダム貯水池が森林を水没させるケースで、水没��林の腐敗のため、大量のメタンガスを産出、これの大気中への放出が生じ、地球温暖化回避を目指した施設が、化石燃料型火力発電所以上の温室効果ガスを排出するという笑えない事態に見舞われているという。
より具体的な数値を上げると、ダム貯水池の森林水没が、人間由来のメタンの1/5、温室効果の7%を占める上、さらにそれが長期化(条件によっては500年間も)するという試算・仮説を提示している。
これは本書にしかなく、この特異な情報は決して無視することはできない。
他方で、脱ダム、あるいは大規模設備の忌避を志向する帰結として、➂雨水の収集・活用の重要性について広く言及している。
具体的には、古代の水道システム「カナート」の復権と再興。非近代的な貯水池や泥湿地の復権であるが、つまり、地域の実情に即したミニマムな取り組みを、多数の地域で実行する方が、実証的かつ現実的かつ効率的だと考えているのだろう。十分納得のそれである。
かように他の水問題の書を既に読んでいても、なお気づきがあるという読後感は、本書の一読の価値を十分感じさせるものである。