投稿元:
レビューを見る
BSEを題材に扱った、ちょっと珍しい医療系ミステリー。
クロイツフェルト・ヤコブ病を発症してからの描き方も、実に繊細で国文学科卒業の作家さんが書いたとは思えない作品。
実際にこの作品の中で発症するクロイツフェルト・ヤコブ病は人的に作り出されたものだけれど、きちんとBSEやvCJDを理解してないと、ちょっと難しい作品。
まだ原因も特定されてないし、もちろん決定的な治療法も見つかってないからこそ、こういう身近な小説で、BSEやvCJDの怖さを知ってもらえるといいのかも・・・
投稿元:
レビューを見る
天才脳外科医の父親への反発から岩手県で獣医師になった綾子。
創薬コーディネーターの恋人の変死やBSEの疑いがある牛の白骨体の発見、父親の不可解な入院。
最先端医療をあつかったサスペンスは、「イーハトーブ」という理想郷が物語の下敷きだ。
重篤な病にある脳外科医の、延命か自然死かを巡り、父の真意を探っていく。
死は敗北ではない。精一杯生きたならその死は「凱旋」なのだとの深い認識に綾子は触れる。
当たり前すぎる結末なのだが、救いに癒される。
しかし医療社会に市場資本がいやらしくはびこっているだろうことも、
ここには描かれている。
投稿元:
レビューを見る
『・・・宿命はどうすることもできない。・・・しかし・・生き生きと輝いていれば、宿命など夜の月と同じなのだ。日が昇れば見えなくなる。君ができることをやり続けることで輝き、夜の月の存在にとらわれない強い生き方をして欲しい。・・』
投稿元:
レビューを見る
医療ものと聞いて楽しみに読んだのですが、動物医療。。。つまり獣医さんの話でした。
ヤコブ病が人間にうつるのかどうかという話と、主人公の彼がいきなり殺されるという話が同時進行するのですが、
謎の焦点(彼を殺した犯人を探すのか、ヤコブ病の謎を解くのか)がはっきりせず、読んでいてすごくイライラしました。
主人公がこの二つはどこかでつながっていると、事あるごとに思うのですが、
読んでいても全然接点が見つからなくて、主人公の考えに賛同できない。
結局種明かしで「あ、それが言いたかったんだ〜」とやっと気が付く始末(笑)
読み込みが足りないのかなとも思うのですが、殺された彼の人となりや彼の環境にもう少し説明がほしかった。
全体的に文章が散漫で説明不足なので、種明かしされてもびっくりしたり感心するということはありませんでした。
医療ものということで、期待しすぎちゃったのかな。。。。
投稿元:
レビューを見る
医療ミステリ。でもあまり謎解きはなかったかな。BSE、医療問題、死生観尊厳死、などのテーマについて、いろいろと考えさせられる内容でした。
特に死生観の問題は深いです。たしかに「死」は誰にでも訪れるものであるし、避けようのないことだから、「死=負けること」だと思うとひたすら暗鬱ですが。なるほど、こういうふうな考え方もあるんですね。人間はどう生きるべきか、そしてどう死ぬべきか。実際どう過ごすかよりもむしろ、生と死をどのように捉えるかで、感じ方がずいぶんと変わる気がしました。
投稿元:
レビューを見る
物語の構成にはプリオンタンパクやクロイツフェルト・ヤコブ病に関する詳しい知識が必要であり,よく研究されている。最後の三通の手紙が印象的。
投稿元:
レビューを見る
獣医の綾子の恋人のような存在が不自然な死をとげる。そして、綾子の周囲で起こる不可思議な出来事と、綾子を勘当した脳神経外科医の父親の身体の異変が徐々に1本の糸で繋がっていく。
ミステリーの要素よりも、「人の死と生」「親子のあり方」など、そういった面で考えさせられることの多い作品だった。
投稿元:
レビューを見る
2017.5.6 読了
いろんな病院で助けられないと言われた患者を
助ける 神の手を持つ父親を持つ 綾子(りょうこ)。
そんな父親に反発して、東京を出て
獣医をしている。
ペットだけでなく、牧場の牛も診たりする。
そんなとき 同居人であった森田の
突然の死。
その死に方に 不審なところがある。
そんなとき 父親が倒れる。
その病状が 不審。
BSE(狂牛病)も 絡んでくる。
恋人の死と 父親の病状が
まさかの絡み合う。
なかなか読みごたえありでした。
投稿元:
レビューを見る
BSEが物語の中心に回っていくサスペンスだけれども
仕事に対する姿勢や仕事を軸とした人間関係
という側面で読めた。
上司と部下、業者と顧客、医師と患者、親と子など
複眼的な視点で楽しめる小説。
エキサイティングな場面はあまりなく
現実に近い感じで淡々と進んでいくが
その分説得力を持たせるために
作者はすごい資料を調べたんだろうなぁ、と思う。
知的な医療ミステリーとして大変面白い。
投稿元:
レビューを見る
面白い。素晴らしい作品だった。あっという間に読み終わったが。少し疑問と言うか、???と思ったのは、いくら恋人が恩師のせいで、自殺したからと言って、その恩師を人体実験として、使うだろうか?そして、その結果として、その恩師を必死に看病するだろうか?と言う疑問はあるが、それはそれで面白い。狂牛病、アルツハイマー、鳥インフルエンザなど複雑な問題が絡み合って、色々考えられた面白い作品だった。
投稿元:
レビューを見る
2019.03.25
またもや著者の新しい分野に触れた!
治す人の治療よりもその人の心を診る。中々、出来ることじゃない。感動のラストだった。頑張れ綾子!