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わたしを離さないで みんなのレビュー

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みんなのレビュー1,260件

みんなの評価4.1

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

62人中、59人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/10/22 03:33

へこたれていたあの時にこそ

投稿者:田川ミメイ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 2006年に出版されたとき、大きな話題を呼んだこの本。そのほとんどが賛辞だったけれど、書評やネットで物語の概要を知るにつれ、あたしはなんだかすっかり怖じ気づいてしまった。ちょうど心身共にへこたれていた頃で、こういう重い内容の本はもっと元気な時に読むべきだろう、と、勝手に決めつけ、それでもこの著者には何かしら惹かれるものがあったので、先に「女たちの遠い夏」を読んでみたりした(この作品もとてもよかった)。が、この夏「わたしを離さないで」が文庫化されたと知り、それを機にようやくこの本を読んだのだった。

 物語は、キャシーという31歳の「介護人」の回想から始まっていく。子ども時代を過ごした「へールシャム」での思い出。そう、この小説のほとんどは、イギリスのヘールシャムの私立学校時代のことに費やされており、キャシー、ルース、トミーという、二人の少女と一人の少年の共に過ごした日々がゆっくりと丁寧に描かれている。

 ごく親しい友人でありながら(だからこそ)、つまらない言い争いをしてみたり、それを修復しようとして相手の機嫌をとったり、自分だけはあなたの味方だということを誇示してみたり。他の人には言えない悩みをひそかに打ち明けたり、胸の中にしまっていた不安をぶちまけてみたり。三人の関係も交わされる感情も、誰にも覚えがあるようなもので、特別驚くようなものではない。小さなエピソードを積み重ねるようにして語られるその部分だけとってみれば、青春小説にも思えるし、宿舎付きの学校という閉鎖的な世界の中で繰り広げられる学園小説のようでもある。

 が、もちろん、それが全てではない。
 冒頭の語りの中に出てくる、「介護人」や「提供者」という言葉。それを読んだときに感じた違和感や疑問に対する答えを、語り手であるキャシーはなかなか明かそうとしない。そのせいで読んでいる間中、隠されている何かの存在を強く感じる。キャシー達の子どもらしい姿に懐かしい痛みを感じ、共感すればするほど、そこに忍びよる大きな影を気にせずにはいられない。

 その影が正体を露わにするのは、物語も終盤になってからだ。とは言え、その遙か前からおおよその察しはついてしまう。彼女たちが生まれながらに背負っているその影は、現実的に考えれば「そんなことがあって良いのか」と憤りを覚えるようなもので、普通なら自暴自棄になってもおかしくない。それなのに当の子どもたちは、意外にもすんなりとその運命を受け入れてしまっている。不思議なのは、読み手であるこちらも、たしかにそういうものかもしれない、と思ってしまうことだ。

 人は親や環境を選んで生まれてくるわけではない。極端なことをいえば、森の中に放りだされた少女が狼を親として育つこともあるように、子どもというのは、生まれたときに置かれた環境を受け入れて育っていく。そこが閉ざされた世界の中であるならよけいに、そこでの常識に従うしかない。自分の身を守るためにも。

「へールシャム」の「先生」達は、ここが特別な「閉ざされた世界」であること、「外の世界」はこことは少し違うということを、少しずつ、それとなく子ども達に伝えていく。さりげなく行なわれるその「教育」のおかげで、生徒達はいつのまにか自分が特異な存在であることを自覚するようになる。まるで知らない単語をひとつ覚えるのと同じように、自然に受け入れていく。小説には、その部分が緻密に根気よく描かれている。そのせいで、当然感じるはずの憤りがうやむやになってく。子ども達と共に馴され、憤るよりもその先に待つものばかりが気になって、やがては、彼女達の人生を「見届けたい」とさえ思うようになる。

 もしかしたら、これは実話を元に書かれた小説なのだろうか。読みながら何度かそう思った。そんな訳はないし、そんなことがあってはならないと思うのだが、でもここに描かれているのは、今の時代、そしてこれから先、きっと人類が直面するであろう問題でもある。が、著者はそんな警告ばかりを訴えているわけではない。この本は、ある定めの元に生まれた子どもたちの人生を、キャシーという女性の目を通して描いた静かな小説である。何を思い、何を感じとるかは、ひとえに読み手に委ねられている。

 生まれたときから、最終地点を決められている人生。だからといってキャシーは、全てを諦めて放りだしたりはしない。どんな人生であっても、そこには友がいて愛があり歓びもある。自分なりの自分らしい人生を生きていける。読み終えたとき、胸の中に浮かんでいたのは、背筋をまっすぐに伸ばして歩いていくキャシーの後ろ姿だった。この小説を、元気な時じゃないと読めそうにない、と、脇にどけてしまったことを残念に思う。へこたれていたあの時にこそ、静かで強いキャシーに出会うべきだったのかもしれない。



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低い評価の役に立ったレビュー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2017/06/19 16:54

3流のSFにも及ばず, 2016/7/13

投稿者:Amazon カスタマー - この投稿者のレビュー一覧を見る

注意深い読者ならば、最初の2ページ読んだあたりでこの本の背景を楽に予想できると思います。なので、その予想が如何に裏切られるか?という期待を持って読み通しましたが、何とその(特に目新しくもない)ネタをそのまま最終のオチに持ってきてて、ある意味「ビックリ」です。キャラクターは、ただその背景に流されているだけの主体性のない役割ロボットそのもので、全く感情移入できません。これが純文学仕様というのでしょうか?一見重要そうに掲げているメインテーマについても、正面から語ることは避けていますし、娯楽性から言っても今時のライトノベルや、半世紀も前のSFに劣ってます。こんなものが最高到達点だとすれば、そちらの世界はたいしたことないですね。

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紙の本

正直、失望しました。

2018/04/24 03:09

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:パチュリ - この投稿者のレビュー一覧を見る

ノ-ベル文学賞作家となったカズオ・イシグロの作品ということで、かなり期待して読み始めたのですが...残念ながら結果はその期待を全く裏切るものでした。「提供者」という言葉から何とはなしにイメ-ジしていた通りのオチで、スト-リ-も、さあ次に何が来るか、どういう風に展開していくのか、思わせぶりの割にはたいした出来事も起こらず、主人公他登場人物への感情移入が全くできず、読了感、満足感が全く湧き上がりませんし、正直に言って、彼の言わんとしていることが理解できませんでした。他の方のレビューを拝見して更にビックリ。多くの方が限りない賛辞の言葉を並べているのには唖然としました。読後の感想は十人十色で人それぞれであることは当然ですが。私としては同作家の「日の名残り」の方が(この2冊は平行して読みました)、スト-リ-的にも主人公の突然の心の移り変わりにも納得感はありました。ただ、それでも評価は中程度ですが。設定はかなり英国的なので物語に入っていけない方があるかもしれません。

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紙の本

いい作品

2015/11/29 20:42

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kazuo - この投稿者のレビュー一覧を見る

いい作品であることは間違いないのですが、どこがいいのかを説明するのがとても難しい。読んでみてとしかいえない。

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2008/08/28 23:43

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2010/11/14 17:42

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2008/09/24 01:08

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2008/09/26 10:57

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2008/10/02 23:48

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2008/10/04 03:54

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2008/10/31 22:22

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2008/11/10 01:16

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2008/11/13 16:27

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