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この本の著者である宮崎氏が実際に中国を歩いて目にしたこと、体験したことについて書かれたものです。目まぐるしく変わっている中国の最新レポートのようで、単なる紀行文に留まらず、その地域に関する歴史等にも触れられていて中国といえば沿岸部の情報しか入ってこない私にとっては興味が持てました。
日本の数十年前はそうだったので中国特有とはいえないとは思いますが、偽物がまかり通っている現状が垣間見れました。偽ブランドはまだしも、人の生命を脅かす食品や水の偽物が出回っているのは少し悲しい思いになりました。
特に、黄河文明と並ぶ長江流域に古代文明があった事実(p268)をこの本によって初めて知りました。
以下は気になったポイントです。
・偽ウォータで比較的安心なのは、ソーダ入りで泡沫を伴って偽物の区別ができる(p13)
・北京語は漢族についても、華北以外の場所では、上海語・広東語・四川語・福建語があり、標準語が話せるのは全人口の53%である(p20)
・中国におけるマンション販売は内装無しであり自分で内装工事を手配する、居住者の管理組合は共産党が管理するので日本とは異なる(p36)
・満州国建設に費やしたカネは全部日本の持ち出し、GDPの43%が費やされた年もあった(p91)
・黒龍江省の年収は市民で7000元、農村部は4000元である(p103)
・ノモンハンでの戦闘は、旧ソ連の軍事機密記録によれば、日本軍の死傷者1.7万人に対して、ソ連軍1.5万であり、同等の死傷者である。戦争参加者を考えると日本は2万人でありほぼ壊滅、ソ連軍は20万であるので戦闘効率から考えれば日本は負け(p111)
・紀元7世紀には、チベットが隋の都である長安を陥落させたほどの軍事大国(吐藩)であった、漢族が吐藩に朝貢していた(p119)
・上海はコスト高になっていて外国企業の進出は止まっている、製造業は中国以外のアジア(ラオス、ベトナム、ミャンマー)へ進出先を変更している(p123)
・中国における3大格差は、都市:農村、工業:農業、肉体労働:頭脳労働、である(p126)
・中国の民衆の意識が急速に変化している最大の原因は、テレビではなく、携帯電話とインターネットの普及による(p136)
・四川地震において中国人民解放軍がかけつかた理由は、1)治安維持、2)核兵器施設の保護と警備である(p138)
・大都市で地下鉄がすぐ造られている理由は、1)土地買収に手間暇がかからない、2)公共事業には囚人をただ働きさせられる、である(p173)
・直轄市である重慶(現在、北京・天津・上海・重慶・深センが直轄市)には中央政府から435億ドルという天文学的予算が配分されて、この数年で貧困から富裕都市へ変貌を遂げた(p245)
・四川省が経済発展に遅れを取った理由は、水と農作物に恵まれたため自給自足が可能であり、四川経済圏を形成していたから(p250)
・1.2万年前から5千年前にかけて、長江流域(江��から蜀にかけての地域)には、古代文明があったことを、2002年1月に北京政府は認め、世界文化遺産への登録申請をした(p268)
・マカオ近辺に住む潜在的カジノ人口は22億人、対してラスベガスは4億人強、その差が2006年にラスベガスを抜いた一因とも言える(p312)